第34話 託戦
「〚ポグル〛」
火球が唸りを上げて飛んでくる。
俺は地面を転がり、間一髪でそれをかわした。
次の瞬間、視線をアドナルに定める。
俺は、アドナルの目前へ瞬間移動した。
「ッ!?」
驚きで目を見開くアドナルに触れる。
視界が歪み、次の瞬間──森の中へ。
間を置かず、今度は広場へ跳ぶ。
ジョーのすぐ背後。
「なッ!?」
反応する暇も与えず、その身体に触れ、再び森へと瞬間移動させた。
息を整える暇もない。
次は──ジム。
そう思いジムの目の前に飛んだ。
ジムは───こちらへ手を向けていた。
「ッ!?」
「『ボルド』」
雷弾が放たれる。
避ける暇はなかった。
「がぁッ!!」
全身を雷が駆け巡り、視界が白く弾ける。
身体が痺れ、感覚が遠のく。
ドカッ
蹴り飛ばされ、地面を転がった。
痛みで息が詰まる。
顔を上げると、ジムが楽しそうに俺を見下ろしていた。
「やっぱりなぁ」
薄く笑う。
「お前の瞬間移動、触れなきゃ一緒に飛ばせねぇんだろ?」
「……ッ」
「なんで、お前みたいな奴にレアスキルが当たって、俺には来ねぇんだろうな」
ジムは手をかざす。
「じゃあ……そういうことで───死ね」
魔力が、嫌な音を立てて集まっていく。
「『ヂルド・ボ───
その瞬間だった。
横合いから、影が飛び込む。
「ッ!?」
ジムは即座に後ろへ跳び、振り下ろされた刃をかわした。
「……なんだ…獣人のガキか…」
俺の前に立っていたのは──クッキーだった。
「ここは任せてください!ダレンさんは、他の二人を倒しに行って!」
「無茶言うな!」
そのとき、意識を取り戻したメープルが叫んだ。
「おい!クッキーの客!俺のロープを切れ!クッキーに一人で戦わせるな!」
ジムが鼻で笑う。
「無駄だ。その縄には封印魔法がかかってる。解くのに時間がかかるぞぉ〜?」
愉快そうに続けた。
「ゆっくり見てろよ。このガキが死ぬところをな」
「くっ……!」
ジムが俺を見た。
「ほら、迷ってる暇はぁ、ねぇぞ?アドナルとジョーが戻ってくる前に、決めないとなぁ」
俺は、クッキーを見る。
小さな身体は、確かに震えていた。
それでも目は、逃げていなかった。
「………クッキー……頼んだ」
「…はい!」
「……これが終わったら、魔法を教えてあげるよ」
一瞬、驚いたように目を見開き。
それから、満面の笑み。
「……楽しみにしてます!」
そうして、俺は、森へと瞬間移動した。




