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【瞬間移動】で逃げるだけ!〜S級冒険者の裏切り者として追われた俺、気づけば魔王軍の最高幹部になってました〜  作者: 太田
第2章 走って転んでぶつかって

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第34話 託戦

「〚ポグル〛」


 火球が唸りを上げて飛んでくる。


 俺は地面を転がり、間一髪でそれをかわした。


 次の瞬間、視線をアドナルに定める。


 俺は、アドナルの目前へ瞬間移動した。


「ッ!?」


 驚きで目を見開くアドナルに触れる。


 視界が歪み、次の瞬間──森の中へ。


 間を置かず、今度は広場へ跳ぶ。


 ジョーのすぐ背後。


「なッ!?」


 反応する暇も与えず、その身体に触れ、再び森へと瞬間移動させた。


 息を整える暇もない。


 次は──ジム。


 そう思いジムの目の前に飛んだ。


 ジムは───こちらへ手を向けていた。


「ッ!?」


「『ボルド』」


 雷弾が放たれる。


 避ける暇はなかった。


「がぁッ!!」


 全身を雷が駆け巡り、視界が白く弾ける。


 身体が痺れ、感覚が遠のく。


ドカッ


 蹴り飛ばされ、地面を転がった。


 痛みで息が詰まる。


 顔を上げると、ジムが楽しそうに俺を見下ろしていた。


「やっぱりなぁ」


 薄く笑う。


「お前の瞬間移動、触れなきゃ一緒に飛ばせねぇんだろ?」


「……ッ」


「なんで、お前みたいな奴にレアスキルが当たって、俺には来ねぇんだろうな」


 ジムは手をかざす。


「じゃあ……そういうことで───死ね」


 魔力が、嫌な音を立てて集まっていく。



「『ヂルド・ボ───


 その瞬間だった。


 横合いから、影が飛び込む。


「ッ!?」


 ジムは即座に後ろへ跳び、振り下ろされた刃をかわした。


「……なんだ…獣人のガキか…」


 俺の前に立っていたのは──クッキーだった。


「ここは任せてください!ダレンさんは、他の二人を倒しに行って!」


「無茶言うな!」


 そのとき、意識を取り戻したメープルが叫んだ。


「おい!クッキーの客!俺のロープを切れ!クッキーに一人で戦わせるな!」


 ジムが鼻で笑う。


「無駄だ。その縄には封印魔法がかかってる。解くのに時間がかかるぞぉ〜?」


 愉快そうに続けた。


「ゆっくり見てろよ。このガキが死ぬところをな」


「くっ……!」


 ジムが俺を見た。


「ほら、迷ってる暇はぁ、ねぇぞ?アドナルとジョーが戻ってくる前に、決めないとなぁ」


 俺は、クッキーを見る。


 小さな身体は、確かに震えていた。


 それでも目は、逃げていなかった。


「………クッキー……頼んだ」


「…はい!」


「……これが終わったら、魔法を教えてあげるよ」


 一瞬、驚いたように目を見開き。


 それから、満面の笑み。


「……楽しみにしてます!」


 そうして、俺は、森へと瞬間移動した。

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