第33話 突撃
「おお、これはこれは………S級冒険者様じゃないですか。……いや、今はもう冒険者ですらなかったか」
立ち上がりながら、ジムは嘲るように言った。
「……さっさと、ここから消えろ」
「無理だな」
低く言うと、ジムは肩をすくめる。
「俺たちはな、たまたま獣人の村を見つけて“処理”してるだけだ。これを国に報告すりゃ、報奨金が山ほど出る」
燃え盛る村を見渡しながら、楽しそうに続ける。
「ダレン…人間の友達がいねぇから、獣人を仲間にしたのかぁ?……人のペットを殺すと思うと、ちょっと胸が痛むなぁ」
「黙れ」
「………やれ」
短く命じると、左右に控えていたアドナルとジョーが剣を抜いた。
二人同時に踏み込む。
左右から迫る斬撃。
俺は前へ踏み出した。
交差する刃が生む風圧が、背と頬をかすめる。
紙一重で、死の軌道をすり抜けた。
「『ブン』」
風が炸裂する。
「ぐぁッ!」
アドナルの身体が宙を舞った。
「ッ!テメェ……!」
怒りに歪んだ顔で、ジョーが手を突き出す。
「〚ポラグ〛」
炎が縄のように絡みつき、俺の身体を締め上げた。
「ッ……!」
熱い。動けない。
「死ねやぁ!」
剣が振り下ろされる。
──その瞬間。
視界が切り替わる。
俺は屋根の上にいた。
剣は空振りし、床へ深々と突き刺さる。
「チッ!」
屋根の縁から身を乗り出す。
吹き飛ばされたアドナル。
怒りを露わにするジョー。
ジョーは即座にこちらへ向き直り、手を突き出した。
「〚ポグル〛」
大きな火球が放たれる。
俺は屋根を蹴って走った。
炎に視界を奪われ、二人の位置が見えない。
火球が迫った、その瞬間。
「〚ブズ〛」
高速の風刃が炎を切り裂いた。
「ッ!?」
胸に鋭い痛みが走り、血が滴り落ちる。
裂けた火球が、すぐそこまで迫る。
(まずい)
別の屋根へ瞬間移動。
ドォン!!
さっきまでいた場所で、火球が爆発した。
アドナルとジョーが俺を捉える。
血に染まった俺を見て、二人は笑った。
「やりぃ!」
と声を上げた。
ジムが吐き捨てる。
「アドナル。あれで殺せ」
「了解」
アドナルが、にやりと笑った。
「〚ブガド〛」
風が全身を包む。
続けて
「〚ブルズ〛」
足に魔力を溜め、一気に解放する。
一瞬で距離が詰まった。
風の鎧をまとった突進は、回転する刃そのものだった。
瞬間移動は間に合わない。
俺は地面を転がる。
背後で、地面が抉れる。
顔を上げると、ニタついたアドナルと目が合った。
(まずい)
完全に追い詰められていた。
俺は必死に頭を回す。
今、ここで流れを変えなければならない。




