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【瞬間移動】で逃げるだけ!〜S級冒険者の裏切り者として追われた俺、気づけば魔王軍の最高幹部になってました〜  作者: 太田
第2章 走って転んでぶつかって

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第33話 突撃

「おお、これはこれは………S級冒険者様じゃないですか。……いや、今はもう冒険者ですらなかったか」


 立ち上がりながら、ジムは嘲るように言った。


「……さっさと、ここから消えろ」


「無理だな」


 低く言うと、ジムは肩をすくめる。


「俺たちはな、たまたま獣人の村を見つけて“処理”してるだけだ。これを国に報告すりゃ、報奨金が山ほど出る」


 燃え盛る村を見渡しながら、楽しそうに続ける。


「ダレン…人間の友達がいねぇから、獣人を仲間にしたのかぁ?……人のペットを殺すと思うと、ちょっと胸が痛むなぁ」


「黙れ」


「………やれ」


 短く命じると、左右に控えていたアドナルとジョーが剣を抜いた。


 二人同時に踏み込む。


 左右から迫る斬撃。


 俺は前へ踏み出した。


 交差する刃が生む風圧が、背と頬をかすめる。


 紙一重で、死の軌道をすり抜けた。


「『ブン』」


 風が炸裂する。


「ぐぁッ!」


 アドナルの身体が宙を舞った。


「ッ!テメェ……!」


 怒りに歪んだ顔で、ジョーが手を突き出す。


「〚ポラグ〛」


 炎が縄のように絡みつき、俺の身体を締め上げた。


「ッ……!」


 熱い。動けない。


「死ねやぁ!」


 剣が振り下ろされる。


 ──その瞬間。


 視界が切り替わる。


 俺は屋根の上にいた。


 剣は空振りし、床へ深々と突き刺さる。


「チッ!」


 屋根の縁から身を乗り出す。


 吹き飛ばされたアドナル。


 怒りを露わにするジョー。


 ジョーは即座にこちらへ向き直り、手を突き出した。


「〚ポグル〛」


 大きな火球が放たれる。


 俺は屋根を蹴って走った。


 炎に視界を奪われ、二人の位置が見えない。


 火球が迫った、その瞬間。


「〚ブズ〛」


 高速の風刃が炎を切り裂いた。


「ッ!?」


 胸に鋭い痛みが走り、血が滴り落ちる。


 裂けた火球が、すぐそこまで迫る。


(まずい)


 別の屋根へ瞬間移動。


 ドォン!!


 さっきまでいた場所で、火球が爆発した。


 アドナルとジョーが俺を捉える。


 血に染まった俺を見て、二人は笑った。


「やりぃ!」


 と声を上げた。


 ジムが吐き捨てる。


「アドナル。あれで殺せ」


「了解」


 アドナルが、にやりと笑った。


「〚ブガド〛」


 風が全身を包む。


 続けて


「〚ブルズ〛」


 足に魔力を溜め、一気に解放する。


 一瞬で距離が詰まった。


 風の鎧をまとった突進は、回転する刃そのものだった。


 瞬間移動は間に合わない。


 俺は地面を転がる。

 

 背後で、地面が抉れる。


 顔を上げると、ニタついたアドナルと目が合った。


 (まずい)


 完全に追い詰められていた。


 俺は必死に頭を回す。


 今、ここで流れを変えなければならない。

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