第26話 村紹介という名の引回し
木で組まれた、なかなか頑丈そうな檻だった。
鉄ではないが、使われているのは太い丸太。下手な力ではびくともしそうにない。
床には藁が敷き詰められていて、妙にふかふかしている。
壁も天井も木と藁。
見た目だけなら、牧歌的ですらある。
木製の刑務所。
そんな表現が、しっくりきた。
俺は檻の中で横になる。
……暇だ。
とにかく、暇だ。
やることが何もない。
瞬間移動で逃げることも考えたが、獣人は鼻が利く。
逃げたところで、すぐに追いつかれるだろう。
逃げられない。
そう理解した瞬間、すべてを諦めた。
「おい」
その声に、ぱっと顔を上げる。
檻の外に立っていたのは、俺をここにぶち込んだあのオオカミの獣人だった。
「出ろ」
「……は?」
状況が理解できないまま、俺は檻から出される。
「お前を牢に入れたあと、クッキーが泣き出してな」
彼は、視線を逸らしながら続けた。
「……お前が、クッキーの客人だったとは思わなかった。本当にすまなかった」
そう言ってオオカミの獣人は、俺に頭を下げた。
「あ、い、いや……こちらこそ、すみません」
思わず、そう返していた。
建物の外へ出た瞬間だった。
「す゛み゛ま゛せ゛ん゛!!!」
勢いよく、何かがぶつかってくる。
クッキーだった。
「゛あ゛た゛し゛が゛……村につれてきたばがりに゛!!!」
顔をぐしゃぐしゃにして、盛大に泣いている。
服が、涙やら鼻水やらで一瞬でベチャベチャになった。
「だ、大丈夫だから……」
苦笑いしながら、そう言うしかなかった。
クッキーは涙を拭うと、突然俺の手を掴んだ。
「あたしが!村を案内します!!!」
有無を言わせぬ力で引っ張られる。
「ちょ、待───
そのまま、村の中へ。
「あぁ、クッキーの客人か」
「クッキーちゃんの知り合いなら大丈夫だわねぇ」
そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
「ささ!行きますよ!」
クッキーの歩くスピードが、どんどん上がる。
「ここが果物屋さんです!」 「ここがお魚屋さんです!」 「ここが家具屋さんで!」 「ここがお肉屋さんです!」
息つく暇もない。
「クッキー、待──
ズザァァッ!
途中から、完全に引きずられる形になった。
歩いているというより、引き回されている。
「おや、クッキー」
その声に、クッキーがぴたりと足を止めた。
「あ!!!村長!!!」
杖をついた大きな熊の獣人──村長らしき人物が、俺たちを見下ろす。
「どうしたんだい? その……人は?」
「ええっと!この人は、あたしのお客さんのダレンさんです!!」
「そうなのかい……」
村長は、俺とクッキーを見比べてから、やんわりと言った。
「……とりあえず、その手を離してあげな?」
クッキーは、はっとして振り向く。
「はッ!!!」
その瞬間、村中を引きずり回され、ボロボロになった俺と、ようやく目が合った。
多分、俺の身体は、数センチ削れた。




