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【瞬間移動】で逃げるだけ!〜S級冒険者の裏切り者として追われた俺、気づけば魔王軍の最高幹部になってました〜  作者: 太田
第2章 走って転んでぶつかって

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第25話 友達だもんね!!!

 森の中、土を踏みしめる足音だけが静かに響いていた。


 湿った落ち葉が靴底に絡みつき、踏み込むたびにかすかな音を立てる。


「君の村って、どんな人が住んでるの?」


 そう尋ねると、目の前を歩くクッキーは振り返り、ぱっと顔を輝かせた。


「ええっと! 村長とか、メープルとか、ビスキーとかが居るんですよ! みんな優しいですよ!!」


 満面の笑み。


 やけに弾んだ声。


(……なんか、甘そうな名前ばっかだな)


 そう思った矢先だった。


「あ!」


 クッキーが声を上げると、小さな体をトタトタと揺らしながら駆け出した。


「待って!」


 慌てて追いかける。


 枝葉を避け、木々の間を抜けたその先で視界が、ふっと開けた。


「着きましたよ!!!」


 クッキーが両手を広げて叫ぶ。


 そこにあったのは、獣人の村だった。


 丸太を組み上げた家々が、森の起伏に沿うように点在しており、壁には樹皮が残され、屋根には苔と蔦が絡みつき、まるで森そのものが家々を覆い隠しているかのようだった。


 家と家の間を、子供の獣人たちが駆け回っているのが見えた。


 子供の獣人が走り回っているのが見えた。


(ここが……獣人の村……)


 教科書で、文字としてしか知らなかった存在。


 だが、実際に目にすると、その暮らしぶりは驚くほど“文明的”だった。


「ささ! 行きましょ!!!」


 クッキーは迷いなく村の中へ踏み込んでいく。


 俺は一瞬、足を止めた。


 緊張と、わずかな恐怖が胸の奥に湧き上がる。


(いざとなったら逃げるか…)


 森の方角と距離を頭に叩き込み、覚悟を決めて後に続いた。


 石を敷いた道は不揃いで、ところどころに獣の爪痕のような溝が走っている。


 村に足を踏み入れた瞬間だった。


 獣人たちが、俺を見るなり蜘蛛の子を散らすように姿を消した。


 木陰から。


 屋根の上から。


 家と家の隙間から金色や琥珀色の瞳が、いくつもこちらを窺っている。


 そんな中で、クッキーは、気づいていないのか鈍感なのか、尻尾を揺らしながら歩いていた。


「止まれ」


 クッキーの前から声がした。


「あ!メープル!」


 そう叫ぶと、彼女は前へ走り出した。


 現れたのは、男の獣人だった。


 背は高く、引き締まった体躯。


 灰と銀が混じった毛並みが、差し込む木漏れ日を鈍く弾いている。


 人の形をしていながら、首元から覗く牙と鋭い金色の瞳──オオカミの獣人だ。


 彼は一歩前に出て、クッキーを庇うように片手を広げた。


 腰には革の鞘に収まった短剣。


 柄に手はかかっていないが、その距離が、逆に緊張を煽る。


「……人間が、この森に何の用だ」


 低く掠れた声。


 喉の奥で唸りが混じり、言葉そのものが警告だった。


(ヤバい……)


 喉がひくりと鳴る。


 一歩でも間違えれば、何が起きてもおかしくない。


「あの、そ、その…遭難して…そこの娘にた、助けてもらいました!!!」


 噛みながら、必死に言葉を絞り出す。


「遭難?」


「は、はい……」


「クッキー。本当か?」


「遭難?」


 クッキーは首をかしげた。


(こいつ…!)


 クッキーは、まず遭難という言葉の意味が分かってなかったようであった。


 オオカミの獣人の手が、短剣の柄にかかる。


「ヒッ…いや…その…」


 俺は必死でクッキーを見る。


 そして、全力でウインクをした。


「ね!クッキーちゃん!俺ら友達だもんね??ねぇ!?」


「いいえ。友達じゃないですよ?」


 キョトンとした顔で、クッキーは言った。


(このクソガキ!! )


 気づけば俺は、檻に放り込まれていた。


 どうしてこうなった。

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