第23話 木の枝探していざ森へ!!!!
薄い意識の底で、全身に鈍い痛みを感じていた。
視界は暗い。
まぶたが、鉛のように重い。
……それと。
なにか、顔を舐められている。
(……?)
ゆっくりと、まぶたを開く。
目の前にあったのは──薄いクリーム色の髪の。
その奥で、女の子が俺の顔をぺろぺろと舐めていた。
「ッ!?」
驚いて跳ね起きる。
「ぐっ……!」
次の瞬間、全身を貫く激痛。
息が詰まり、思わず声が漏れた。身体のあちこちが痛むが、特に右腕が異常だった。電気が走る、なんて生易しいものじゃない。
多分、折れてる。
それに、右耳もおかしい。全く音が聞こえない。
俺は右腕を押さえ、その場に膝をついた。
「わわっ!だ、大丈夫ですか!?」
慌てた声。
顔を上げると、さっきの少女がこちらを覗き込んでいた。
整った顔立ちの、可愛い系の少女だ。だが、服も顔も泥だらけ。まるで森を転げ回ってきたみたいだった。
そして何より──頭に、犬のような耳が生えている。
「……それって、本物?」
思わず指をさす。
「え??本物ですよ?」
きょとんとした顔で、少女は言った。
(……獣人!?)
教科書で見た獣人は、狼男だの馬男だの、いかにも“化け物”みたいな絵だった。
でも、目の前にいるこの少女は、どう見ても普通の人間に近い。
少女は首をこてんと傾ける。
その仕草が、やけに無邪気で───
ズキンッ
「ッ!」
右腕に激痛が走り、思わず歯を食いしばる。
アールにあの高さから川に落とされた。多分、右側から叩きつけられたんだ。右腕も、右耳も、無事なわけがない。
「だ、大丈夫ですか!?舐めますね!」
「いや、なんで!?」
顔を近づけてくる少女の頭を、左手で慌てて制止する。
「と、とりあえず! 木の枝とか、持ってきてくれないか!?」
「ッ!木の枝ですね!待っててください!」
そう言うと、少女は森の中へ勢いよく走っていった。
(……元気だ)
周囲を見渡す。
大きな川。その周囲を取り囲む深い森。
チェッカー王国から、どれだけ流されたのか見当もつかない。見覚えのない場所だった。
(それにしても……)
あの高さから落ちて、しかも流されて、それでこの程度の怪我で済んでいる。
(俺……思ったより頑丈なんだな…)
自分で言うのもなんだが、耐久力が魔物じみている。
森の奥から、鳥のさえずりが聞こえた。
「…………………………………………」
(遅くない!?)
少女が森に入ってから、しばらく経つ。
戻ってくる気配がない。
(まさか……動物に襲われたとか!?)
嫌な予感がして、俺は痛む身体に鞭を打ち、立ち上がった。
右腕を押さえたまま、森の中へ足を踏み入れる。
ひんやりとした空気が肌を撫でた。
慎重に進むと──
「あ……」
すぐに、少女を見つけた。
木の根元の前で、仰向けになって倒れている。
目を回し、ぴくりとも動かない。
地面には、派手に滑った跡。
急いで走りすぎて、足を滑らせ、頭を打ったのだろう。
「えぇ……」
思わず、間の抜けた声が漏れた。




