第15話 どこに落とした冒険者カード!!!!!
リビングに入ると、マザーを中心に、この施設で暮らす子供たち全員が、すでに椅子に座って待っていた。
俺たちも空いている席に腰を下ろす。
卓上には、いつもより明らかに豪勢な料理が並んでいた。
香ばしい肉料理に、焼き魚、煮込み──皿の数も、匂いも、普段とはまるで違う。
マザーがゆっくりと立ち上がる。
「今日は、冒険者になったダレンのお祝い会です。みんなで、ダレンをお祝いしましょう」
「「はーい!」」
元気な返事が、リビングいっぱいに響いた。どうやら、このご馳走は俺のために用意されたものらしい。
「それじゃあ……いただきますをしましょう」
マザーが手を合わせる。
「はい、いただきます」
「「いただきま〜す!」」
合図と同時に、子供たちは一斉に動き出し、皿に料理を盛っていく。その騒がしさが、どこか微笑ましかった。
このフォード孤児院には、俺を含めて子供が12人、そして職員が一人とマザー。
合わせて14人で暮らしている。
俺は18歳で、ここでは最年長。一番年下は、6歳のナンシーだ。
「ダレン兄ちゃん、すげぇよなぁ。しかもS級だぜ?」
「なぁ……しかも、あのアールと同じパーティーって……」
ポールとメイソンが、ひそひそと俺を見ながら話している。昼間にニックやアーザムが言っていたのと、まったく同じ内容だった。
俺のために、みんなが用意してくれた。
暗い顔をしているのは、さすがに申し訳ない。そう思って、俺はできるだけ笑顔を作り、料理を自分の皿に取り分けた。
「おいし〜ね」
「ね〜」
クララとナンシーが、顔をほころばせて頷き合っている。
この瞬間が、ずっと続けばいい。心の底から、そう思った。
やがて食事は終わり、子供たちはそれぞれ食器を洗い、自分の部屋へと戻っていった。
リビングには、俺だけが残る。
水を一杯飲み、ぼんやりと窓の外を眺めていると
「ダレン。なに、そんな湿気た顔してるのよ」
背後から声がした。
「……スーザン」
振り返ると、職員のスーザンが立っていた。
「何かあった?」
俺は外に視線を向けたまま、ぽつりと話す。
「いや……スーザンも、マザーと一緒で元冒険者だったんだよな?」
「ええ。マーサと同じパーティーだったわ。まあ、私もマーサもF級止まりだったけどね」
「……なぁ。魔物を殺すときって、罪悪感あった?」
一瞬、沈黙が落ちる。
「そうね……。無抵抗の魔物とか、子供の魔物を殺すときは、あんまりいい気分じゃなかったわ」
「……そっか」
また、沈黙。
パンッ、とスーザンが手を叩いた。
「ダレン。明日も仕事でしょ?準備はしたの?」
「準備?」
「ほら、冒険者カードとか」
「あぁ……」
俺はポケットに手を入れた。
ない。
「……ん?」
血の気が、すっと引いていく。俺の様子を見て、スーザンが眉をひそめた。
「……まさか、落としたの?」
冒険者カードが、どこにもない。
(冒険者カードがなかったら、明日城に入れない……)
考えを巡らせる。
(落としたとしたら……山の中か、城でシャワーを浴びたときに服を脱いだ瞬間か……)
「ごめん。ちょっと探してくる」
俺は立ち上がり、外へ向かう。
「まったく……!すぐ見つけて帰ってくるのよ!」
背後からスーザンの声が飛んできた。
(まずは……本当はダメだけど、シャワー室だ)
俺は夜の道へ飛び出し、王城へ向かって走り出した。




