第14話 罪悪感
俺とアールは、王城へと戻った。
「そこにシャワー室があるから、浴びてから帰り給エ。私はクエストの手続きを済ませてくルヨ!」
そう言って、アールは部屋の奥の扉を指さす。
「今日はお疲レ!また明日も頑張ロウ!明日はこの部屋で待ち合わセダ!冒険者カードを門番に見せてから入ってクレ!それデハ!」
親指を立て、軽やかに別の部屋へと消えていく。
「……はい」
返事は、かすれた声でしか出なかった。俺は、その場に立ち尽くしていた。
しばらくして、ゆっくりと扉を開ける。
そこは、金の装飾が施された豪奢なシャワー室だった。
眩しいほどに整えられた空間に、場違いな籠がひとつ置かれている。
俺は無言で服を脱ぎ、籠に放り込んだ。
シャワーの栓をひねる。冷たい水が、容赦なく身体を打った。
皮膚に残る、ぬるりとした感触。魔物の血の感覚が、どうしても消えない。
あの悲鳴が、耳から離れない。何度も、何度も、頭の中で繰り返される。
やがてシャワーを止め、籠を見ると──そこにあったはずの血みどろの服は、いつの間にか綺麗に洗われていた。
まるで、最初から何もなかったかのように。
俺は王城を出て、ゆっくりと家路につく。
頭が、ぼうっとしていた。
身体が、自分のものじゃないみたいだった。
「お! ダレン!」
背後から声がした。ゆっくり振り返ると、そこにはカリスと、その後ろにカレンとシャノンが立っていた。カレンとシャノンは、相変わらず俺を睨んでいる。
「お前、すげぇな!S級冒険者になって、アールと同じパーティーなんだって!」
カリスは、心底嬉しそうに笑う。
「今、俺たちもパーティー組んでるんだ!いつか俺らもS級冒険者に頑張るなよ!」
「……そうか」
俺は、短く答えた。そして、言葉が喉からこぼれ落ちる。
「なぁ……魔物を殺したときって、罪悪感……感じるか?」
カリスは、一瞬きょとんとした顔をしてから、首を傾げた。
「いや?魔物って害虫とか害獣みたいなもんだろ?なんで罪悪感なんか感じるんだ?」
「……そう、だよな……」
それきり、沈黙が落ちた。
「カリス、さっさと行きましょう!S級冒険者様はお忙しいんですから!」
「お! そうだな!じゃあな!」
カリスは手を振り、去っていく。
家に帰る。
「おかえり〜」
マザーの声。
「……ただいま」
俺は、それだけ言って部屋に入った。
「おかえり〜」
「おかえり」
同じ部屋に住む、アーザムとニックがいた。
「……ただいま」
俺は梯子を上り、そのまま寝転がる。
「どうしたんだよ、ダレン兄!今日、初クエストだったんだろ!」
「疲れてるんだよ。ゆっくりさせてあげようよ」
二人の声が、どこか遠くに聞こえる。
「でも、すげぇよなぁ。S級冒険者だぜ?しかも、あのアールと一緒のパーティーなんてさ」
「……ダレン兄さんが、頑張ったんですよ」
下から、マザーの声が届く。
「あなたたち〜、ご飯よ〜」
「あ、マザーだ。ダレン兄、行く?」
「あぁ……」
重たい身体を起こし、俺たちは下へ降りた。




