表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スランプで逃げ出したライターですが、古都の和菓子屋で無愛想な職人の経営を救ったら、硬い鏡餅ごと心を開かれて溺愛されました  作者: 水凪しおん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

番外編「甘すぎる日常と媚薬のチョコレート」

 二月十四日。バレンタインデー。

『月光堂』の店頭には、『特製・苺チョコ大福』を求める客の行列ができていた。

「いらっしゃいませ! はい、チョコ大福五つですね!」

 湊は看板息子として、見事な手際で客を捌いている。エプロン姿もすっかり板についた。

 工房では蓮がフル回転で大福を作っている。

 忙しい一日が終わり、店を閉めたのは夜の八時過ぎだった。

「ふぅ~、疲れた! 完売御礼ですね!」

 湊が伸びをすると、蓮が冷たいお茶を持ってきてくれた。

「お疲れ様です。……これ、どうぞ」

 差し出されたのは、小さな箱。

「え? これって」

「あなたへの、バレンタインです」

 蓮が少し顔を背けて言う。

 箱を開けると、中には芸術的に美しい練り切りが入っていた。形はハート型だが、色は淡いピンクと白のグラデーションで、和の上品さを保っている。

「特製です。中身は……秘密です」

「えー、気になる。食べていい?」

「どうぞ」

 湊は一口齧る。

 すると、中からとろりとした濃厚なチョコレートと、甘酸っぱいフランボワーズのソースが溢れ出した。さらに、ほんのりと洋酒の香りがする。

「んんっ! 美味しい! これ、すごく大人の味……」

「ブランデーを少し多めに入れました。……酔いますよ?」

 蓮の意味深な視線に、湊はドキリとする。

「……もしかして、僕を酔わせてどうするつもり?」

「さあね。……今日は疲れを癒やしてあげようかと思いまして」

 蓮の手が湊の腰に回る。

「甘いお菓子と、甘い夜。どちらがお好みですか?」

 耳元で囁かれ、湊は腰が砕けそうになった。

「……両方、欲しいです」

 湊が上目遣いで答えると、蓮は低く唸り、湊を抱き上げた。

「強欲な人だ。……たっぷりと、味わわせてあげますよ」

 工房の灯りが消え、二人の甘い夜は更けていく。

 今年のバレンタインは、チョコよりもずっと甘く、溶けるような一夜となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ