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Other Worlds  作者: ゴマみそパスタ
1章 花火は誰を燃やすのか
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第9話 花火は終わり

災害級。

一部の魂の持つ過剰な力に対して、迅速に対応するため作られた区分である。

災害級はその特徴によって3つに分けられる。

大規模破壊、大量殺戮を可能とする震災型。

周辺環境の汚染や生態系の破壊を引き起こす公害型。

経済的な混乱を引き起こす冷害型。

3つの中でも震災型は、優先度と戦闘力が直結しやすい傾向にある。

そして、全世界において、現在生存が確認されている震災型の優先度は最大で5だ。


(つまり…今ここにいるのは…)


現状、世界最強の女。


『ああ…私に向かって災害級ってあんまり言わないでくれるか。言われていい気分にはならない。』

『…!す、すいません…』

『まあ、初めてだからそんなの知らなくて当然だ。私が先回りして言わなかったのが悪い。』


それにしても、初めて聞いたときから意外だった。

世界最強が宿主を持っていない魂だとは。

基本的に魂単体は肉体と魂が合わさっている場合より、スピードもパワーも弱まるのに。


『あ…この前はありがとうございました…俺を運んでくれたって…』

『大したことじゃないし、敬語を使う必要もない。私もお前に敬語使ってないしな』


確かになぜ悠馬は敬語を使う必要があったのだろうか。

紫龍は口調としてはだいぶぶっきらぼうで、そんなにフォーマルな雰囲気はこの場にない。


『それじゃあ…聞きたいんだけど、良い?』

『ああ。短めでな』

『ボマーを倒したの、本当は紫龍さんじゃないですか?』


悠馬はずっと疑っていた。

ボマーは確かにフラフラだったが、あれで果たして相打ちまで持っていけたのだろうか。

紫龍が片付けたのではないだろうか。


『…トドメはな。だが、お前が倒したも同然だ。あいつはトドメなんか刺さなくてもあのままだったら勝手に気絶してた。待ってらんなかったから私がそれを早めただけだ。』


紫龍は気を遣って言っているのだろう。

結局、悠馬はなんの役にも立たなかったということか。


『…はあ、結局俺は、助けられないと何もできないってことか』

『…人間、みんなそうだ。謝罪や贖罪すら、他人の力を借りないとできないようなクズもいる。気にすることはない。もう本題に入るぞ。』

『うん。何ですか?』

『敬語やめろ』

『…すみません』


紫龍は特定の組織に属さず、自身の判断で動くらしい。

そんな紫龍がなぜ悠馬の下を訪ねたのか。


『亜人対策委員会について、私と情報共有をしてくれないか。』

『…え?なんで…俺に?』


情報共有がしたいというなら本部の事務局に行った方が良い。


『…私が不実体対策委員会の権威ある立場に合ったとしようか。で、大体そういう奴は交換条件として私の入隊をせがんできたりもするわけだ。私としては訳があって入隊できないし、それ抜きでもそもそも入隊したくない。〔土神〕たちが居れば、だいぶマシだったんだがな…』

『え?〔土神〕?』


〔土神〕という名前が耳に入り、思考の9割を支配する。


『あと、お前らの中に多分裏切り者がいるだろうしな。そこで、亜人対策委員会に現場で接触できて、尚且つ新人のお前を選んだ。で、どうだ。お前だって情報が欲しいだろ?』


説明が終わったと同時に、悠馬は口に出す。


『〔土神〕って…〔土神〕と会ったことがあるんですか!?』


〔土神〕は、かつて不実体対策委員会に属していた史上最強の震災型災害級だ。

学校の授業中寝ていた悠馬でも知っている。


『失踪前にな…そんなことどうでもいいだろ。お前は私の提案に乗るのか?乗らないのか?』

『…俺、別に大した情報持ってませんよ?』

『だから敬語やめろ』

『あっ、すいません。』


なるほど。

命の恩人だという意識があるので、どうしても敬語が出てしまうらしい。


『私もそんなに大した情報は持ってない。それに、お前が提案を受けるのであれば、また不定期的にここに来る予定だ。今すぐに情報を用意しろってわけじゃない』

『…分かりました』

『………敬語、まあもういいか』


悠馬にも利がある上に、命の恩人の助けになれるのであれば、断る理由はない。


『それで、早速だが、6ヶ月前の件だが、奴らはどこから現れたんだ?』

『変装してこちらに潜り込んでたんです。おそらく〔リンゴ〕の仕業だと思います。』

『ふーん…ありがとう。それで、お前も何か聞きたいことはあるか?』

『それなら…亜人対策委員会のことがあんまり分かってないんで、教えてくれませんか?目的とか』

『…そんなこと、自分で調べりゃ分かるんだが、本当にそんなことで良いのか?』

『はい!それが分からないとそもそも何聞いたら良いのかすら分からないので!』


紫龍が悠馬を呆れた目で見る。


『…もうちょっと情報収集に力入れたらどうだ…?まあ良いんだが』


紫龍が語り出す。


『あいつらは、実体干渉系の変異種の人権を否定する組織だ。目的は、全ての実体干渉系の変異種の社会からの排斥。一度は〔死神〕や〔コールド〕たちが組織壊滅まで追いやったんだが、残党たちがまた決起してな。それが今のあいつらだ。』

『へー、ちなみに〔死神〕と〔コールド〕って誰ですか?』


〔死神〕は神と名前に付いているので災害級だろうが、悠馬は両方とも知らない。

紫龍は少しの間目を細めて、宙を見ていた。


『…私の、恩人だよ。』


そう言い切る紫龍の表情はどこか哀しげだった。


『きっと…〔コールド〕は…』


小さく呟かれた紫龍の声を、悠馬の耳は微かに捉えた。


『今、なんて?』

『…いや、何でもない忘れてくれ。じゃあな〔雷神〕。また会おう。』


紫龍はそう言って去って行った。







_「彼はもう、しばらく現場に出さない方がいいのではないでしょうか?」

「…なぜですか?」


司法部部長の〔アオギリ〕の発言の理由を、〔スカイ〕が問う。


「…もう、彼を前提に動くのではなく、彼が欠けた後のことを考えるべきです。あなたたちの凶行が招いた事態だ。理解されていると思いますが、早めの方が、あなたたちの身のためですよ。」

「…体制を築いておくというのは、私としても、必要事項だと考えています。ただ、その間、彼を使わないというのは、極端ではありませんか?」


災害級は一言で纏めるなら、手ごろな近代兵器。

不実委員の活動を都市伝説的に脚色し、一般に秘匿するという効果を損なわないどころか、むしろ引き上げる。

尚且つ、近代兵器に近しい規模の効果。

面倒な事案に対し、比較的軽微な法的制限で使える最高の代替だ。


「…わざわざ提案してきたのですから、私の意見も取り入れたいとお考えになってのことですよね?あなたがその気であれば、ただ許可を出さないだけで済むはずです。私は彼を引き続き、現場に出すべきだと考えています。」

「…先程、私が申し上げたことは、彼の現場での活動を止める根拠の主だった部分ではありません。彼の身体の状態についての懸念は、あなたにもあるはずです。」


確かに、〔雷神〕は以前と同じような動きはできないかもしれない。

リハビリは終わったとはいえ、本調子ではないだろうし、軽微とはいえ、後遺症も残らない訳ではない。


「それでも、彼は災害級たり得る戦力ですよ。それに、彼の身体は、そこまで致命的な状態ではないことが分かっています。」

「…そうですか。分かりました。やはり、私が過度に気を回しすぎただけでしたね。ただ…」


〔アオギリ〕は、あくまでこちらを気遣ってこの提案をしたのであろう。

そのことは分かっていたが、より確信を得ることになった。


「下の暴走…止めることができなかったあなたにも責任の所在があると見られています。あなた方自身のためにも、信用回復に努めてください。」

「…はい。お気遣い、感謝いたします。」


自分だけ、犠牲を払わなくて済むなんて甘い話はない。

誰かに犠牲を強いて良いのは、自分を犠牲にする覚悟がある者だけだ。


(…〔雷神〕さん。あなたには申し訳ないですが…次も、押し付けることになりそうですね)

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