第7話 反撃の狼煙
砂埃が舞う。
「あー!痛えな!ははは!」
ヘルメットなしで最大規模の爆破をしただけあって、ボマー側のダメージも尋常ではなかった。
体が丈夫とはいえども、至近距離で全身に爆破を浴びてノーダメージというわけにはいかないのだ。
「いやー!死んだかな!生きてるかな!どっちだろうなあ!」
先程も無事だったし、案外生きているのではないか。
流石に最大の爆破だし、殺せているのではないか。
2つの考えがボマーの中で渦巻き、ボマーは気分を高揚させていた。
「はははっ!爆破したりないが…まあ死んでてもそれはそれで面白いか!」
そう口に出した直後だった。
「ぐほおっ…!」
砂埃の先から何かが飛び出してきて、ボマーを蹴り飛ばす。
ボマーは咄嗟に後ろに跳んだが、勢いを逃し切れず、声を上げてぶっ飛んだ。
何かは再び砂埃の中に消える。
「…ははは!ひょっとして…お前なのかあ!?」
砂埃が止んで、立っている男が1人いた。
悠馬だ。
「どうやって防いだんだあ!?俺の最大規模の爆破あ!こんなやつ初めてだ!面白え!」
「黙れ気持ち悪い」
ボマーは爆破を防がれたことに高揚しているのか、捲し立てるように話す。
悠馬からしてみれば、鬱陶しいし、自分の攻撃を防がれて、なぜそのような気分になるのかも理解できない。
「もう一発!これでどうよ!」
ボマーの周辺から再び拡散する閃光。
そして熱。
爆破により、周辺に砂埃が撒き散る。
悠馬は爆破が止むなり、ボマーに向かって接近し、首を蹴ろうとする。
「おっと!」
ボマーは咄嗟に屈んで避けた。
悠馬の蹴りが空振り、悠馬はそのままボマーから離れる。
「ははは!そおーかそういうことか!」
ボマーは何かに気づいたらしい。
大方どうやって爆破を防いでいるかだろう。
悠馬にも原理は分からないのだが。
「触手を送風機に俺のボム液吹っ飛ばしてるってことか!最高だなお前!」
(ボム液…そういうことか)
爆破される直前に〔スカイ〕に指示された。
魂同様、実体ではなく霊体を帯びた液体の海、霊海。
その霊海の上への流れを、触手を回して作れと。
ボム液というのは魂由来の霊体の物質で、だから触手で作った水流に乗るということだろうか。
(ここまで読んでたなんて…部長、やっぱり只者じゃないな)
少ない情報から変異の詳細を看破するとは。
「いいーねえ!お前みたいなのは見たことねえ!久々のステゴロだ!」
そう言ってボマーは悠馬に向かって駆け出す。
ボマーは意外にスピードがあり、悠馬は直ぐに逃げるという選択を迫られた。
「はいどーん!」
「…っ!」
爆破が来る。
悠馬は長い触手を思い切りぶん回して上への水流を作った。
辺りで鳴り響く爆破音。
それのせいで気づかなかった。
ボマーが後ろから迫ってくる。
「はいよっ!捕まえたあ!」
「…っ!?」
ボマーの右手が悠馬の頭を押さえつける。
勢いそのまま地べたに顔を押し付けられた。
(何を…)
こんなことをしても無駄だ。
ボマーだって爆破の反動でフラフラなのだ。
怪力の悠馬を拘束し続けるなんてできるわけがない。
「ぶっ飛ば…」
「させねえよ!」
ボマーの魂から伸びる触手が悠馬の服の穴から背中をすり抜ける。
そのまま悠馬の体の内から広がる熱。
凄まじい音が鳴り、悠馬から広がる閃光。
「がふっ……あっ…」
破裂する内臓。
外へ何かが抜けていく。
体の中がスカスカだ。
熱が隙間へ向かってドバッと溢れ出すように暴れ始める。
頭が真っ白になっていく。
腕はどこだ。
腹は。
脚は。
ああ、これ本当に死…
そんな考えが浮かんだ瞬間、視界がバラバラに解けていった。
_「んー。〔顎〕、やるなあ。」
〔リンゴ〕が銃のスコープ越しにボマーを見ている。
命令をまるで聞かず、爆破で無駄に目立って、戦闘力以外評価しようもない。
〔溝〕や、敵ではあるが、審判者たちを見習って欲しい。
そんな男だが、〔雷神〕を仕留めた。
「まあ、トドメ刺さないのはマイナスだが…と言ってもあのまま放置したら10分と経たずに死ぬかな?」
「あの人、通信機壊すせいで連絡取れないんですよね…」
〔雷神〕も大概化け物だ。
恐らく、体の変形具合からして、心臓まではギリギリ潰れていないんじゃないだろうか。
「触手で多少は防いだのか…?どうせ死ぬから意味はないんだけど…それにしたって頑丈過ぎじゃ…」
そう呟いたときだった。
息を呑む。
背筋に走る恐怖。
本能が、経験が今まで積み上げてきた全てが訴えかけているこの瞬間。
〔リンゴ〕が空を見上げる。
空中を流れる大量の魚。
その魚がボマーの方へ泳いで行った。
「……っ、もう行った…か」
魚が完全に通り過ぎるまで、〔リンゴ〕は息を潜めていた。
「あれ、〔顎〕の方に…ミニカジキだったよな…」
「ちょっと…大丈夫ですか?〔リンゴ〕さん」
「ああ…平気ですよ…」
小さいカジキ。
魂の形は普通、卵から半分生前の姿が出ているような見た目になる。
あのカジキたちは完全にカジキ。
しかも、サイズがカジキとは思えない程小さい。
「…〔顎〕、あいつ…」
なるべくそうなって欲しくない。
そうなって欲しくないが見てしまった以上、認めざるを得ない。
「死んだな…」




