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Other Worlds  作者: ゴマみそパスタ
1章 花火は誰を燃やすのか
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第3話 第二の災害

眷属の少女は無視するべきだ。

時間がない。

悠馬は藤原琴音に向かってミサイルのようにぶっ飛ぶ。


「待っ…やめ…!」


後ろから声が聞こえる。

きっと藤原琴音を想っているからこそ反射で声が上がったのだろう。


(殺さないように…気絶させる…)


目線を頭に向ける。

構えた拳の先にも頭。

これだけやれば、どんなに馬鹿でも回避行動か防御行動を取る。

藤原琴音は防御を取ったらしい。

悠馬は体重を乗せた硬い拳を、藤原琴音の頭に向かって放つ。

守られた。

首から頭にかけて分厚い鉱石で固められた。

だが、その程度の防御では悠馬の攻撃を殺すことはできない。

鉱石を一撃で粉砕し、藤原琴音を仰け反らせる。


(…おかしい。確実にぶっ飛ばせる威力なのに…っ!?)


硬化で足を地面に固定している。


(なんのためにそんなこと…)


すぐに答えは出た。

眷属の少女に後ろから後頭部を思い切り殴られた。

不意打ちだったため防御すらできない。

パワーがそれなりにある相手の硬化パンチを後頭部にもらったのだ。

普通の人間なら、そのまま気絶していただろう。

ただ、相手は悠馬だ。

悠馬は一瞬で立て直すと、そのまま背後に肘打ちを決める。


「けほっ…」


感触的にカス当たりだ。


(ぶっ飛ばすために追撃を…)


そう考えた悠馬に、藤原琴音が追撃する。

背中に思い切り突き刺さる飛び蹴り。

悠馬は地面を勢いよく転がった。

眷属の少女が藤原琴音の側で立ち上がる。


「お姉ちゃん…逃げて。ここは私たちが引き受けるから」

「いや」


眷属の少女の願いを藤原琴音が跳ね除ける。


「やっぱり美夏たちが犠牲になって、私だけ逃げ切るなんて絶対いや。それならここで死んだ方がマシ」


なんか勝手に殺そうとしていることにされている。


「殺す気はないんだけど…」


悠馬が心の内で呟いただけのつもりの言葉が普通に口から出てしまった。


「は?」


「何言ってんだこいつ」といった眼で見られる。

悠馬は忘れているが、初撃で首を折りかけた悠馬が言っても絶対に説得力がないから当然だろう。


(…姉妹の仲が、良いんだな…)


気持ちが揺らぐ。

〔スズメ〕との会話以降、頭の片隅にある思考。

ひょっとしたら、悪事を働く者にも、事情があるのではないだろうか。


(いや…それにしたって今は集中しろ…)


それを知るのは捕まえてからでも遅くない。

今はどうやって捕まえるかだ。


(というか2対1か…)


どちらもかなりの実力だ。

他の眷属たちと違って鉱石を振り回すだけで対処なんてできないだろうし、状況は厳しいと言っていい。


(やるんなら1人ずつ…姉の方は地面に固定するって発想がある…ならダメ元で)


悠馬は眷属の少女に急接近し、ラリアットをかけて遠くのゴミ捨て場の方までぶっ飛ばす。

少女は回避行動を取ろうとしたが、悠馬の方が読みの精度が高かったらしく、失敗に終わってしまった。

そのまま悠馬は少女を追って、追撃しようとする。


「やめっ…ろっ!」


近くにいた藤原琴音にみぞおちを蹴られるが、関係ない。

こちらと明確に戦う意志を持っているなら、藤原琴音を優先する必要もない。

悠馬は硬化で防ぎ、藤原琴音を無視して少女の方へぶっ飛ぶ。

そのときだった。

少女がよろめきながら指を上に突き出した。

その指が悠馬に向く。


(は?まさか…)


予感が的中する。

ゴミ捨て場周辺から眷属がわらわらと出てくる。


(こいつ…眷属じゃないのか!?)


吸血鬼が2人。

つまり、妹の方も災害級だ。


(こうなってくると厄介だな…)


指揮系統が2人いるということは常に多対一。


(ぶっ飛ばしまくるしかない…けど流石に妹の方も対応してくるか?)


姉の行動を見ているし、今の悠馬の動きに対して、思いつかない方が不自然だ。


「もう少しでウラヌス8、9とヴィーナス11が援護に駆けつけます。その場で耐えて、できればあの2人の内1人気絶させてください。ただ、無茶はやめてください。あなたの仕事はまだあります」

(…部長)


ヘッドセットから〔スカイ〕の声が聞こえた。

〔スカイ〕も理解しているらしい。

あの少女2人は、数でどうにかなるものではないということを。

そして信じている。

悠馬なら1人くらいは戦闘不能まで追い込めるということを。


「了解」


〔スカイ〕は悠馬のことを理解している。

その〔スカイ〕の提示するノルマだ。

絶対に達成する。


(とりあえずぶっ飛ばすのはしない方が良くなった…まあ、できないだろうけど)


周りの有象無象の眷属たちは一旦無視しないと厳しい。


(そのためには…こうすれば)


悠馬は全身を硬化する。

関節や、眼、口や鼻や耳などは覆わないようにしつつ、棘の鎧を纏った。


(これで眷属たちは全部返り討ちにできる…)


悠馬は2対1なら既に経験がある。

ウラヌス11に入隊した初日。

脱獄犯を2人相手にした。

だからこの場の対処法も分かる。

妹の方は地面を踏み締めている。

飛び出したいのを必死に堪えているといった感じの血気盛んぶりだ。

悠馬は妹の方に狙いを定め、勢いの乗った拳を腹にぶち込んだ。


「かはっ…」


妹は学習したらしく、地面に足を固定しているが、今の悠馬には好都合だ。

腹をひたすらに殴り続ける。


「おまえ!やめろっ!」


藤原琴音が悠馬に向かって連撃を決めている。

足払い、右ストレート、回し蹴り。

多様な攻撃により硬化で作った鎧が割れる。

そして、その部位に痛みが走れば、すぐさま鎧を生成する。

吸血鬼対策の武装も凹み始め、背面の武装には穴が空いた。


(…大したことないな)


腰や脚や肩、全身が痺れる。

ただ、リボルバーの攻撃に比べたら死なないだけマシだ。

ただただ腹を殴り続ける。


(倒れろ…)


そうして10秒前後殴り続けた。

既に白目を剥きかけている少女を気絶まで追いやるため、最後の一撃を放つ。


「やめろっ…やめろおっ!」


拳が少女の腹に届く直前だった。

悠馬の拳が弾かれる。


「…は?」

(なんだこれ…これは木刀?)


木刀を持った謎の和装男が悠馬の拳を防いだ。

そのまま木刀の男は悠馬の立っている地面を切り裂いて、悠馬に蹴りを加えた。


「ごはっ…」


目の前の景色が真っ白に染まる。

背中を走る衝撃で、意識が戻ってくる。


(…あっぶな!こいつ…攻撃の威力が尋常じゃない…!)


意識を取り戻した悠馬は地面を蹴り、距離を取った。

しかし、木刀の男は既に接近していた。

木刀が悠馬の首を飛ばすべく振るわれる。

死。

悠馬の頭をその言葉が埋め尽くした。


「っ…ぶ…」


頭をずらして紙一重で避けた。

右目の下が木刀によって切り裂かれ、血が垂れる。

スピードもパワーも、悠馬より上だ。

負傷した悠馬がそんな相手の攻撃を避けられているのは、反応速度の速い体質に拠るものだった。


(こいつ…災害級…!?3人目は今いないって話じゃ…)


一度避けたとはいえ、即座に追撃が来る。

木刀が悠馬の右腕を肩から切り飛ばした。


(しまっ…縫合できる人は…いや、今はそんなことどうでもいい!)


悠馬は地面を蹴って後ろに跳ぶ。


(どうすれば…こいつに勝てる?)


純粋に自分より強い相手。

どれだけ考えても、策は全く浮かぶ気配がなかった。

言わなくても分かるかもしれませんが、幕間は0章と1章の幕間なので、このときの悠馬さんは既に命謝君に会ってます。

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