第2話 同類
「いっ…うっ…」
殴り飛ばされた藤原琴音の首が変な方向に曲がりかける。
(…あれ?…殺すとこだった…っ、最悪かよ!無防備な人間の頭に打つ威力考えられないのか…!)
思ったより脆い。
毒ガスを撒いていた子供より脆いかもしれない。
(眷属より本体の方が脆いこと…あるのか)
「…殺したらあなたが権力濫用で捕まりますからね。勾留だって分かってます?」
(げっ…)
ヘッドセット越しに〔スカイ〕に詰められる。
悠馬たちの制服にはカメラが仕掛けられており、作戦の指揮をとる事務局員は映像を閲覧できるのだ。
何回目かは分からないが、呆れと怒りが混じった声に慣れることはない。
「いや、あの…すいません…」
「…勾留ですからね。戦闘許可は出します。」
念を押された。
(分かってるんだけど…どうしてもなあ…一旦、落ち着け…)
だが、〔スカイ〕から悠馬に戦闘許可が出された。
悠馬は藤原琴音に目をやる。
藤原琴音の首が音を立てて真っ直ぐに戻る。
ほとんど元通りになっているが、どうやってやったのか。
(脆いけど…再生力は高いのか?)
「…クソ野郎」
異様に高い声。
藤原琴音は悠馬を悔しそうに一瞥すると、すぐに走り出した。
「あっ…ちょ、待て!」
〔セトラ〕ほどではないが、足が速い。
すぐに追いかけなければいけない。
悠馬は藤原琴音を追うために走り出した。
悠馬の足音がうるさかったのか、それとも最初から悠馬が見逃すことは期待していなかったのか。
藤原琴音が上に向かって右人差し指を突き出す。
その指が悠馬に向けられた。
その瞬間だった。
「は…?」
横から眷属のタックルを喰らった。
(倒れ込んでたのに…なんで…)
あの指の動きが見えたというのだろうか。
硬化で防いだ悠馬だったが、別の眷属にも群がられて身動きが取れなくなった。
(このままだと取り逃す…!)
消耗が激しいがやるしかない。
「うっ…らあっ…!」
体の周りに硬化で大量の鉱石を生成して、眷属たちに押し当てる。
ある程度距離ができたため、そのまま鉱石を振り回して眷属たちをぶっ叩く。
鋭利ではないので殺すことはない。
眷属たちを遠くまでぶっ飛ばした悠馬はすぐに藤原琴音を追う。
周りに浮く鉱石はそのままだ。
「めんどくさいっ…!」
再び藤原琴音が大口を開けて息を吐きながら指を悠馬に突き出す。
大量の眷属が周りの建物から湧いてくる。
(量がおかしいだろ…そりゃこんな軍勢1人が好きに操れるんだったら災害級か)
ただ、大体の眷属は鉱石を回して弾き飛ばしてしまえばいい。
操られているだけで、そこまで複雑な動きができる者は少ない。
だが、1人いた。
鉱石を全て避け、悠馬に肉薄する眷属が。
「なっ…!?」
後ろから蹴られる。
不意打ちで硬化のキックを腰に喰らった。
身体が軋むように音をたてる。
「痛って…!」
悠馬は即座に体を回転させ、裏拳を打った。
拳が空振る。
(読まれた…強いなこいつ)
悠馬は相手の姿を見る。
藤原琴音と同様のサイドテール。
瓜二つの顔。
少し色が抜けて白くなった金髪。
(…姉妹か?)
明らかに他の眷属たちと一線を画す動きの精度。
長引いてしまえば藤原琴音に逃げられる。
(そんなこと、させてたまるか…)
毒ガス事件、本部襲撃。
あのような悲劇を繰り返すわけにはいかないのだ。




