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プロローグ
小さな虫が飛んでいる。
宙を舞って血を探す、雌の蚊だ。
蚊はドアの隙間を抜けて、獲物を見つけた。
ベッドの上で寝ている2体のヒトガタ。
蚊は、その内の、銀色の髪を持った、女性にも男性にも見える方の首元の肌の上に着地した。
皮膚の上から、針を突き刺し、血を吸い上げる。
しばらくそのまま肌に留まった蚊は、満足したのか、そのまま去って行こうとした。
蚊が羽根を動かそうとしたとき、異変は起こった。
全身が動かない。
身体が痺れて、飛ぶことができない。
腹に貯まった血が、蚊の体を食い破ろうとする。
蚊の動きは、段々と弱々しくなり、ヒトガタの肌の上で死ぬのも最早時間の問題だった。
「ん…」
ヒトガタが起きて、首元の妙な感覚に気づいたのか、蚊を摘んで自らの目の前に持ってくる。
「ああ…」
納得したような表情に、若干の哀れみとつまらなさを混ぜて、ヒトガタは呟いた。
「いただきます」




