11話 死んだ方が良い奴ら
「生きて帰れると思うなよ」
目の前にいる男に向けて悠馬は言い放つ。
社会のゴミというものはどうしてか湧くものだ。
〔スズメ〕のような善人がそれらのせいで割を食う。
「粋がってんじゃねえぞ、手足ボコボコの出来損ない猿が!猿同士潰し合うくらいでしか社会に貢献できないお前に、心の広い俺が提案してやる。そこの青色で気色悪い餓鬼を渡せば俺は大人しく退いてやるよ。どうだ?」
少し茶色の混じった黒色の髪を逆立てながら男が言う。
「は?5秒前に俺が言ったことも覚えられねえのか?お前みたいなゴミは。お前を生かして帰すつもりがないんだよ俺は」
「そうかそうか…交渉するような知能も残っちゃいない猿だったか…なら死ね。」
(…!)
大量の銃弾が悠馬に向けて発射される。
悠馬は咄嗟に〔スズメ〕に覆い被さり、ダンゴムシのように丸まって背中と後頭部を硬化した。
“ゴリゴリゴリッ”
(は?嘘だろ?)
背中に出現した黒い結晶が凄まじい勢いで削り取られているのを感じる。
丸まった状態で結晶により固定されているはずの背中が、段々と自由になっていく。
(反撃しなきゃやられる…)
悠馬は魂から触手を前方に向けて放つ。
触手の先には鉱石で放射状に棘が生成されている。
「クソっ…たれえっ!」
そのまま前方を薙ぎ払うと絶え間なかった銃撃に隙が出来た。
「ふんっ…ぬあっ!」
悠馬は〔スズメ〕を抱えて飛び上がった男の下を通り抜け、渡り廊下の方へ曲がる。
「…ぜえっ、ぜえっ…」
(なんなんだあいつ!)
あの男は銃弾のようなものを撃ったが、実際は銃を持っていなかった。
悠馬には確かに見えた。
あの弾丸のもとが。
(あいつの頭から出てる…髪みたいなやつから銃弾が出た…)
束なった紐のようなものが、二つの結束バンドのようなもので纏められた噴出口付きユニット。
それが三つといったところだ。
(多分魂の一部なんだろうけど…変異種でも、あそこまで変わってるの珍しいな)
打ち出される弾は硬化で出す結晶と同じような物質だろうか。
「〔ウォーク〕…さん…」
「…っ!〔スズメ〕さん!」
〔スズメ〕が意識を取り戻したらしい。
この怪我だと恐らく動けないだろうが。
「彼は…震災型災害級の…リボルバー…と呼ばれる者…です…」
「…!」
(災害級⁉︎)
公害型と震災型で分けられているからには違いがあるのだろうが、ガスを撒いていた子供と同等の危険なものであるということは悠馬にも分かった。
〔スズメ〕は知っていたようだし、有名になる程度には危険度が高いのかもしれない。
(…っ!)
屈め。
思うより早く行動に出ていなければどうなっていただろう。
廊下の窓ガラスを突き破って大量の銃弾が流れ込む。
銃弾は教室の壁すら貫通して、そのまま校舎の外に出た。
(マジでヤバいなこれ…)
今思えば銃弾撃ってくる相手に距離を取ったのはまずかった。
とはいえ負傷した〔スズメ〕を巻き込みながら戦うわけにもいかなかったから間違った選択ではなかったはずだ。
〔スズメ〕を此処に置いて反撃に移るというのは若干リスキーだ。
リボルバーは恐らく校舎の壁くらい時間をかければ壊せる。
寝ている〔スズメ〕をそのまま蜂の巣にすることもできるはずだ。
(そんなことする余裕は、死んでもやらない…!)
そうだ。
悠馬がリボルバーに勝てば、リボルバーを殺せば済む話だ。
悠馬との戦闘中に〔スズメ〕の方を撃ち抜く余裕なんて与えない。
(災害級がなんだ…!あのガス撒いてたクソガキもあいつの邪魔が入らなきゃ殺せてたんだ。)
ならリボルバーにも勝てるはず。
悠馬は低姿勢で渡り廊下を走った。
2歩ほどで縦断し、即座に左に飛ぶ。
リボルバーの表情が若干変わるが、それを悠馬が見るより先に撃ってくる。
悠馬は気にせず、硬化させた右腕を床に打ちつけた。
鉱石に包まれて巨大なカニのハサミのようになった右腕。
その右腕が校舎の床をぶち破り、悠馬とリボルバーは足場を失った。
「お前は…絶対に殺す!」
床が割れてゆく音を掻き消すほどの怒号が校舎に響いた。




