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Other Worlds  作者: ゴマみそパスタ
0章 極上の火打石
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9話 青二災

(意外と視認性は悪くないんだ…)


毒ガスというからもっと靄のようなものを想像していたが、そんなものではないらしい。

校内は正直見た目だけなら普通と変わらない。

まだ夕方なので明るく、恐ろしさもない。

毒ガスは無色透明で景観になんの影響も与えていない。


悠馬たちは特別棟4階を歩いていた。

二手に別れているので、ここにいるのは〔ツツジ〕、悠馬、〔ブリード〕、〔イチジク〕だけだなのだが。


(それにしても…なんで俺が犯人確保で、〔スズメ〕さんが救助担当してんだろ…)


〔ツツジ〕のこの分け方は正直疑問だ。

〔セトラ〕が救助側に回るのは分からなくもない。

悠馬より戦闘は不得手で、だが、頭はよく回る。

戦闘よりは救助の方が適任なのだろう。


だが、悠馬は〔スズメ〕に一回でも勝てた試しがない。

行動予測の練習で何回も何回も挑んで、全て負けた。

悠馬より〔スズメ〕の方が適任なのではないか。


(そんなに救助ができなそうと思われてんのかな…俺)


別に悠馬だって救助くらいできる。

ガスマスクを付けて悪化を防いで、全員硬化で絡め取って外に出すだけだ。


「〔ウォーク〕さん。下を向くのはなるべくやめてください。いつ敵に出会すか分からないんで。」


〔ツツジ〕に言われて気づく。

悠馬は周りを全く見ていなかった。

敵に段々と近づいているというのに。

気づけばもうすぐで渡り廊下というところまで来ている。


「…少し急ぎます。警察が戦ってるかもしれません。」


〔ブリード〕、〔イチジク〕が付いて来れるスピードで〔ツツジ〕は駆け出す。

一方の悠馬は、〔ツツジ〕を追い抜かしそうになって、スピードを慌てて落とす。

それでも結局抜かした。


今回の任務には警察も参加している。

戦闘経験は悠馬たちよりあるだろうが、今回の敵は実力が分からない。

というより悠馬はどんな相手だろうが、基本的に知らない相手なので相手の実力なんて常に分からないと言っても差し支えないのだが。


(それでも、流石に直ぐには負けないはず。)


警察官に加えて悠馬と〔ツツジ〕が戦えば、恐らく勝てるだろう。

そう考えていた。


「…え?」


渡り廊下を超えて教室棟へ入ってすぐに右。

床に倒れている警察が3人。

いや違う。

そのうち2人ほどは、酷くひび割れた壁に力なくよりかかっている。


(…って、今はそんなことどうでもいい!)


全員漏れなくガスマスクは外れている。

見ると辺りには壊れたガスマスクが3個散らばっていた。


音が軋む。


教室。

壁に亀裂が入る。

掲示物を突き破って何かが来た。

悠馬が声を上げようとしても、手遅れだった。


「くっ…」


悠馬は咄嗟に前に転がって攻撃を避けた。

そう、()()()


“カラン”


ガスマスクが落ちる音。

〔ツツジ〕の顔が顕になる。


「…!」


慌てて〔ツツジ〕は口を塞ぐ。

蹴りが来る。

悠馬が読みを口にするのを待たずに、蹴りが〔ツツジ〕の腹に突き刺さる。

〔ツツジ〕は渡り廊下の方まで一気にぶっ飛び、床に転がった。


「…っ、班長!」


間違いない。

男の見た目は小柄。

いや、ひょっとしたら年齢的に少年と言われるべき時期なのかもしれない。

青白い皮膚に血管の濃い赤色がくっきりと見える。

短髪の髪はボサボサで所々黒色が抜けていて、服はボロボロ。

何より異質なのはこの環境でガスマスクを着けていないということだった。


(間違いない…こいつがこのガスの元だ。)


少年は窪んでいて不健康そうな眼を悠馬に向ける。


(…来る!)


飛んできた蹴りに対して咄嗟に右に飛ぶ。

速い。

〔セトラ〕や悠馬には一歩及ばないもののほぼ同等のスピード。

痩せこけた見た目からは想像できないスピードだった。


(思ったより回避ギリギリ…!)


少年はそのまま先程の蹴りで使っていない方の脚を軸にして回し蹴りを繰り出す。


(…!)


回避が間に合わないので左腰を硬化させて防ぐ。


(…って)

「っ、えええ…!?」


痛い。

いや、痛みは大したことない。

ただ、飛び過ぎだ。

悠馬の体は教室の壁をぶち破り、黒板に当たって止まる。

電流のような凄まじい衝撃が背中を走る。


(痛っ…)


背中の硬化まで間に合わなかった。

ただ、骨が折れたり、出血したりしているわけじゃないので継戦はできる。

悠馬がぶつかった黒板は真っ二つに割れている。


(なんでこんな馬鹿力なんだよ…)


悠馬は硬化をしていないので体が結構衝撃を吸った。


(それで黒板がこの有様…化け物だな。ただ…)

好きに暴れられるのもここまでだ。





_この黒服男。

さっきからソラの攻撃にずっと対応してくる。


(なんで…一撃で殺せる人ばっかだったのに…この人だけ…)


昔から周りはどうしようもなくて、取るに足らなかった。

毒ガスを暴発させて、家を追い出される。

スラムに流れ着いて、追い剥ぎに遭う。

ギャングに殴られる。

結局、殴れば、毒ガスを出せば、それで終わりだ。

全員少年の力を恐れ、少年から逃げるようになった。

それなのに。


(ガスマスクを取れない…お姉さんに強くしてもらったのに…)


ようやく掴んだ居場所を、仲間を守りたい。

ショウタたちと一緒にまともな家に住みたいのに。


「っ…ぅあああ!」


イラつく。


「なんで!なんでなんでなんで!」


地面を踏み鳴らして荒く息を吐く。


「なんで邪魔するの!僕の邪魔しないでよおっ!」

「は?」


黒服男はソラを冷たい眼で睨む。


「ひっ…」


あまりの迫力に一瞬怯む。

が、かえって怒りが引いて冷静になった。


(落ち着け…さっきまでイラついてたけど、まだ攻撃一回もされてないし…時間をかければ勝てるはず…)


別にちょっと長引いても問題ない。

そんな当たり前のことが頭から抜けていた。


(僕の方が…強い…!)


ソラは黒服に一瞬で接近し、体重を乗せた右ストレートを顔面に向けて放つ。

が、


「がはっ…」


ソラの腹に硬い拳が突き刺さる。

そのままソラは隣の教室まで壁をぶち破って飛ばされる。

避けられた。

そのことを理解したときにはもう黒服が至近距離まで接近していた。


(…!?)


振り上げた拳が下される前に慌てて飛ぶ。

読まれていた。

再びソラは黒服の右ストレートを喰らい、ぶっ飛ばされた。

壁を破る度に体に響く衝撃で、意識が飛びそうになる。

今度は教室を3個ほど越えて渡り廊下の前に転がった。


(あし…動け…)


動け。

動かなければ殺される。

今はソラと黒服の距離が離れている。

ここで動かなければいけないのだ。

そう思った直後だった。


「ぐあああっ…!」


右脚に尋常ではない痛みを感じる。

見ると黒い鉱石のようなものが腿に刺さっているらしい。

黒い鉱石からは細い糸のようなものが束なって、黒服の方に伸びている。

黒服がソラに向かって歩いてくる。


「いやだ…いやだいやだいやだいやだ!」


こんなところで終わりたくない。

ここでソラが終わればショウタたちは永遠にあのまま最悪の暮らしを続けることになる。


「そんなの…そんなのって…」


誰か。

誰でもいい。

助けてくれ。

そんな風にソラが願ったときだった。


「…〔ウォーク〕さん。大丈夫ですか?」


誰かの声が聞こえた。

優しそうな声だった。


(だれ…?)


足音が近づいてくる。

足のズキズキとした痛みが和らいでいくように感じた。

子供を痛ぶる悠馬さん。

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