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7話 ギムリーの夕暮れ

→→→→→兄ターン



騾馬を使って荷車を牽き、あとはひたすら木箱の荷物を上げ下げ検品検品···


基礎的な言語習得は必須だったけど、やっぱり体力ありきの仕事!


軟式野球部の3年と、農家の2ヶ月の日々がなかったら無理だった。まぁ筋トレにはなるし、直に人と話す機会が多いから異世界語の対応力アップにも役立ちそうだった。


昼食後はギルドの教練所で2日続けて戦士の訓練をして、次の1日は戦闘や犯罪やモンスターに関する座学を勉強する。ていうのをループでを繰り返すカリキュラムだ。思ったより合理的。


因みに、岩みたいなドワーフの教官曰く、俺の戦士としての適性は『中の上』らしい。


う〜ん、微妙···


そんな調子で9日が過ぎた。今日は座学日だったから午前中しかスタミナ使ってなくて、身体軽いなぁ。なんて思いながら夕暮れのギムリーの町を1人、町長が取ってくれた4階建てのアパートの俺達の部屋に向かって歩いていた。


ここたぶん物理的な文明は産業革命前夜くらいある。


ふとショーウィンドウに移った自分の姿を見て、


「え?」


ギョッとしてしまった。日焼けして、甲子園狙うレベルでガッチガチで身体鍛えてる姿になってた。


「俺、地球に帰ってからどーすっかな···」


今更、部活もないし、ドーピングみたいなもんだし、大体親になんて言われるやら。


いやそもそも、『時間経過』どーなるんだ? ロッカーに吸い込まれた元の時間に戻れるのか? それともきっちりこっちと同じ時間が経つのか? あるいは浦島太郎的な···逆に過去に戻ったりして···


ショーウィンドウの先のドワーフの女性店員に困惑されたから知らん顔でまた歩きだす。


「基本、俺のせいだし、カズネだけでもいいコンディションで帰さないとな。どの時代、でも···」


俺はようやく事を重大さが腹の底に響いてきた気がしていた。



→→→→→妹ターン


「ふーっ、キッツぅ〜。地球に帰ったら、私絶対ポイ捨てしないし、公衆トイレも綺麗に使お!」


給料はいいし、清掃業は効果が目に見えるから作業後の達成感はあるけど、食堂の手伝いよりハード!


結構ガッタガタになって仕事終わりにうがいと、両腕と顔と頭だけはお湯を使って洗えるから綺麗にして、食欲無いけど持たないから昼食をかっ込んで、ギルドの教練所にGO!


私はヒロ兄程パワーはないから護身と飛び道具の扱いがメインだけど、実技2日に座学1日のローテでガシガシ鍛えて、あれ? 私、警察学校入った? みたいな錯覚を覚えちゃう日々を切り抜けていった。


15日経った、座学日の帰り、私は少ない教練クラスの女子メンバー2人とカフェでお茶をすることになった。ちょっと今、異世界にいること忘れそう。


「カズネ、この辺り、ロングフット族少ないから寂しくない?」


ドワーフ族の女の子ゾフちゃん。衛兵隊の試験を受ける前の予備校的にギルドの教練所に通ってる。因みに私達が来訪者であることは、


「リコットみたいな気の良い田舎ばかりじゃない。来訪者を専門にしてる非合法な奴隷商もいる。関係者以外には黙っときな」


と町長に釘を刺されてるから秘密にしてる。


「大丈夫大丈夫! でもヒロ兄、お兄ちゃんと旅するのにもっと鍛えないとっ」


「ふーん?」


この子、素性サッパリだな。て思われてる気配!


「2人とも他に目的があってなんかいいな。あたしなんて普通に冒険者就職コースだよ。ウチの家、代々冒険者。なんだかなぁって。どんだけ冒険したい一族だよって」


もう1人はタレップちゃん。フェザーフット族の女の子。


「まぁ途中で転職してもいいかも?」


「うおっ? いきなり解決策きたわコレ。じゃ、グルメライターに転職しよっかな?」


「「えー?」」


私達はそこから話題を膨らませて、他愛無く夕暮れのカフェでお喋りをした。


別に嘘ばっかりじゃないけど、本音ばっかりでもない。ただ話したいだけ話したいこと話すだけ。


こんな時間、久し振りだったな···


私は考えないようにしてた学校の友達や放送部のみんなのことを少し思い出して、夜、ヒロ兄にバレないように、こっそり泣いちゃったよ。

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