6話 手厳しい町長
→→→→→兄ターン
林道から広い街道に出て、地図と他の旅人達の流れを頼りに進んでく。
「へぇ、やっぱここまで来ると道行く人もフェザーフット族よりドワーフ族が多くなるんだなぁ」
ドワーフ族はこの世界の資料や、アニメやゲームなんかの印象より身体が大きかった。
身長は成人男性で157センチ程度。女性は154センチくらいだけど、筋肉ムキムキで骨太! 服装からすると普通の行商や農家の人でも歴戦の戦士に見えた。
「フェザーフット族と違ってなんか、こう、劇画タッチだよね···」
ちょいビビるカズネはまぁよしとするか。
俺達瀧川兄妹は色々珍しくて、キョロキョロしつつ、それから小一時間程歩き、ついに!
石とレンガ造りのしっかりとした城門っ! イカついドワーフ族の門番! ここがっ、
「第二ネオ山梨村っ、ギムリーか!!」
「ネオ山梨まだ言うんだ···」
取り敢えず一際劇画タッチな門番にリコットの長老の紹介状を見せ、俺達はドワーフ族の町ギムリーへと入っていった。
中は石とレンガの建物が目立ち、使ってる主な馬は騾馬だった。
居住区は広く、別に商工業区があり、奥の農地もリコットの3倍はあるはずだった。
「ヒロ兄、ここ仕事ありそ〜」
「ああ、ファンタジー名物の『冒険者ギルド支部』もあるみたいだが、取り敢えずスルーする」
「スルーなんだ」
「いやチートとかないし、普通に死ぬって。紹介状はあるから町長のとこ行ってみよう」
「ヒロ兄、大胆なとことクレバーなとこの落差、結構あるよね」
「う、渡り場はいけると思ったんだよ···」
最初のロッカーまで遡られるとなにも言えんっ。とっとと町長の元へGO!
→→→→→妹ターン
町長さんは役場の町長室にいた。
「来訪者は3年ぶりだね。黒髪黒い瞳···単に東方系の『ロングフット族』じゃないだろうね? 稀にそういう詐欺もあるんだよ」
町長は女性の方だった。
ロングフット族っていうのは地球人と同じ姿の人達。もしかしたらこっちの世界に居着いた地球人やその子孫かも? て説もあるみたい。
「正直、証明する方法はないですが、特に金銭的な援助は求めてません。旅費が掛かりそうなので仕事は紹介してほしいですが」
ヒロ兄、流暢に異世界共通語喋ってる〜。よしっ、私も!
「リコットでは兄は農家、私は食堂で働いていました。私達、働けます! というか、地球に帰る方法探してて、そっちがメインですっ」
興奮してどんどんアピールしちゃった!
「農家と食堂ね。紹介状読む限り、兵士なり魔法なりの訓練は受けてなかったんだろう? 徒歩でリコットからの最短の渡り場を抜けてきたようだけど、戦闘を覚えないなら、もう少し金を貯めて馬車を使って旅する方法も覚えることだね」
手厳しいっ。
「すみません···イマイチどれくらい危険かよくわかってなくて」
「リコットの人達は走れば大丈夫だって言ってたし···」
「あんた達、フェザーフット族の身軽さと足の速さわかってないね? 向こうも来訪者のロングフットなんて十年ぶり。ピンときてないだろうしね」
「「···」」
そういえばリコットの皆、たまに本気出すとすごい足速いな、とか身軽だな、とは思ってたし、そんな資料もあったけど···
「どうも危なっかしい。チキュウ世界へ帰る方法は魔法のことだろうから西のノーム族の村で聞いた方がいいだろうけど、旅費稼ぎ用に仕事と部屋を紹介するにしても合わせて冒険者ギルドの教練所で身を守る手段くらいは身に付けるといいよ」
「んー···了解です」
「(日本語で)結局、異世界転移したからには冒険者ギルドから逃げられないんだね···」
「なにか言ったかい?」
「いやっ、なんでもないです!」
なんだかんだで、私達瀧川兄妹は一月程、朝からヒロ兄は市場で、私はギムリー町の清掃業の仕事をして、午後から冒険者ギルドの教練所で特訓を受けることになったよ。
結構、ハードな1ヶ月になりそう···。