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5話 移動は大変

→→→→→兄ターン



「ありがとーっ!! 行ってきますっ」


「みんな、ホントに、かしこねーっ!!」


「かしこー!」


「ヒロシ、かしこー!」


「かしこ、カズネー!」


なんか、全員号泣。


2ヶ月ガッツリ世話になった小人族フェザーフット族の村リコットに別れを告げ、俺達瀧川兄妹は林道を一晩歩いた先にあるというリコットより発達した町ギムリーを目指すことにした。


そこはフェザーフット族より頑強な小人族ドワーフ族の町らしい。ファンタジーでお馴染みの種族! 10年前にリコットを去った来訪者シンイチ氏も、打開策を求めてギムリーを目指したそうだ。


リコットはいいとこだったけど、基本的な一般常識以外の情報があまりなかったんだよ。


「日常会話くらいはできるようになったし、旅費と旅装くらいは整った! いざゆかんっ、妹よ!!」


「よしきたっ、兄者!」


普通のスライム5体くらいなら勝てるかな? てくらいのもんだけど、言葉覚えたのは大きい。どんと行ってみるぞ!


魔除けの利いた林道を地図を頼りにずんずん進んでゆく。


朝から夕方まで進むとフェザーフット族の行商や狩人なんかとも擦れ違わなくなり、さすがに緊張したが、どうにか予定通り林道脇の魔除け野営地に着いた。


「東屋よし!」


「炉よし!」


「洗い場よし!」


「スライム式トイレよし!」


知識としては勉強してたけど、初めてきた野営地にテンション上がって俺妹の順に点呼しまくっちゃう瀧川兄妹っ。


風呂には入れないけど結構快適そうだ。魔除けの破損も見られなかった。


薪の変わりに魔法的素材『トーチストーン』に火打ち石で火を点けて炉で燃やす。安いヤツだけど4時間くらいは程々に燃えてくれる。


取り敢えず、小さい林檎と『滋養円盤(じようえんばん)』を串に刺して炉で炙ってあとは水筒のハーブ水で夕飯にすることにした。


滋養円盤はベーグルとクッキーの中間みたいな円盤型の保存食。まぁ正直美味しくはないけど、栄養満点で油紙で包んでおけば常温で1か月は持つという優れた食品だ!


しっかり食べて、明日に備えるぞっ。



→→→→→妹ターン



はい、というワケで朝一で来たよ、このルートの難所『渡り場(わたりば)』渡り場って魔除けを道を敢えて途切れさせた所。


これ作っとかないとそのエリアの地上のモンスター達が道で閉じ込められた形になって怒って暴れたりするんだって。普通の動物の通り道にもなるし、必要みたい。


勿論、最低限度は道自体はあったし、間に緊急避難用の小さな野営地は作ってあるんだけど、いきなりに『玄人向けのアスレチックコース』が出現した感じ···


「ヒロ兄、ヤバそうだけど?」


「リコット村の人達はロバの馬車が使え無い道は使わないから、ぐるっと大回りしてるみたいだしな。ま、どうしても無理だったら、スッと引き返そう」


そう言って、まだ持ってる最初に拾った棒切れを持ってとっとと渡り場に進みだすヒロ兄。なんかデジャヴだわっ。

私はため息をついて、やっぱりまだ持ってる棒切れを手に後に続いた。


ザワザワ、ザワザワ···


木々の揺らめきもなんか怖いっ。


「地図的にはたった3キロくらいだ。真ん中に野営地もあるし。一応、リコットで買った『聖水』いつでも出せるようにな」


「うんっ」


聖水は2本ずつ教会で買ってた。地球と違って聖水はモンスター相手に火炎瓶みたいな効果がある!


すごい緊急したけど、いや、案外何事もなく真ん中の野営地まで着けたよ。


「意外といけたな」


「手汗で棒落とすかと思ったからっ」


私達はハーブ水と干し木苺で一息ついて、渡り場後半に挑んだ。


早足で進み···あと500メートルくらい? てところで、


ブーンっ! 羽音!!


なんか、なんかっ! すんごいデカい蜂が十数体来襲!


「走れっ、『スティールビー』だ! 速いっ。棒じゃ無理だな、聖水交代で撒くぞ! 俺からっ」


「えーっ?」


私達は棒切れは捨て、交互に聖水を撒いて、スティールビーを焼きながら全力疾走した。


後100メートルくらいっ。聖水は使い果たし、スティールビーは半分くらい残って追ってきてるっ。


私は足が縺れてきた!


「荷物!」


ヒロ兄が手を伸ばしてくれたから、私は必死で自分のリュックを渡した。


「うぉおーっ!」


「うわぁーっ!」


私達は向こう側の魔除けの林道に飛び込み、残り半分のスティールビー達は道の魔除けにバシッと弾かれ、逃げていった。


「はぁはぁ、ギリだったなっ」


「ふぅふぅ、まだスライムに勝ってないのにその上来ちゃったよねっ」


瀧川兄妹、さすがにしばらくその場でヘバってたよ···

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