2話 スライムが可愛くない!
→→→→→兄ターン
俺達が気が付くと奇妙な森だった。一見普通の森だが、よく見るとヘンテコな植物や虫や浮遊する小動物がチラホラ···
「カズネ、なんかファンタジーだぞ?」
「この感じ、異世界転移っぽいね。ふふふ」
「えー···」
発想、飛ばすなぁ。
「私、悪女か聖女になったかも? ステータスオープン! ファイアボール! 結界! ···違ったよ」
なにも起こらず、ガックリするカズネ。
「諦めるの早っ。まぁファンタジー物もわからんではないし、色々試してみっか? 普通にどっかの、山梨の樹海とか、別の惑星にワープしてるパターンもあるけどな!」
「山梨と別の惑星って同じ位置なの??」
とにかく俺達はそれから小一時間、謎の森であれこれ試してみた。結果···
「そのまんま、なにも変わらない俺達だったぁーっ!」
「場所変わっただけぇーっ!!」
無駄に汗だくになっただけだった。
スマホはトランシーバーアプリ? を入れてなかったからファイル交換しかできない。
カメラで撮って近くで交換するだけ。充電不可。取り敢えず懐中電灯にはなるが···
「取り敢えず、水と果物でも探そう」
俺達は多かった手荷物を大半置いて(カズネ未練タラタラだった)、奇妙な森を進みだした。
最初に小川を見付けたけど流れが緩く、水質がわからないから保留して、小川沿いに辿ってその脇の岩場で、水が染み出て苔と草なんかが生えてるとこを見付けた。腐敗臭や岩の変な変色は無い。
「水温は低いし、小川より濾されてる気がする。飲んでみっか」
「うん」
飲んでみると、美味ぁー!
「ヒロ兄っ、これ、コンビニで売ってほしい!」
俺達瀧川兄妹は岩場の湧き水に大感激だった。水、美味い!
→→→→→妹ターン
水だけで私のお腹は膨れない! 食べ物食べ物···私達は腹ペコの原始人みたいに食料を求め、奇妙な森の中を歩き回った。と、
ゴキュッ、ブチィッ、ズズズッッッ!!
なにやらヤバそうな音が茂みの向こうの窪地? からした。
2人で茂みから覗いてみると···
大きい半透明のグミ? みたいなのがバキバキに折られて死んじゃってる鹿っぽい生き物を消化液で溶かしてさらに折って、潰して、むしゃぶりついてる感じ!
「(小声で)グロ過ぎるよ、ヒロ兄っ」
「(小声で)スライム、じゃないか? アレ? だ〜いぶハードな仕様だがっっ」
明からに私達はこの『ハードなスライム』より弱いので、静かに立ち去ることにした。
何気にヒロ兄が棒切れを2本拾って1本渡してきたけどっ。自衛??
抜き足差し足、で去ろうとしたら。
パキィッ。
私、思いっきり枯れ枝を踏み折っちゃったよ!
これに、ブルンっ! そんなに? てくらいスライム達は反応して窪地を一斉に這い上がってきたっ。結構速い!
「うぉおおっ?!」
「ひぃいいっ?!」
棒切れ持って走る瀧川兄妹! 追うスライム達! いけるかなっ? これ!
やみくもに私達は走ったけどその先の森が一筋に途切れてるような? そのすぐ向こうにも森はある。
「カズネ! あれ、道じゃないか? 逃げ切れないからっ、縦一列にしてヤッちゃおう!」
「ヤッちゃうんだっ」
他にアイディアなかった。でも道幅広かったら···いや、足場と見通しいいだけマシだよね?
私達はヤケクソで林道? らしい所に飛び込んだ。
いやホントに林道だ。舗装されてないけど程々に整備されてるのと、大体等間隔で小さな石の柱みたいな装飾もあった。
「来るぞカズネ!」
「うんっ」
拾った棒切れを構えて待ち構える私達! だけど、バチィッ! 飛び掛かってこようとしたスライム達に道の端石の柱が反応して、光のバリアみたいなのを張ってスライム達を弾き飛ばしたっ!
慌てて逃げてゆくハードなスライム達···
「助か、った」
「カズネ。この世界、仮に『ネオ山梨』とするが、どうやらネオ山梨の交通インフラは強力らしいぞ」
山梨じゃないと思うけど、インフラ強い系なのは同意するしかなかったよ。