11話 メイラル・トレーニング
→→→→→兄ターン
現時点では正直どうしていいかよくわからなかったが、ボルッカに、
「取り敢えず、弱っちいとどの案も無理だぜ? 適性もわからんし、魔法も含めてもう一段修行してみろよ? 長老も特に勧めなかったが、お前ら商人として大成して財力で有力者と交渉するタイプにゃ見えねーし」
と言われ(ビジネス向いてなさそう、とさらっと言われちょっとショックなんだが!)俺達は改めて魔法と戦闘の修行をメイラルでしてみることになった。
幸いビッグフット退治の報酬を3人で山分けして資金はそこそこあったからしばらくなら···。
戦闘や体力のトレーニングはバイトを含めギムリーで散々やったから、長老に指導者を紹介してもらい俺達瀧川兄妹は初めて魔法の基礎トレーニングを先にしてみることになった。
因みに暇になるボルッカは当面メイラル周りで御用聞き的な仕事をするそうだ。元々駆け出しの頃、そういう仕事をここでしてたらしい。
で、指導者は元魔法使い職の冒険者で、今は『売れない画家』をしている。シトリーさん、という女性の妙齢のノームの人だった。
「最初に言っておくけどね、レクチャー料はもらうけど、バイトじゃないからっ。あくまで有料ボランティアで、私の本業は画家だから!」
と宣言してくるシトリーさん。
「「···」」
うん、とにかく、まず『魔力鑑定オーブ』で魔法使いの適性を見ることになった。石に触れて測る感じ。チート主人公ならパワーあり過ぎて石砕けちゃったりするアレだ。
俺達は···
「ヒロシは『中の下』、カズネは『中の上』だね」
「「···」」
普通にきっちり測定された!
ただ度合いは違ったので、俺とカズネは別メニューになった。
「ヒロシは魔力はパッとしないけど、生命力は強いし戦士タイプだから、取り敢えず魔力を全身に巡らせたり一箇所に集めたり、持ってる物に付与する方法をトレーニングするからね? といってもわかり難いからちょっと私の魔力貸すわ」
と言って俺の背中に片手を当てるシトリーさん。途端、ドッ! なんか熱いような冷たいようなっ。謎のパワーが背中から全身に巡った。
「おおっ?! 肩凝りとか治りそうっ??」
「まぁ、そういう効果もあるけど···この状態で右手とか左足とか、任意で魔力を身体の中、移して練習してこう」
「了解です!」
これはっ、凄いことになるんじゃないか??
→→→→→妹ターン
シトリーさんが隣の部屋で先にヒロ兄に指導してる間、私は渡された絵本みたいな『よいこのためのまほうにゅうもん〜うさぎさんでもおぼえられよ?〜』を読み込んでいた。
謎のうさぎさんが基礎的な魔法について勉強するって内容! この辺の感じは異世界でも同じなんだな、て···
「お待たせ。あなたお兄さん、魔法向いてないけど、パワーあるね。それに1人上手みたい」
タフで自主練できるタイプて言ってるんだろうけど、言い方がなんかHだぞっ?
「そう、ですか」
返事の温度1℃くらい下がっちゃうわっっ。
「え~と、カズネの適性詳細は、操作系で直感も良好···」
鑑定結果資料を読み込むシトリーさん。操作系? 漫画とかだとなんか策を巡らせるけど接近されて「バカなっ?!」とか言ってすぐやられちゃう弱能力なイメージ!
「じゃ、これがいいかな?」
シトリーさんは魔法道具の『収納鞄』からゴーグルとグローブと新体操のリボンみたいなのを出した。リボン部分になんか御経的なのが印されてる。
「これは『手習いのリボン』魔力を込めると軽く自在に操れるけど、ちゃんとやらないと重くなって上手く扱えなくなる操作系の基礎練習道具。直感力を鍛えるにもいいわ」
「あ、はい。リボンですか」
意外なのきた。手習いのリボン、受け取ってみると、
「重っ?」
ロープの束渡されたみたい!
「でしょ? ゴーグルとグローブで目と指を保護してね。実際の重さは『普通に重い』から」
「おおお···」
マジカル〜っっ。
私はこっからシトリーさんの指導の元、『新体操部体験入部中』な特訓を始めた! 魔力を込めるコツはすぐつかめたけど、このリボンっ、凄い魔力吸うんだけど??
「もうちょっと効率よくならないですかこの道具! めちゃ疲れるんですがっ」
「負荷軽いと修行にならないでしょ? 魔力回復薬は一杯あるから、ガンガンいくからね〜? はい1、2! 1、2! もっと自分を開放してっ!」
「ん〜っっっ?!」
リボンのポージングがちょっと恥ずかしいし、フィジカルそんな必要なのかな?? とにかくっ、アイディア以前のっ、自力の突破力を獲得するよっ!