10話 帰還法
→→→→→兄ターン
岩場の多い山の上にあるだけに石材を多く使った平屋の簡素な家が並ぶ居住区。風除けの為、城壁はかなり高い。
資料によるとモーフラルより土地の確保は難しいようで、農地は村外に6箇所に分けられてるそうだ。
一見すると風景が違う以外はリコットやモーフラルと同じ文明基準だが、小型の魔法の操り人形ゴーレムをあちこちで使役していた。
昼でも影で暗くなる所が多いからか、背は低めの魔力の街灯もあちこち点いてる。
ノーム族の村、メイラル。いかにもマジカルな所だ。ここなら、なにか元の世界に帰る手掛かりがあるかもしれない。
「カワっ。屋根の変わりに住人がトンガリ帽子被ってる、カワ〜っっ」
血塗れなビッグフット戦の後はテンションだだ下がりだったが、カズネはすっかり復活していた。
この世界のノーム族は背丈はドワーフとフェザーフットの中間程度。太ってるワケじゃないが全体的に丸みのある造りの顔付きで耳が大きい。
ムキムキでもすばしっこくもなく、魔力と知性の高い種族だという。
因みに長命種で180年くらい生きるそうだ。すっげ。
「オイラも野営地壊し魔の報告がある。長老の家まて付き合ってやんよ。長老とは馴染みなんだぜ?」
来訪者云々は秘密だが、ま、なんとでもなるか。
「そっか。というかボルッカ1人で調査するつもりだったのか?」
「まさか! ここの自警団なんかと組んでやるつもりだったよ。そもそも討伐のつもりで来てねーし」
「「え〜?」」
瀧川兄妹で呆れちまった。よく助かったな、俺達···
占い師の館みたいな家で暮らすメイラルの長老は、歳を取り過ぎて性別が判然としなかった。
「ボルッカ・ティティス。お前は器用な男だが、目的が無いヤツだ」
「え? オイラ?? いや、仕事の完遂報告しに来ただけなんッスけど···」
「この兄妹の旅を手伝ってやるといい。お前にとっても得る物は少なくないはずだ」
「え〜?? ちょっとよくわかんないですよ??」
長老の急な話に俺とカズネは顔を見合わせたが、この流れは腹を括るべきか? ボルッカは有能で、皮肉な所はあるが嫌な感じはしなかった。
俺達は赤髪のフェザーフットの青年に向き直った。
→→→→→妹ターン
「実は俺達、来訪者なんだ」
「元の世界に帰りたいんだよ」
「お〜···いや、ここらで東方系のロングフット族ならない話しじゃないんだろうけどよ、実際そうだ、てのに直に会ったのは初めてだぜ」
ボルッカは困惑しきりだよ。
「ま、考えておけ。奴隷商に密告するでないぞ?」
「しないッスよっ」
ノームの長老は私達を見た。
「チキュウ世界への帰還法だが、それは···いくつかあるのぉ」
「「いくつかあるんだっ?!」」
意外といける感じ??
···メイラルの宿の私達の部屋になんだかんだでボルッカも集まって、3人で長老から聞いた話しを纏めた資料を前にさっきから頭を捻ってる。
地球への帰還方は大きく分けて3つだった。
1、上級冒険者になって有力な国、魔法使い系組織、大賢者等に取り入り異世界への特殊なテレポート陣の使用許可を取る。
2、自力で異世界への特殊なテレポート術を身に付ける。
3、その他様々な方法にチャレンジする。
「3がラフ過ぎない?」
「2がシンプルに思うかもしれねーが、1より難度高ぇぞ? 適性もあるし、レア魔法過ぎて修行法がパッと思い付かねーし」
「1が無難なのか? だが『元の時代の元の場所に戻りたい」ていうのと『できれば来た直後の状態で戻りたい』てのもあるんだよな」
「あ、それもそうだよね」
そっか、戦国時代にビッグフットの首落とせるヒロ兄がテレポートしたらそのまま戦国武将になっちゃいそうだしね。私、どうなるんだろ? 忠実な美少女くノ一、とか??
「後の方の条件は魔法的に難度高いんじゃないか? セットで『時間を戻す魔法』使うって話だろ? 加えて意識や記憶もキープしないとワケわからなくなりそーだしよ」
「「うーんっっ」」
単純にスッと戻るってワケにもいかない感じ! えー?? 私達は、あーでもないこーでもないと3人で色々話した結果。
お腹空いてきたから食堂に行くことにしたよ。
御飯食べたらいいアイディア思い付く、かも? というかついて、全部解決する天才のアイディア!!