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日常と狂気

作者: SATOHO

 まただ、また。幾度となく始まる。暴力。鳥かごをつかんで無理やり入口の金具を外す。外に逃がしてやる。お前が悪い。お前のせいだすべてはお前が。


 180㎝でバスケをやっていた。髪の毛が薄く白髪が見える人相の悪く背中が広い。体格差では無理だ。話してと言っても聞かない。今度は腹の底から「助けて」と呼ぶ。やっと少なからずの希望がやってきた。脅迫だ。これは、説教ではない。脅迫に近い。大声を出し、自身のいうことを聞かなければ暴力という大声をふるう。なんて、なんて酷いざまだ。160㎝ある私は決して小さいほうではないはずだ。しかし、無駄にでかい図体、ヒステリックで相手を威圧する大声。力づくで解決しようとする卑怯なやり。


 まただ、また。幾度となく始まる。暴力。鳥かごをつかんで無理やり入口の金具を外す。外に逃がしてやる。お前が悪い。お前のせいだすべてはお前が。すべてにもううんざりだ。死んでしまいたい。そんな風にさえ思ってしまう。ただ、ただ、私が肯定するまで力づくで抑え込む。これは「DV」なのか。私は、世間的に言う被害者なのか。


 なんとなく、思い出す古い記憶。それはすぐに思い出すことができ、記憶の洞窟の中では入口の近くにある物だ。受話器で彼の実家に電話している。しかし、彼の母、つまり祖母は「あらそう」と綽綽とした声で私のSOS信号を蹴とばす。目の前に広がる光景は、無様だ。いつもの配置にない机、ぐちゃぐちゃになった洋服。牛乳が床一面に広がる。泣きじゃくる母親。これが私の一番古い記憶のDVだ。母は妊娠当初から冷水を浴びさせられたというが、私は見ることもできないし記憶しようがない。希望である母がなく姿、助けをこいても自分が思った反応が来ない他人。この時点からDVの被害者だったのだ。


 彼のこの性格は、年子の弟にも受け継がれた。彼らはADHDのような一種の病気を抱えているのだろう。けれども彼らの名高いプライドはそれを認めない。病院に行くことを提案した日の夜は足に痣ができていた。日常生活で彼ら自身に問題がなければ普通に話すし笑う。旅行だって行っていた。けれど、そうじゃなくなった瞬間に私は生き地獄となる。私の誕生日、24日にケーキが用意されている机。母が台所で彼が食卓にいるとき。私は弟に膝蹴りをされた。それに顔面にだ。相手は10年も空手をやっている。鼻血が出る。なんで。なんでこんなことになるんだろう。「あなたが、貴方が我慢して言わなければ、こういうことにならない」そうか、私の我慢が必要なのか、彼が抑制できないのなら、私が抑制するしかないのか。そうして、私もいつの間にか被害を受けいれる被害者となる。一昨日サイゼリヤを一緒に食べたのに、今日は私のスマホをバキバキに割られた。弟さんと仲いいんだね。そうなのかな。仲いいのかな。


 日常とはなんだろう。家族とは何だろう。四人で食卓を囲み、家族旅行に行き、親戚の集まりに行き、私たちの小さなころの写真まで飾ってある。普遍的な家族である。それなのに、そのはずなのき、狂気は佇む。いや。いつも一緒にいるのに知らぬふりをしているだけかもしれない。その狂気は、家族としての形だなくなれば消えるだろう。


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