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エピローグ:12 衝撃

ドラゴンがつくったデカいクレーターのせいで。

群青竹さんにも負担をかけされているなんて。

それにアズゥの逃げ場として設けていたのに。

これがきっかけで。

あそこを壊す決心をするなんて。

『群ちゃん、すぐにアンタが昔住んでた家に来な。でかい穴ぼこが家の手前にできてるから』


「夜明け前に水道屋の友人から電話がかかってきた。仕事もあるとはいえアズゥが絡んでいると直感して私はすぐにそこへ直行した」


初めてオレがアズゥにあった日の出来事だ。


アズゥに渡された石がドラゴンに変身して。


襲ってきてできたクレーターを言っているんだろう。


コーヒーを飲み終えたせいか。


話にのめり込むためなのか。


気づけば背筋を伸ばし姿勢を正していた。


裏側だ。


ここからはオレがアズゥと出会ってからの。


裏側の出来事なんだ。


だからこそ。


教えてくれる群青竹さんへの敬意もあるかもしれない。


ああ。


緊張しているんだ。


オレは今。


『お節介だが、役場の人間が来る前に群ちゃんに見せとかねえと思ってな』


「友人はあの家の近くに住んでいて、昨晩雷とは違う大きな音がして気になり、雨が止むと暗い内にあそこまで様子を見に行ったそうだ」


『お前さんの車はうちに停めてから見に行くぞ』


「友人の提案で私は彼の家に車を停めると二人であの家まで徒歩で向かっていった。ぬかるんでいてタイヤの跡がつくのも後々面倒になりそうだと予想してね」


友人の真似こそしていないが。


当時の状況の語りについて。


緩急というか、話し方が上手なのか。


その時の群青竹さんを見守っているみたいに。


喉の奥へと唾を飲み込みながら。


オレは続きが気になってしょうがなかった。


『なんだ。このデカい穴ぼこは。ダンプでも落ちたみたいだ。群ちゃん、なんか心当たりあるんじゃねえのか』


「いいや。と返したが、私にはアズゥがまた暴走したかもしれないと嫌な考えが浮かんでしょうがなかった」


『巻き込まれたくねえから、ウチはもう帰らせてもらうが、役場の人間にゃウチの名前は出すなよ。あくまで親切心でお前さんを呼んだだけしな』


「そう言って帰宅する友人に礼を言うと私は合鍵を使ってあの家の中へと入っていった。もうトラウマは頭によぎることもなく懐中電灯片手にアズゥのもとに向かったよ」


「例の地下室にですね」


「ああ。話が巻き戻ってしまうがアズゥと再会して直後、彼女が持っていた黒いゴミ袋に入っていた粗大ゴミは私が回収して捨てていった」


話題の転換に。


水を差された気もするが。


聞いているオレが。


ハラハラしている現状だと。


この一時中断は。


正直なところ。


ありがたかった。


もしかしたら、わざと群青竹さんは。


過去についての語りを中断したかもしれない。


オレが気を張りつめているんじゃないかと感じて。


「そういえばアズゥのいた地下室には家電はなかったな。強いて言うなら明かりにしてたランタンくらいか」


「アズゥは除くとして、家電を拾われて勝手にあの家に誰かが住み着いたら治安的にも危ないからね。それを防ぐためにきっちり回収していったんだ」


「電気も通っていない家なのに」


「当時でも充電式や電池式といった一人向けの家電なんかもあったろう。自由に充電できる場所や電池なんかを拾って無理矢理にでも使おうとする人も世の中にいるはずだよ」


「ああ。なるほど」


「この話をした理由はね、私は物漁りをしにアズゥが月が出ているにも関わらず外出したと思ったからなんだ」


違うんです。


アズゥから渡された石が変身したドラゴンのせいなんです。


なんて、トンチキだが事実を。


伝えようとするのに。


頭はフル回転しているのに。


呂律ろれつは全然回っていなかった。


「あの、それは本当は……」


「分かっている。アズゥがキミに託した青い石によるものだろう」


「知っていたんですね。だったら、今更ですが。ごめんなさい」


「はは、謝らなくていいからって。これも何回目かな」


理由を最初から知っていたんだ。


思えばヴェルデにも会ったらしいし。


当然っちゃ当然だけども。


なんか、オレの方が恥ずかしいな。


勝手に自分から恥かきにいったみたいで。


「では、話を当時に戻すけどいいかい」


「はい」


励ましてくれるみたいに。


にこやかに笑って群青竹さんは。


地下室へ行った際のアズゥとの会話について教えてくれた。


『面白い子に会ってね。元々は自分の左手だった青い石をその子にあげたんだ』


「あっけらかんとするアズゥを見て暴走の懸念けねんは消えたが、外の大きなクレーターについて尋ねてみた。すると一緒に暮らしていた頃にはなかった新しい現象を教えてくれた」


『左手だったあの青い石はね、月の光を浴びると昔夢に見ていた漫画や映画に出てくるような怪物に変身するんだ。ただ、水をかけちゃうと石ころになっちゃうけど』


「かつて変異したアズゥの腕を思い出し、ティラノサウルスのような恐竜が暴れたんだろうと彼女の話を聞いてみて思ったよ」


もしかして、実際に何に変身したのかまでは。


知らないんじゃ。


独りよがりだけども。


オレはあの日のトラウマの姿を。


群青竹さんに話しておこう。


「めっちゃデカいドラゴンに石が変身しました」


「それなら知っているよ。ちなみにアズゥの体験談だと一つ目の巨人とか大きな鳥とかに姿を変えたって聞いたなあ」


大して驚きもせず。


へえ、そうなんだ。


みたいな調子でオレの話を聞いてくれた。


失礼とは全然思わない。


ヴェルデとも会って話をしているらしいし。


そこで超能力かなにかで知ったかもしれない。


だったら、このリアクションの薄さもおかくしくない。


こっちとしてはホントに怖かったんだけどな。


多分、ちょっとオレの顔色が悪くなっていたんだろう。


なにかを察した群青竹さんが。


ちょっと困った感じで気を遣ってきた。


「なんだ、その、うん。怖くはなかったかい」


「ゲームに出てくるモンスターが飛び出してきたみたいで、その時は怖っかたですけど、天気に助けられて……そうだ群青竹さん、その後はどうなったんです」


「ああ、そうだね。続けよう」


『錆山、来人だったかな。ネットで売るとかも言っていたけど別にどうでもいいかな』


「投げやりなアズゥの態度と他の人間にも危害を与える可能性に、私は彼女に対して叱った『なんてことをしたんだ』とね」


群青竹さんは間違っていない。


それこそ。


金のためや面倒事を人に押し付けるために。


フリマアプリにあれを出品したオレの方も。


どうかしている。


あの頃の自分を反省しながら。


群青竹さんが紡ぐアズゥの言葉を待った。


『なんだか、その子ならこっちの呪いじみた運命みたいなものを終わらせてくれそうなの。その子、これまで私を付け狙う人たちとは違っていて、それこそ、正吾を思い出すようで……』


「正吾の名前を出されるとこちらも言葉に詰まってしまった。そして、彼女に合鍵を渡して今日一日限りはこの家を締め切るようにと頼んで私はその場を後にした」


首を横に傾けると。


しばらく遠くを見つめてから。


群青竹さんはオレへと向き直った。


「複雑な心境だったが友人の家に戻って車内で私は決心した。もうあの家を手放そうと」


真剣な顔でオレを見つめ直した群青竹さんの迫力に。


オレは少し圧倒されてしまった。

ここまでお読み下さりありがとうございます。

エピローグは短く終わらせるつもりでしたが、どんどん長くなってしまい申し訳ございません。

次回更新は連投で6/29の17:00の予定です。

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