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エピローグ:9 オリジナルブレンドを一つ

どんな言葉をかけたらいいのかお互い分からない。

またサービスしてくれるっぽいけど。

三杯目をタダでもらうわけにはいかないな。

そう言えば七年前はこの人なにやっていたんだろう。

とても複雑で。


実質初対面のオレが。


聞いていいような。


いや、聞くべき話なんてもんじゃなかった。


こくすぎる。


話していないだけで。


あの家にはアズゥとの楽しい思い出だって。


あったはずだからこそ。


余計に。


オレの知りたかったアズゥとあの家との関係性や過去は。


エグすぎた。


なんというか。


群青竹さんの話を平気で飲み込めるほど。


まだオレは大人じゃないっていうのを。


苦いくらい味わった。


冷めたコーヒーを飲み干してからというもの。


オレはずっと空になったコーヒカップを見ながら。


俯いていた。


すると。


「お代はいいから話を聞いてくれたお礼に好きなものサービスするよ」


困った風に群青竹さんは笑っていた。


気まずくなるとは違うんだろうけど。


お互い困るよなぁ。


あの話の後だと。


どう切り出せばいいか分からないだろうし。


次の話題なんて。


特に当事者の群青竹さんは。


こういう進め方が無難だと思っているみたいだけど。


三杯目はタダでいただく訳にはいかない。


確か四百二十円だったよな、税込で。


「オリジナルブレンドをください。先払いしますんで」


財布から料金分ぴったりの金を取り出すと。


オレはカウンターにそれらを並べた。


ちょっと迷惑かもしれないけど。


これくらいしないとまた流されて無料でサービスされてしまう。


それじゃいけない。


甘ったれてばかりじゃダメなんだ。


急にお金を出してしまって。


群青竹さんをびっくりさせてしまったのは。


申し訳ないけども。


変な意地だけど。


一円でもいいから。


お金を払ってからこの店を出て行きたい。


「えっ、お代はいらないって言ったのに」


「なんでもタダでもらってばっかりじゃオレの面子も成り立ちませんし。それに」


「それに、なんだい」


「お金を払わせてください。きちんとあなたと取引がしたいって、言ったら言い過ぎですかね」


「取引か……それはアズゥの受け売りかね。それともヴェルデかね」


群青竹さんの顔が変わった。


困惑していた笑い顔から。


今はちょっとイジワルな感じのニヤけ面に。


だったら、こっちもニッコリと返さなきゃな。


「両方です」


「ふふ、これは一本取られたな。ちなみにあのプラネタリウムは持っているかい?」


「あのって、機械の方ですか。それともアズゥのお手製のやつですか」


「機械の方、実はあれ私が七年前にアズゥと再会した際に渡したものなんだ」


「えええ」


「あとね、アズゥにお菓子の箱を使ったプラネタリウムの工作もその時に教えたんだ」


「ええええええ」


七年前に。


オレと会う前に。


群青竹さんはアズゥと再会していたっていうのか。


めっちゃ気になる。


続きが気になって。


しばらく食い入るように群青竹さんを見てしまったが。


お茶目にこの人は笑うとマグカップに残っていたご自身のコーヒーを。


一気に飲み干し。


明るくオレに取引を持ちかけてきた。


「分かった。オリジナルブレンドのおまけで七年前の話をしてあげる。それとさっきの出来事の後の私についても多少はね。だから、さっきよりも身構えなくていいから安心していいよ」


「ええ、それじゃあオリジナルブレンドをMサイズで一杯、お願いします」


「かしこまりました」


紅茶ラテに。


小さなカップに入ったコーヒーと。


本日三杯目になるけども。


多分、今注文した一杯は。


きっと、ゆっくりと味わえるんだろうな、と。


コーヒーを淹れる群青竹さんを見て。


オレはホっとしていた。


ああ、マグカップに注がれるローストされた豆の香りって。


こんなにいい香りなんだ。


二十歳越えてこんな風に思うのも子供っぽいけど。


コーヒーって大人の香りだなぁ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

再び群青竹さんの回想にあたるパートに入ります。

ただ、これまでのような重いものではなく。

読者の皆様もお好きなコーヒーと共に読んでいただければ幸いです。

次回の更新はやや間がありますが6/22の17:00を予定しています。

重ねてですが一読していただきありがとうございます。

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