エピローグ1:アオイキカン
※エピローグは青年になった来人の一人称視点で物語が進みます。
予めご配慮いただければありがたいです。
企業から内定ももらって就活を終えたオレは。
実家に帰省していた。
七年前のアズゥとの思い出の場所はなくなったけど。
今そこには公園が建って近くにはカフェができたらしい。
その二つに行ってみたくて。
暇を持て余したオレは地元に帰って来た。
内定ももらったし。
就活も終わって。
この後の大学生活はのんびりと過ごそう。
そう思い、一昨日からオレは。
夏休み、八月の頭に。
大学が在る都会の編鮎市から。
実家のある鮒底市に帰省していた。
両親は夜にはもどってくるが。
日中は仕事で家にいない。
妹の朱理も。
オレとは別の大学に進学したから。
地元を離れて実家にはいない。
住んでいるのは確か。
春巻市だっけ。
というわけで。
現状この家には今オレ一人しかいないわけだ。
平日の真っ昼間。
「ずずっずずず」
腹も減ったのでオレはリビングで。
テレビを見ながら。
昼メシのインスタントラーメンを食っていた。
中学時代を思い出すなぁ。
高校生の頃、友達は少なかったけど。
休みの日はよく遊びに行ったりしていたし。
アパートで食うのとはまた違って。
こうして実家で一人のんびりメシ食うのが。
懐かしいな、なんか。
オレ自身は。
ノスタルジーとは縁遠い性格なはずなのに……。
昔を懐かしむのも程々にしとくか、と。
気分転換にテレビに目を向けてみた。
やっているのは。
地元のテレビ局のお昼のニュースか。
『市町村合併後の初めての夏休みに~~』
またこれか。
去年の今ぐらいの時期に。
今住んでいるアパートで。
何気なく見ていたスマホのネットニュースが。
地元の自治体の合併をオレに教えてくれた。
今年、2024年の4月から。
鮒底市とウチの地元は合併されたみたいだが。
正直、だからどうした。
というのが本音だ。
来年の4月から地元というべきか。
鮒底市のあるA県内の観光会社で働くのだけども。
キャンパスライフで地元から離れていたためか。
合併して地元の名前が変わっても。
全く実感が湧かなかった。
他の理由としても、盆正月には帰省していたし。
なにより、ガラリと世界が変わるわけでもないし。
思い出が消える訳でもないのに。
……思い出か。
あの場所は別だな。
七年前の中三の夏休み。
アズゥと出会った空き家は。
オレが高校に進学した頃にはもう完全に取り壊されていて。
高校を卒業する頃には。
あの周辺では道路開通のための工事が始まっていた。
空き家周辺の雑木林一帯にも手が加わって。
ドラゴンに追い回された辺りなんかは。
今や県道とつながっている大きな道路だ。
ついでに調べてみたら。
空き家があった位置は公園になっている。
なんなら。
公園の近くには一年半以上前にカフェも出来たらしい。
オレが帰省した理由も。
新しく出来た公園とカフェ。
その二つの場所に行くためだ。
再確認というか。
もう中学生の頃の。
不思議で奇妙な思い出の場所は。
秘密基地みたいな所は。
なくなってしまったんだ、って。
地元の市町村合併云々よりも。
アパートで寝転びながら。
スマホの検索で偶然知ってしまった事実が。
思い出の場所が塗りかえられていた現実の方が。
オレとしてはショックだった。
だから、社会人になる前に。
あの頃の自分に区切りをつけたい意味も込めて。
変わってしまったあの場所に行きたかった。
『~~皆さんも熱中症にはお気を付けください』
もういいや。
キリのいいところでオレはテレビの電源をきった。
目ぼしい番組もやってなさそうだし。
なにより、これから例の公園とその最寄りのカフェに行く予定もあるから。
あんまり家でダラダラし過ぎるのも良くねえ。
準備が出来たら早く行こう。
「ごちそうさま」
箸とカップ麺を流し台に持っていくと。
オレは自分の部屋に行き外出の準備を済ませた。
バッグは持たずに。
持っていくのは。
財布とスマホだけ。
この二つをズボンに入れておくだけの。
軽装で行くのがベストだろう。
雨が降るとは思わないが。
窓の外を見てみよう。
どれどれ。
空も晴れて雲も全然ない。
いいお出かけ日和だ。
これから行く場所を考えれば。
アズゥから貰ったプラネタリウムに。
一声かけるんだけど。
持ってくるにはかさばるから。
あいにくアパートに置いてきたし。
公園とかの感想をプラネタリウムに教えるのは。
アパートに帰ってからだ。
もう完全にプラネタリウムが。
アズゥの形見になっちゃったな。
うん。
あんまり思い出に浸りすぎるのもダメだ。
なんか過去に囚われているみたいで。
早く行こう。
バスの便に間に合わなくなっちまう。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
しばし間を置いたことと活動報告には記しましたが、
想定以上に話の本数が多くなるのをお許しください。
完結の目途は今のところ六月下旬ですが変わっていませんが、
読者の皆様が今作を最後までお目通しいただければ、
私としては最高に感激です。
長くなってしまいましたが、
次回の更新は連投で5/18の17:00を予定しております。




