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第53話 ご飯にしようか

自分の部屋で来人は眠りから目覚める。

ほどなくして妹の朱理とキッチンで顔を合わせ。

これまでの経緯を尋ねるも来人の腹の虫が鳴り。

二人は夕飯をとることにした。

空き家でヴェルデがまばゆい光を放って。


それで自分は気を失っていたと思っていたのに。


少年が。


来人が目を覚ましたのは。


自分の家の自室のベッドだった。


部屋の机の上には友達アズゥのプラネタリウムもある。


「あれ、なんでだ。空き家は、ヴェルデは」


どうなっているんだ。


状況がのみこめないものの。


空腹にのどの渇きにと。


溜め込んでいた様々な自分の体の要求が来人を責めた。


ひとまずトイレへ行き洗面台で顔を洗うと。


水を飲みに来人はキッチンの冷蔵庫へと向かった。


「うめえ」


なんてことない冷えた水なのに。


あまりの美味さに来人も喜びの声が出た。


「あっああ、兄ちゃん……」


兄の声を聞きつけ。


リビングから朱理はキッチンへとやって来た。


最初は体を震わせていただけだったが。


辛抱ならず朱理は来人に抱き着きに行った。


「良かった。本当に良かった」


「ちょっと待てってオレは起きたばっかりってのに」


「とても心配してたんだからね」


「……ごめん」


ちゃんと謝ろう。


朱理に抱き着かれて落としそうになったコップを。


近くのテーブルに置くと。


改めて来人は自分を心配してくれた妹へと謝った。


「ごめん。大事な用事とはいえ朱理に迷惑かけて」


「いいよ、兄ちゃんが無事なら」


「このことは父さん母さんにも兄ちゃんから言っておくから」


「そのことだけど、それはやめてくれないかな」


「どうして。朱理を心配させたんだ。親にも言うのが筋だろう」


「実はその件で群青竹さんから口止めされたんだ」


「群青竹さん?」


耳慣れない名前に来人は首をかしげた。


つられてか朱理もまた首を傾げながら説明に悩む。


「あのね。みんなが空き家だと思っていた所は空き家じゃなかったんだ」


「えっ」


「大事な人のためにあの家を残していたから、子供なら勝手に入るのを大目に見てたって」


「すまない。少し落ち着いてから続きを聞いてもいいか」


どういうことだ。


新事実であり真実を知らされ。


目覚めたばかりの来人の脳内はキャパオーバーを起こした。


説明をどうすればいいか分からず朱理は。


身振り手振りで謎のジェスチャーをしていると。


ぐううう。


兄の空腹の音を耳にする。


「一旦ご飯にしようか」


「だな。もう朱理は食べたのか」


「まだ。兄ちゃんと一緒に食べようと思っていたもん」


「なんか悪いな」


いい妹を持ったな、オレも。


だいぶ動揺がなくなった朱理に来人は安心した。


寝ぼけていた頭もすっかり覚め。


辺りを見渡せば。


時刻は夕方の五時五十二分。


窓の外は夕暮れ。


ヴェルデが訪問してきた時と。


変わらない状況だ。


「手伝うよ朱理。今日はオレの当番だろ」


「いいよ。それにもう作ったし。だけど、しばらくは兄ちゃんがやってね」


「分かった。父さん達に言わない代わりにそれで兄ちゃんを許してくれないか」

 

「うん。もう今回だけだからね」


「ありがとうな。って、あれ。クッキーの缶はどこいった」


迷惑をかけた分の償いはする。


そう決意した矢先に来人に疑問が生まれた。


あの日ヴェルデが訪れた際にそのまま放置していたのに。


テーブルから消えていた缶が来人は気になるも。


兄の疑問を朱理がすぐに答えてくれた。


「群青竹さんが兄ちゃんを家まで車で送ってくれた時に帰り際持っていっちゃったんだ」


「へえ」


「なんでも、あれって群青竹さんが大事な人にあげた物だって」


「……あの缶も元々は群青竹さんのものだったのか」


あの青い石も昔は群青竹さんって人が持っていたんだろうな。


ずっと青い石を入れていたからこそ。


アズゥから渡されていた点を考えれば。


缶が本来の持ち主の手元にもどり。


奇妙な安心感に来人はホッとした。


心配をかけたりその上で妹に家事をさせてしまったりと。


悪い気はしつつも。


しばらくして。


錆山兄妹は夕飯を一緒に過ごした。


献立はチキンスープ、焼き魚、サラダ、白米。


温かい食事をとりながら二人は会話をする。


テレビはつけずにリビングで聞こえるのは。


兄妹の会話だけ。


「オレ丸二日寝ていたのか」


「うん、昨日の夜遅くに群青竹さんが来たんだ」


「一週間くらいでまた予想外な人に助けられるな」


「また?なんかしたの兄ちゃん」


「……いや、図書館にいた迷子を逢ちゃんに助けてもらったのを思い出してさ」


ひょっとして。


この後も直接問いかけたわけではないが。


この十日ほどの出来事について。


来人は朱理に探りを入れるも。


ヴェルデに関する事柄は何一つ出てこなかった。


後は自分が約束と取引の条件を守るだけ、と。


食事を終えて自室にもどった来人は誓った。


机の上に置かれた大切な贈り物であるプラネタリウムへと。


アズゥとヴェルデの面影を乗せながら。

ここまでお読み下さってありがとうございます。

余談ですがヴェルデの所属する組織の名前はS.EV.E.N.といいます。

何の略かはエピローグで語る予定です。

次回の更新も連投で5/5の17:00を予定しております。

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