第52話 着信待ち
帰宅した逢は来人を探すもどこにもいなかった。
兄の帰りを逆に待つも夜になっても連絡すらない。
そんな時に朱理のスマホの電話が鳴る。
発信元は来人の端末からだった。
行きと同じ道を逆に辿っていき。
昼下がり、朱理は自宅に到着した。
朱理が思っていたよりも少々遅めの帰宅だ。
「ただいま」
元気よく玄関の扉を開けるも。
誰からも返事はない。
いつもなら兄の「おかえり」と。
不器用ながら言葉が返ってくるはずと。
朱理は予想していたが。
虚しく自分の大きな声が家の中に反響するだけだった。
「あれ、兄ちゃん。出かけているのかな」
探しても兄は家の中には見当たらず。
しょうがないので朱理は荷解きを済ませると。
普段通りの一日を過ごした。
しかし、夕方になっても来人は帰ってこず。
外も時間と共に暗くなっていき。
なおも帰ってこない兄に朱理は不安を募らせた。
「どこに行ったの」
夜の九時はもう越えている。
ただの外出では済まされない時刻だ。
未だになんの連絡もない来人を。
リビングのテーブルの上で冷めた兄の分の食事を見つめながら。
朱理はとても心配した。
大事にはしたくない。
しかし、兄が心配でたまらない。
流石にもう親や警察に電話をしないと、と。
自分のスマホを朱理が握りしめていたときだ。
「待って、これ。兄ちゃんからだ」
手元のスマホから電話の着信音が鳴り出し。
慌てて朱理は画面を確認すると。
発信先は兄の来人からだった。
「もう兄ちゃん、今どこ」
電話だといつもなら。
叱る際に使う言葉で。
大喜びしながら朱理は着信に出るも。
聞こえてきたのは兄の声ではなかった。
「夜分申し訳ございません。あなたは錆山来人さんのご家族の方ですか」
耳にする声は低く。
トーンや喋りかたのテンポから。
自分の父親よりも更に年上かもしれない男性のもの。
得体の知れない人物が電話に出て。
さきほどまでの喜びは。
一瞬で朱理の中から消えてしまった。
そのため朱理は勇気を持って声の主が。
誰なのかを尋ねた。
「どちら様ですか。なぜ兄のスマホから電話をかけているのですか」
恐怖はあるものの。
一番大事なのは兄である来人の無事。
込み上げてくる色々な感情を抑えて。
緊張しつつ朱理は声の主からの返事を待った。
「失礼。私は群青竹という者です」
「群青竹、さん」
「はい。私の持ち家で倒れている来人さんを見つけました」
「兄が倒れていた?」
突然電話してきた相手に謎が深まるばかりだが。
群青竹からの話を朱理は胸をざわめかせながら聞いた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
GWを読者の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
皆さんが無事にこの物語の続きを見届けてくださるのを私は願っております。
さて、次回の更新は連投で5/4の17:00を予定しております。




