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第44話 超常現象か超能力者か

遂にヴェルデとの取引が始まる。

やり取りも速攻で終わるだろうと来人は予想していたものの。

彼女が起こす謎の現象に来人の反抗心はどんどん奪われていく。

来訪者用のチャイムがリビングに鳴り響く。


この部屋にある玄関の監視モニターへと来人はすぐに向かった。


画面に映っていたのはヴェルデだ。


服装も前回来人と会った時と同じで緑色のワンピースだ。


黒い大きな鞄もたずさえている点まで同じだ。


『ワタシです。開けてください』


モニターのスピーカーから彼女の声が聞こえてくる。


ただでさえ無機質な声色が機械越しだとより際立つ。


「来たか」


防犯用に。


訪問者との通話がモニター上のボタンを押せばできる。


しかし、今回来人はそれをしなかった。


通話モードではないので来人の声はヴェルデに届かない。


挨拶代わりに画面横のボタンを押し。


玄関のロックを解除すると。


彼女を家の中へと来人は招き入れた。


直接顔を合わせたときに改めて挨拶すればいい。


無礼だとしても。


警戒心は解きたくない。


「お邪魔します」


「今晩は、かな。ヴェルデ、さん」


なにごともなく終わってくれ。


言葉のキレの悪さに警戒心が表れてしまうものの。


早く取引が終わることを来人は祈った。


テーブルの上には今回の取引における大事な物が二点ある。


商品である青い石の入った古いクッキー缶。


ヴェルデが押し付けてきた緑色のスティック。


それらに来人はチラリと目をやった。


「必要な品々はここに。お互いの為にも早く取引を済ませしょう」


「そうですね。ただ、段取りがあるのでご了承ください」


早く取引を済ませて目の前の相手と縁を切りたい。


きっとヴェルデもそう考えているはず。


持ってきた鞄に青い石の入った缶やスティックを詰め込めば。


さっさと彼女は帰るに違いない。


そう来人は予想していた。


しかし、それはすぐに裏切られる。


ヴェルデは鞄を持っていない手を前にかざした。


かざした先には青い石の入ったクッキー缶がある。


「なにをなさっているんですか。ヴェルデさん」


「とりあえず、そのまま待っててください」


「はい。分かりました」


とっとと帰れよ。


固い表情と丁寧な言葉づかいで。


来人はヴェルデに不可解な彼女の行動を尋ねた。


残念ながら少年の望む答えは返ってこず。


そのまま無言で緑衣の彼女は手をかざし続けた。


この状態が一分ほど続いただろうか。


ガタガタガタ、コンコンコン。


突如クッキー缶が震え出した。


器の振動に併せて。


缶の中にある青い石も内部で転がり音を鳴らしだす。


勝手な開封を防ぐために。


クッキー缶の(ふた)の表面に貼られていたはずのテープも。


ビリっ、ビリビリ。


振動が始まり出すと。


テープはひとりでに端から剥がれだした。


タイムラグはあったが。


異変の直後にすぐに結果が現れだした。


封のためのテープは蓋から完全に剥がれ去り。


勝手に宙へと浮き上がるや缶の横へとスライドしていった。


不思議な開封現象により。


中身が露わとなり。


取引の品が二人の前に姿を現す。


今は単なる石ころと変わらない見た目だが。


月夜に怪物へと変貌した青い石を二人は目にする。


「おいおい。なにやってんだアンタ」


「少しの間大人しくしてください」


「いや、流石にこれはおかしいだろう」


ちょっとこれは見逃せねえ。


超能力をヴェルデは持っているかもしれない、と。


これまでの青い石関連の体験から来人はヴェルデを疑っていた。


しかしながら、実際にそれと思しき現象を目の当たりにし。


動揺を来人は隠しきれなかった。


口調も丁寧さはなくなり。


少年が取引相手の動きを止めようと。


手を伸ばしたときだ。


慌てる来人とヴェルデの目が合う。


瞬間、来人は慌てた態勢のまま硬直してしまった。


見えない針でピン留めされてしまったように。


不自然なポーズのまま少年はその場に固まってしまった。


「腕が、足が、体が動けねえ」


「申し訳ございませんが少し大人しくしてください」


「くそ、喋りはできるのに」


「静かにできないなら、次は発言できなくしますから」


目の前の事態をただ見ているだけしか来人にはできなかった。


体が不自然な体勢で固まったまま。


更なる怪現象を少年は目撃する。


石が、商品である石がふた同様に宙に浮きだしたのだ。


サイコキネシスとかいうやつか。


自分の中の知識を言葉にしようとするも。


強引にヴェルデから黙らされると思い。


理不尽ながらも来人は沈黙を貫いた。


石はその場で宙に浮いていたままだったが。


十数秒ほどして。


ヴェルデの開いた掌へと吸い寄せられた。


目当ての品が文字通りに手に入ると。


彼女は掌を握りしめた。


「この期に及んで盗むのかよ」


「違う。アナタに真実を見せてから報酬を送りたい」


魔法が解けたように。


ヴェルデが石を持った右手を握りしめた瞬間に。


古びた缶の蓋はガタンっと音を立てテーブルの上に落ち。


ずっと固まっていた来人の動きは自由となった。


「っとっとっと」


いきなり硬直が解かれた反動か。


来人はその場でバランスを崩してしまう。


ぐらつきはしたものの少年はすぐに体勢を立て直す。


そして、ヴェルデと瞳を合わせないように来人は彼女を見た。


「私についてきてください」


テーブルの上にあった緑色のスティックをヴェルデは回収すると。


傍にいる来人に彼女は同行を促した。


少年の予想に反し。


左手で鞄の持ち手と一緒にヴェルデはスティックを握っていた。


「いきますので少々お待ちを」


「それとあなたの準備した品々はここに置いておきましょうか」


「はい」


水なしでも対処できるってのか。


水を仕込んだ道具がなくともこの後無事なのか。


昨日までの来人ならそう考えていただろう。


しかし、この数分間での超能力としかいえない現象に。


ヴェルデが怪物への対抗策の一つや二つ。


それどころか怪物を圧倒しさえする。


不思議なパワーを持っているかもしれない、と。


謎の説得力を来人はヴェルデから感じざるを得なかった。


「石が怪物になっても大丈夫なんですよね」


「はい。なので使いませんし、むしろ邪魔です」


「かしこまりました」


反抗はやめよう、とにかく今は奴の指示に従おう。


水の入ったペットボトルに。


水風船などの道具を詰めたウエストポーチ。


折角準備した武装を。


来人は全てテーブルの上に置きさった。


むしろ邪魔という言葉が引っかかるものの。


少年はただ率直に取引相手の言葉に従う。


「置きましたか。では、行きましょうか」


「はい」


石を手にしたヴェルデと共に素直に来人は家の外に出た。


謎のアイテムに超能力らしき現象。


青い怪物と対峙して生き残った自信があったからこそ。


自分が立ち向かった以上の超常現象が起こる可能性を。


目の前の存在は秘めている。


もはやヴェルデへの反抗心を来人は完全に捨てていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

更新が低下して初の投稿のため、

ずっと追っていた人たちはお待たせしてごめんなさい。

次回の更新4/1の17:00頃を予定しております。

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