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第40話 小さな夜空に星が並んだら

事前に掃除をしたおかげもあってか来人、逢、アズゥの三人は地下で心置きなく寝転び天井を見上げた。

ここからは天体ショーの時間だからだ。

地下の夜空で、三人は修理されたプラネタリウムが描く星を堪能する。

「それでは皆さんご準備はよろしいですか」


ムードを出すため。


さながら司会者のように。


アズゥは二人に前置きした。


「いいよ、アズゥ」


「はい、アズゥさん」


来人も逢もショーを楽しむには万全だ。


二人の返事にアズゥはとても喜んだ。


「ちっちゃいけど本物だから。楽しんでってね」


昨夜の惨劇から守られたアズゥの宝物の電源がく。


動作確認で点けただけだったが。


アズゥと同じくらい来人の目が輝いた。


「うん。多分、大丈夫かな」


天井の隅っこの暗闇に装置から放たれた光が当たる。


きちんと照射されてはいるものの。


ランタンの明かりがあるため地下室はまだ昼も同じ。


まだ星座が現れるほどではない。


プラネタリウムが完全に直ったのか確認は。


ここが全て闇に包まれる必要がある。


「二人とも準備いいみたいだし。明かり消すね」


ゲスト二人の承認も既に得たためアズゥはランタンの光を消した。


一瞬にしてこの場を闇が包んだが。


プラネタリウムの電源はオンにしたままだったため。


装置の周りには煌めきが溢れ。


上を見上げれば数は少ないが星座が輝いてた。


「寝転ぼうよ来人に逢ちゃん。もっと星座を楽しめるよ」


「分かったよ。アズゥ」


「はい」


三人は下にある装置から溢れた光を頼りにして。


多少のもたつきはあったものの。


川の字になって地下室で三人は寝転がった。


左から順にアズゥ、来人、逢の順で。


「にしても来人、気が利くね。床拭いてくれるなんて」


「こうして三人同じ視点で星が見れますもんね」


「元々は違う使い道だったけど、まあいいか」


ビリヤード台の残骸の片づけに際して。


逢が箒を使って床掃除はもちろんしていたが。


予めプラネタリウムの位置取りを来人はアズゥから聞くと。


持参した袋詰めのウェットティッシュを何枚も使って。


事前に床を拭き磨いていたのだ。


仰向けになって見ればもっと楽しめるんじゃないか、と。


来人は提案するつもりでいたが。


アズゥに先を越されてしまった。


このウェットティッシュ自体もこの為には元々用意されていない。


当初は逢が空き家で汚れた際に使う予定だったが。


別の形で役に立ったのだ。


ここの床に背をつける前準備を来人がしたおかげで。


三人は同じ視点で星を見ることが出来たのだ。


天井に映えた光景を見るや来人は大きく息を呑んだ。


「すげえ」


「キレイ」


「でしょ、ねっ」


地下室の天井は小さな夜空のキャンパス。


それでもプラネタリウムが映すには少々広すぎた。


この地下の宇宙の半分にも満たないスペースにしか星座はない。


ただ、それでも三人にとっては充分すぎた。


中学生の来人と逢が感心する中で。


ややこの場にアンマッチな調子でナビゲーションが入る。


「お二人がよりこのショーを楽しめるように解説させていただきます」


「もうアズゥさんったら」


「じゃあ、お願いできる。アズゥ」


「承知しました。では、このアズゥ解説を務めさせていただきます」


夜空の星々とそれが織りなす星座たち。


彼らをアズゥは二人に教えていく。


小学校の理科の授業以上にシンプルな説明だが。


なにも知らないよりは来人にも逢にとってもありがたかった。


「過ぎちゃいましたが、七夕で有名なあの星座達を紹介しましょう」


デネブ彩る、飛翔する十字のはくちょう座。


アルタイル染め上げる、天舞うクロスのわし座。


ベガときめく、恋心のスクエアであること座。


これら三つの中心となる星々を結べば。


夏の大三角形が完成する。


アズゥの宝物(プラネタリウム)が夜空に星を描いた際には。


まるでデネブが上からベガとアルタイルを見守るように。


つまりは、天が織姫と彦星の恋を許すように。


大きな夏のトライアングルが象られる。


他にもルビーすら嫉妬させる赤きアンタレスを持つさそり座。


いて座やてんびん座もこの小さな夜空にはもちろん浮かんでいる。


無数の星々が広がるこの部屋は。


もはや三人だけの宇宙。


光の源であるプラネタリウムはここでは太陽だ。


宇宙服がなくとも。


星座の世界に来人はのめり込めた。


ロマンチストなんて柄じゃない。


そう自虐していた来人でさえ。


目の前に広がる小さな銀河に夢中だった。


「外で見るよりキレイかも」


「うん。ここだと何かが違う」


とろけるくらい甘い声で逢が来人に囁いた。


とくん、と。


一瞬にして胸がピークまで高まってしまい。


逢からの囁きに来人はなにも返せなかった。


ふふっ、と。


ささやかな笑い声が聞こえたものの。


来人は笑った相手に声をかけられなかった。


声は右から聞こえたのはしっかりと憶えているのに。


天体ショーはこの後無言のまま続いた。


途中、来人はある変化に気づく。


それはデネブが最初よりも上に位置していたのだ。


これに気づいたとき。


ショー開始直後よりも。


アズゥが自分達から距離を置いているのを来人は知った。


だからこそ。


逢の手にそっと自分の手を来人は重ねられた。


視線の先にある。


夏の大三角形のアルタイルに思いを()せながら。

ここまで作品を堪能していただきありがとうございます。

今回はあまり後書きは書かないようにしますね。

次回更新は3/19の17:00頃の予定です。

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