表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/76

第39話 ガールズトーク

地下室でアズゥは来人と逢を出迎えるも逢の態度に違和感を持つ。

一旦彼女達だけで話し合いがなされ。

それが終わると逢の願いのために地下室の掃除が始まった。

アズゥの作品を探して逢に渡すためだ。

疑問や罪悪感は有りつつも来人は掃除を手つだう。

覚悟は決めた。


扉も開いた。


後はなるようになれ。


地下室へ逢と共に来人は足を踏み入れていく。


部屋の中は既にランタンの灯りで照らされていて。


ここの現在のあるじが二人を明るく出迎えた。


「いらっしゃい」


「こんばんはアズゥ」


「こんばんは」


部屋の隅でアズゥはプラネタリウムを抱いていた。


とてもいとおしそうに。


来人と逢の来訪に。


宝物を抱えつつアズゥは入り口にいる二人へと近づいた。


室内は昨晩の騒動の名残がまだあった。


無数のビリヤード台の残骸が散らばっていたのだ。


それもあってか逢はアズゥの存在に困惑していた。


「ちゃんと来てくれたんだね。でっ、そっちの子が来人の友達」


「友、達」


朗らかにアズゥは逢へと歩み寄る。


呆然とする逢を見てアズゥは少し自分の頭を斜めに傾けた。


口を塞ぎ来人は顔を下に向ける。


それに対してアズゥは親切そうに逢へと自己紹介をした。


「私はアズゥ。あなたの名前は」


「逢です。桜坂逢です」


「逢ちゃんね。オッケー。ちょっと向こうで話をしない」


危険はないと判断したのか。


困惑しただけなのか。


話の流れのまま逢はアズゥとともに来人から距離をとっていった。


逢とアズゥは部屋の一ヵ所で静かに語りあいだした。


五分以上は少なくとも経っただろうか。


騙すように連れて来た逢に申し訳がない。


語り合う彼女達を見て来人は罪悪感に悩まされかけていた。


更に数分が経過し。


彼女達の話し合いが終わった。


「ごめん、ごめん。来人待った」


「すいません。来人さん」


逢は少し恥ずかし気に俯きながら。


アズゥは朗らかながらも軽く眉間に(しわ)をよせながら。


女性陣はそれぞれ異なる表情を浮かべつつ。


悩む来人のもとへと戻って来た。


「ちょっと逢ちゃんと盛り上がってね。で、来人一ついいかな」


「なんです」


圧をかけるように顔を近づけてくるアズゥに来人は緊張した。


「もう一度聞くけど、逢ちゃんは来人の友達?」


「彼女はオレの……友達です」


一呼吸置いて来人はアズゥの質問に答えた。


アズゥは来人の回答に頭を抱え込んでしまう。


しかし、それもほんの少しの間だけ。


小さく「よしっ」と呟くとアズゥはポンと自分の手を叩いた。


表情は一転してにやけながら来人に言い聞かせる。


「今はしょうがないよね。うん、今は。そりゃそうだろうね」


「すいませんアズゥ、逢ちゃん。騙してしまって。本当は――」


ごめん、アズゥ、逢ちゃん。


謝罪のために来人は深く頭を下げた。


二人から怒られてもしょうがない。


少年が叱られる覚悟をしたときだ。


「なに謝っているのさ」


「アズゥさんの言う通りです。来人さんは何も悪いことしていませんよ」


「えっ」


なんで。


顔を上げて来人はアズゥと逢を見た。


二人とも何事もなかったかのように笑っている。


「どうして」


アズゥは自分との約束に逢を利用した件を責めるのではないか。


友達というよりもまだ後輩でしかないあの子を。


自分の都合で巻き込んでしまっているのだから。


下手をすれば逢もアズゥから怒られるかもしれないのに。


しかし、聞こえてきた二人の返事は真逆の優しい言葉。


だから。


だからこそ。


何事もなかったかのように。


明るく自分に接してくれるアズゥと逢に来人は困惑した。


戸惑う来人を一旦他所にして。


改めてアズゥと逢は自己紹介を互いに始めた。


「改めまして桜坂逢と申します」


「改めまして私はアズゥ、よろしくね」


「ところで、アズゥさんは幽霊なんですか」


「私世間からそう思われてんの、ちょっとショック」


二人はもう冗談を言い合うまでに。


あの短い時間、語り合っただけで。


打ち解けてしまったようだ。


一緒に過ごした時間なら。


自分の方が多いのに、と。


言わんばかりに来人は盛り上がる彼女達の会話に入ろうとする。


「そうだ。アズゥ、逢もまたあなたの作品が欲しいそうなんです」


「構わないけど、まだ残っているかな」


来人の説明を聞くとアズゥは地下室の入り口まで移動していった。


「これだけあっちに置かせてから。それからここ掃除しよう」


この荒れた空間から自分の作品を見つけるとなると。


どうしても昨夜の片づけが必要になる。


そのためアズゥは自分の宝物を。


直したプラネタリウムを彼女は部屋の入口へと置きにいったのだ。


作業の邪魔にならないように。


「よっと。じゃあ始めようかな」


大事な宝物をそこに一旦避難させてから彼女は動き出す。


昨夜の騒動に巻き込まれた彼女の作品の大半は壊れたかもしれない。


それでも、逢の願いのためにも。


アズゥだけでなく来人も逢も一丸となって掃除にとりかかる。


「もう、来人も逢ちゃんもお客さんなんだから、手伝わなくていいのに」


「アズゥが探すならオレもやる」


「欲しいのは自分ですし、これくらい当然です」


三人はビリヤード台の残骸の撤去に苦戦しつつも。


被害を免れたアズゥの作品を探した。


その際に来人は彼女の背中を見る場面が何回かあった。


青いつなぎの背面、両肩周辺は無骨な茶色の布テープが貼られていた。


逢も何かを察したのか。


このテープが貼られた箇所について何も聞かなかった。


部屋の隅にあった埃まみれの箒で少女は黙々と床を掃き続けた。


探索開始から三十分。


遂に念願の品を発見する。


見つけたのは作者であるアズゥだ。


三人が掃除も兼ねた台の残骸の撤去中の出来事だ。


どこにあったかというと。


部屋の中央、台の残骸どうしが重なりあった地点。


台の断面が高い位置で重なり。


その下に無事なスペースができていたのだ。


無事なお手製プラネタリウムはその空間にあった。


「ちょい待っていてね」


暗がりの中で救助を待つように放置された。


四角形の紙の菓子箱でできたプラネタリウムへと。


逢のためにとアズゥは手を伸ばす。


重なり具合からして台の残骸が崩れ落ちそうにはない。


それでも慎重に。


自分の作品をつかみ取るとアズゥはそれを手元に寄せた。


作品に破損箇所がないかのチェックも欠かさない。


「うん問題なし」


品物が無傷であると確認が終われば。


後は渡すだけ。


とても温かみのある笑顔で。


大切に両手で持って扱って。


親しみを込めてアズゥは丁寧に逢へとプレゼントを贈った。


「ハイ、これ逢ちゃんにあげる」


「本当にいいんですか。ありがとうございます」


「ふふ、でもね、お楽しみはこれからよ」


逢に贈り物を渡し終えるとアズゥは部屋の入り口に向かった。


避難させておいた宝物を来人と逢の前に持ってくるためだ。


「ここからがショータイムよ」


修理したプラネタリウムを抱えてアズゥは二人のもとへともどってきた。


もどってくる際に部屋の扉を閉めるのも彼女は忘れない。


密室になれば後は明かりを消すだけ。


もうすぐ小さな天体ショーが始まろうとしていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

掃除をしているとつい漫画や雑誌に目がいって作業が中断されてしまいます。

次回更新は3/18の17:00頃を予定しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ