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第33話 早朝での問いかけ

怪物との戦いから一夜明け、朝早く起きた来人の心はグチャグチャだった。

気分転換に外出しコンビニに立ち寄った際、来人は逢とその弟と出会う。

ヴェルデの来訪から一夜明けた日の朝。


来人の気分は最悪だった。


昨夜の出来事で来人のプライドはボロボロ。


何もできないことへの苛立いらだちが来人を憤らせる。


かといって、来人は自宅でくつろぐこともできずにいた。


「朱理もいるし居づらいな」


妹に八つ当たりしてしまった。


昨夜の失態を思い出せば思い出すほどに。


自分の惨めさに耐えられない。


早く眠りにはつけても来人の目覚めはとても悪かった。


「うう」


しびれを切らし来人は妹が目を覚ますよりも早く家を出た。


顔を洗って服を着替えるとそのままガレージへ。


簡単に朝の身支度を済ませている。


自転車を運転できる程には頭も回っている。


「っと。うし」


体調を自己確認すると来人は自転車に乗って外出した。


朝の爽快な空気が立ち込めている。


しかし、それも今の来人には似合わない。


こわばる表情のまま。


あてもなく来人は徘徊はいかいする。


「どいつもこいつも」


公民館から鳴るラジオ体操の音楽。


朝を楽しく彩ってくれるメロディ。


その音色も来人の耳には全く入ってこない。


ヴェルデの言葉が頭に何度も反響していたからだ。


『アナタがなにをしても変わらない』


もはや、呪言。


自分の惨めさを来人は痛感してばかり。


ヴェルデの言葉は屈辱でしかなかった。


「知った風な口を――」


こみ上げてくる感情のせいか。


来人の自転車を漕ぐスピードが上がっていく。


人通りが少ない田舎道を来人はがむしゃらに走り抜けた。


慰めにもならないのに。


来人は思いっきり体を動かしたかったのだ。


来人は忘れたかった。


アズゥと出会って以降の全部を。


「オレは悪くない」


理不尽な出来事にまだ慣れていないからこそ。


この惨めで苦しい状況を来人は受け入れられずにいた。


「どうにかしてくれよ」


妹には持ちかけられない悩みだ。


このとき来人の頭の中に青い出で立ちの女性の顔がぎった。


「今夜アズゥに会いに行こう」


来人は始まりの場所へと向かう決意をした。


夏休みも終わりに近づいていく。


そうなると子供たちは残された宿題に奔走(ほんそう)される。


来人の課題は山積みのまま。


「もう帰ろう」


大分気持ちも落ち着いた。


というよりも、来人の鬱憤(うっぷん)が少しばかり晴れたからだ。


あてのないサイクリングもここまで。


ここからは帰りみち


気持ちもある程度収まったからこそ訪れるものもある。


「なんか腹減ったな」


イライラが鎮まると今度は空腹が来人にやってきた。


「むこうのコンビニまで行くか」


帰り際来人はコンビニに立ち寄ることにした。


今いる地点から自転車で五分ほど。


愛車を停めると来人は店の中へ。


「おにぎり三つですね」


「タバコの番号いいですか」


出勤等の人々で店内は混雑している。


適当に飲み物を買って帰ろう。


そう思い来人は店に入ったときだった。


意外な人物達と出会う。


「来人さんじゃないですか」


「あのときのセコイ兄ちゃん」


それは逢とその弟のカナタだった。


二人は朝食の買い出しに来たのだろうか。


逢の持つコンビニ袋には食料が入っていた。


弟はパケモンカードを買いに行った際にトラブルを起こしている。


好印象の逢とは正反対の組み合わせだ。


「なんか言えよ」


生意気な口を叩く逢の弟に来人は肩をすくめる。


それに対して逢が困り気味の笑顔で来人に問いかけた。


「来人さんもご飯買いに来たんですか」


「オレもそんなところだよ。逢ちゃんも朝から大変だね」


微笑ましくやり取りをする二人をつまらなそうにカナタは見ていた。


「姉ちゃんこんな奴放って早く帰ろうよ」


「こら、カナタ。来人さんに失礼でしょ」


いつもならこのまま無視。


するところを、今日の来人はそうではなかった。


この男の子に聞いてみたい疑問が来人にはあったからだ。


「カナタくんだっけ、ちょっといいかな」


「なんだよ急に」


まともに顔を合わせようよしないカナタを気にせず来人は話を続ける。


「カナタ君はお姉ちゃんのこと好きかい」


来人のこの質問に逢の頬が赤く染まる。


そんな姉の変化をカナタは大して気にしない。


「そりゃ好きさ。どうしてそんなこと聞くんだよ」


「もしも、お姉ちゃんがいなくなったらどうする」


感情の起伏なく。


単調に来人はカナタに尋ねた。


返事はというとその子の大袈裟おおげさな笑いとともにきた。


「あり得るわけないじゃんそんなの」


話の腰を折られているはずなのに来人は顔を(しか)めなかった。


それどころか、子供らしい的外れな回答に来人は安心感さえあった。


「オレもお前と一緒か」


「一緒にするなよ。気持ち悪い」


「こら、何言っているの。来人さん、うちの弟がごめんなさい」


「いや、いいって。いいって」


カナタを逢が注意しているその傍らで来人は自嘲(じちょう)した。


変わっていないし、同じじゃないか、と。


小学生の頃から自分はなにも進歩していない。


家族からの指摘に論点をズラしたり話の腰を折ったり。


自らのコミュニケーションの悪い点。


それを現役の小学生から教わることとなった。


「来人さんごめんなさい」


再び逢は来人に謝罪すると彼女は弟を連れて店から出た。


「姉ちゃん早く行こう」


「もう、カナタったら」


仲睦むつまじい姉と弟の二人を見送るからこそ。


思い出の中、幼かった頃の妹の姿が来人の頭によみがえった。


「オレもなんか買って早く帰ろう」


忙しい店内で眼を擦る客は来人しかいない。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

コンビニって時間帯で雰囲気がガラっと変わりますよね。

では、次回の更新は3/12の17:00頃を予定しております。

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