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第28話 バスに揺られて

取引き相手との面会日、独りバスに揺られ来人は約束の場所へ向かっていた。

夏休みだがそんなに人のいない雨が降る平日のショッピングモールへ

来人と青い石の買い手との面会日。


しかし、当日はあいにくの雨だった。


雨合羽(がっぱ)を着てまで自転車に乗りたいかというと人による。


目的地まで来人はバスを使うことにした。


待ち合わせ場所は市内のショッピングモール。


パケモンカードを買いに行った『ジェムロマンスモール』だ。


「こう離れているとな」


逢の錆山家からの帰りがそうだったように。


来人もまた自宅から最寄りのバス停まで徒歩だ。


時間にして十五分ばかり。


バスに乗り込んだ時には来人の靴や傘から水がしたたっていた。


「間に合った」


濡れた傘を畳んで来人は空いている席に着いた。


車内は来人以外だと老人が四人乗っているほどだ。


基本的にバスの中は沈黙。


発せられる声は二つだけ。


『次、図書館前』


一つはバス停についての機械音声によるアナウンス。


「ありがとうございました」


もう一つは運転手が降りていく乗客にかけるお礼だ。


来人の乗ったバスはそんな調子で市内を巡っていく。


進行中はエンジン音がBGMだ。


『ジェムロマンスモール。ジェムロマンスモール。お降りの方は前へ』


バス停を七回過ぎただろうか。


今回の目的地であるショッピングモールにバスは到着した。


「と、ととと」


濡れた足下に注意しつつ。


降車口であるバスの前方に来人は行く。


人とぶつかる心配はしなくていい。


車内にいるのは運転手と来人だけ。


もう他の乗客はいない。


ここまでにあったバス停で全員降りてしまった。


「ありがとうございました」


他の乗客と同じように。


運転手から見送られて来人はバスから降りた。


幸い今は小雨。


傘もささず来人はモールの中へ。


施設内はどちらかといえば静か。


正面口から入って来たのも来人だけ。


平日の昼間、休みの日と比べれば当然かもしれない。


雨も降っていれば尚更だろう。


「もう一度通知を確認するか」


二人が落ち合う場所は二階の喫茶店『エメラルドールビー』だ。


相手は緑のワンピースを着て来人に会いに来るそうだ。


「早く来過ぎたかな」


約束の場所に着くもそれらしき人物は見当たらない。


まだ相手も来ていないのに。


先に一人で店に入るわけにもいかない。


とりあえず待とう。


店の近く。


人の邪魔にならないように


辺りを見渡し来人は場所を探す


「ちょっとあそこ行くか」


喫茶店の近くには施設共用のソファがあった。


人もあまりいない現在。


そこならば問題ないだろう。


ソファには腰かけず。


一人、立ちながら来人は面会の相手を待った。


その時間もすぐ終わるとは知らずに。


「すいません。いいですか」


後ろから来人は呼びかけられた。


聞こえてきたのは落ち着いた女性の声だ。


「はい」


背後からの声に応じて来人は振り向いた。


そこには一人の若い女性が立っていた。


服装は通知通り緑色のワンピース。


なにやら大きそうな黒い鞄も右手に持っていた。


長い緑色の彼女の髪は腰まで伸びている。


瞳の色も緑でその眼は来人をじっと見ていた。


猛暑にも関わらず肌は透き通るように白く。


雰囲気もミステリアス。


ファンタジーの存在なのに。


彼女を見ればエルフと思わずにいられないだろう。


それほどまでに浮世離れしていた。


「すいません、あなたは錆山来人さんですか」


不思議な存在感を放つ緑衣りょくいの彼女が再び来人に尋ねる。


「そうですけど、あなたの名前は」


「私はヴェルデ、あなたの取引相手です」


「すいません。すぐに気づかずに。改めて錆山来人です」


とてもやりづらい人だな。


ヴェルデの扱いづらさを来人はたった二言の挨拶で感じ取った。


「早速ですが店に入りませんか」


「はい。じゃあ行きましょうか」


アズゥはとても話しやすかった方だな。


落ち着きを超えて淡々としているヴェルデが来人は苦手だった。


事務的、機械的。


取引相手なら用件だけ話せばいい。


余計な話し合いはいらない。


来人はどこかそんな風に大人ぶっていた。


しかし、度を超えていそうな相手は論外。


何気ない会話や愛嬌(あいきょう)に自己紹介をする楽しさ。


初対面の、それも若い女性だからこそ。


どうしても来人はフレンドリーだったアズゥと比べてしまった。


「どうかしましたか錆山さん」


「なんでもないです」


作り笑いをして来人はヴェルデにやり過ごした。


彼女はそれについて特に気にもとめていない。


二人が入っていった店内には他に客はいない。


ゆっくりと話し合いができそうだ。

ここまでお読み下さりありがとうございます。

自転車、車にバス、タクシーと同じ景色でも乗り物によって見え方が変わりませんか。

では、次回の更新は3/7の17:00頃を予定しています

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