表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/76

第25話 缶の中身

朱理は来人の部屋にあったボロボロの缶に興味を示した。

更に良かれと思って缶をキレイにしようとする。

朱理と逢の二人はしばらく来人の思い出の品々を手に取っていた。


特にビー玉を発射する玩具を朱理は気に入った。


だからこそ、手に取るだけでなく。


実際に遊ぶ気にまでなっていた。


「あれを的にしようよ」


面白そうに朱理は本棚の上を指さす。


その先には隔離されたように置かれたボロボロのクッキー缶があった。


アズゥからの贈り物だ。


「こんなガラクタ兄ちゃんもいらないでしょ」


「でも、中に何か入っていたらどうしよう」


「それもそうだね。一回確認しょうか」


大事な物だったらどうしよう。


怒られるかもしれない。


念のため朱理は缶の中身を見ることにした。


「人に見せたくないのかな」


本棚の上の缶を朱理は手に取った。


持ち出すと今度は側面に張られたテープを剥がしていく。


興味津々そうな逢が見守りつつ。


すべてのテープが朱理によって剥がされた。


「よし、開けるか」


「本当にいいのかな。怒られたりしない」


「そのときはそのときさ」


見栄を張ったものの朱理も少々不安だった。


その理由は缶の隙間から異臭が漏れていたからだ。


「なんか生臭くない、逢ちゃん」


「うん。雨の日の香りとういか、なんというか」


缶から立ち込める生臭さ。


異臭は蓋が外れていくとともに部屋に広がっていく。


どうなるんだろう。


急に朱理の手が不安と緊張で震え出した。


友達に感化され逢の体も固くなっていく。


「それじゃあ行くよ逢ちゃん」


「うん朱理ちゃん」


窓から陽の光が差しこむ。


陽の光が缶の蓋の表面上で朱理にお構いなしに反射する。


「ぬお、まぶしっ」


「大丈夫。朱理ちゃん」


離れていた逢はへいきだったものの。


朱理は目を瞑ったまま。


そのため手元の様子も分からずに。


勢いよく朱理は缶を開けてしまった。


「やっちゃったかも」


「どうしよう。それにしても今の光見た?」


「いいや、目を閉じてて分かんなかった」


「ごめん。だったら、気のせいだったかも」


ほんの一瞬だけ。


この世のものとは思えないような。


幻想的な淡い光を逢は目にした。


しかしながら、気のせいかと疑うほどに。


逢が今目にしている缶の中身はというと。


くすんだ灰色と言えばいいのか。


細かく色を答えるのも難しいほどの。


ただの石ころだった。


「逢ちゃん、これ石だよね」


「うん、石だね。それにしても生臭くない」


さっきまでのワクワクを返せと言わんばかりに。


急激に二人はやるせなくなった。


「期待して損した」


「まあまあ朱理ちゃん」


眉をひそめて缶から距離を置いて。


異臭を放つ石を二人は眺めた。


石もだが缶内に溜まった水も朱理には不快だった。


「中の水捨てろよな、兄ちゃんも」


そう言うや朱理は来人の部屋から出ていった。


「どこ行くの朱理ちゃん」


逢は大きな声で飛び出した朱理に呼びかける。


「ちょっと待ってて。缶の中の水を捨てる準備してくるだけだから」


離れた所にいる友人からの問いかけに朱理もまた元気いっぱいに答えた。


三分後。


ゴム手袋を両手に着けた朱理が来人の部屋にもどって来た。


片手に新聞紙の束も携えて。


「ごめんね。逢ちゃん一人にさせて」


「それは構わないけど、ええと、すごい用意してきたね」


「これくらいしないとダメだよアレは」


しっかりと缶の対策をした朱理は着々と作業を進めていった。


部屋の窓を開けて。


新聞紙で包み込むように缶の外側の水滴を拭いて。


内側も石も忘れてはいけない。


乾いた新聞紙を次々用意して。


缶ともども石も拭いていく。


使い終わった紙は予め床に広げておいた別の新聞紙の上へ。


「少しはマシになったかな」


「おつかれ朱理ちゃん」


大雑把なやり方にはちがいない。


それでも朱理のおかげで先程よりも缶から生臭さが消えていた。


しかし、缶の内側には未だに嫌な湿り気がまだ残っている。


「やっぱり拭くだけじゃ限界かな」


思い悩む朱理は窓の外を見た。


夏の太陽の暑い日差し。


窓を見下ろせば日光を受けてキレイに花々が咲く花壇。


この二つが朱理に妙案を閃かせた。


「あとで兄ちゃんはアタシに感謝しないといけないな」


「なにする気なの朱理ちゃん」


「ちょっと陽に当てて缶とかを乾かすだけだよ」


我ながらナイスアイディア。


楽し気に朱理は逢へと振り向いた。


蓋が開きっぱなしの缶を持ったままで。


カンっ。


振り向いた反動で石が缶の内側で転がる。


「おっと、ととと」


石と金属がぶつかった硬く高い音に反応し朱理の手元が狂う。


バランスを保っていたのも最初だけ。


手元がぐらつく幅は大きくなっていく。


「あっ、石が」


大きく揺れた拍子で。


缶から石が宙に投げ出された。


吸い込まれるように石は窓の外へと飛んでいったのだ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

どちらかといえば前回の後書きっぽくなりますが、皆さんは小中学生時代の思い出の品をまだお手元に残していますか。

では、次回の更新は3/4の17:00頃を予定しております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ