第19話 迷子なのか
図書館も閉館近づいてきた。
片づけをしていると来人のそばに男の子がやって来た。
『あと三十分で閉館になります。本を借りたい人は……』
閉館が迫っている報せが館内放送で流れている。
慌てて来人は持ってきた本を直しに行く。
何冊か借りようと思ったものの本の厚さに負けて来人は断念した。
せっせと来人が本を並べ直しているときだった。
小さな男の子がそばにやって来た。
「うう」
本棚の前で立ち止まり男の子は手に持った本をその場で掲げだした。
上の棚に手が届かず困っているのだろう。
「お兄ちゃんがぼくの本を代わりに直してあげようか」
来人は真顔で手を差し出す。
男の子は来人の顔をじっと見つめる。
無表情なためか男の子は奇妙なプレッシャーを発している。
「お願いします」
礼儀正しく男の子は来人に本を差し出す。
『宇宙人とUFOと野菜たちと』というタイトルを見て来人はフフっと笑った。
「ちょっと待っていてね」
少々手間取ったものの来人は全ての本を片付けた。
閉館までもうそんなに時間もない。
来人は入り口へと向かう。
気がかりと共に。
「もしかして、ボク迷子なのかな」
先ほど助けた男の子が無言で来人の後をついていたのだ。
面倒くささは隠せない。
来人はフロアの中心で屈んで男の子に尋ねた。
「宇宙人っていうオチはないよな」
『まもなく図書館が閉まります……』
閉館間際のアナウンスが流れだす。
来人が男の子を見捨てようとしたときだ。
一人の少女が来人の傍にいた男の子に駆け寄った。
「良かった慎太、こんなところにいたのね」
男の子の姉だろうか。
背が高く空色の長いスカートが似合う少女だ。
ショートカットで凛々しい顔立ちだ。
なんとなく朱理みたいだな。
来人はその少女と妹を重ねた。
「慎太この人は?」
怪訝そうに少女から見つめられてしまう。
彼女の警戒に来人はやや物怖じした。
これに対し隣にいた慎太が徐々に口を開いてフォローする。
「このお兄やんいい人」
かなりアバウトだ。
それでも姉は納得したらしく来人に礼を言う。
しかし、今は閉館間際。
来人は目の前の姉弟と別れると速やかに図書館を後にした。
「良い人ね。私もあんなお兄ちゃんが欲しかったな」
来人の背中を見送りつつ男の子の姉はにこやかに笑った。
自分のスカートを握る弟にも気を配りつつも。
少女もまた図書館を去るのであった。
帰り道、来人は図書館で会った男の子と自分の妹を比べていた。
「さすがに朱理みたいなのも困りものだよな」
夕方の田舎道を来人は進む。
彼方に沈む夕日は朱色に染まっている。
夕焼けの存在感は唯一無二だ。
「妹じゃなくて弟だったら楽だったかな」
図書館での姉弟とのやり取りを見て来人は思う。
もしも、朱理が弟だったら。
相変わらず活発な性格だろうか。
それとも図書館で会った男の子のように大人しいだろうか。
考えを張り巡らしている内に来人は家に着いていた。
来人が靴を脱いでいるときだ。
だらしなく部屋着を来た朱理が出迎えた。
「おかえり兄ちゃん」
欠伸混じりに声を出す朱理を見て来人は盛大に笑った。
「やっぱりお前しかオレの妹は務まんねえよ」
「なに変なこと言ってんの。ご飯作ってあげないよ」
ぽっかり口を開けた朱理を見て来人は安心して自室に向かった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
図書館に限らずお店とかの閉まるアナウンスを聞くと焦りませんか。
私語もここまでに、次の更新は2/27の17:00を予定しています。




