第11話 ずぶ濡れの帰宅
雨にさらされドラゴンとの追走劇で身体もボロボロ。
妹からの依頼も達成できず来人はもう疲れ切っていた。
ずぶ濡れになりながら来人は帰宅した。
もう日付は変わっている。
家の明かりもすっかり消されている。
息を荒げて来人はポストの中にある家の鍵を手にする。
悪態をつきながら濡れたままの手で来人は玄関の扉を開けた。
「ただいま」
妹の朱理はとっくに寝ているだろう。
それでも来人は帰宅の挨拶をする。
虚しく来人の声が家の中ではね返る。
ただ、その余韻が来人を安心させる。
「帰って来てたんだ」
玄関の床はびしょ濡れ。
服は汚れきっている。
ボロボロもいいところ。
それでも生きて家に帰れた。
無事帰宅しただけなのに。
なんてことない日常が来人を穏やかにした。
「ちょいお行儀悪いがしょうがねえ」
濡れた衣類を脱ぎつつ来人は家に上がる。
タンタンタン。
どういうことか。
家に入ってすぐに階段を下りる音を来人は耳にした。
理由はもちろん。
「遅かったな、兄ちゃん」
「起こしてすまない朱理」
妹の朱理が来人を心配して出迎えたからだ。
欠伸をしつつ気怠そうに朱理は来人へと近づく。
どう説明しようか。
自分の今の格好を来人は見直す。
あまりにもボロボロな格好がトラブルを物語っている。
「兄ちゃん、例の物は手に入った?」
図太い態度で朱理は玄関の照明を点けた。
光を浴びて浮かびあがったひどい有様の兄だ。
「実は手違いがあったんだ」
焦りながら来人は情けない言い訳をした。
怒られるだろうな。
妹からの怒りの声を来人は予感していた。
しかし、実際の反応は違った。
「ひどい格好。それにボロボロじゃないか兄ちゃん」
「怒らないのか朱理」
気怠そうな態度から一変。
朱理は大きく目を開けて兄に歩み寄る。
普段と違い自分を案じてくれる妹に来人は戸惑った。
「怒るわけないよ。それよりそのガラクタは?」
朱理は来人の手にした物を見る。
それは原型を留めていない依頼品の手作りプラネタリウムだ。
「朱理の言っていたものだよ」
もはや残骸と化した戦利品だ。
しかし、一応依頼品でもあるため来人は朱理に見せた。
「ちょっと待って」
朱理はそれに構うことなく脱衣場へと向かう。
「ほい、これ使って」
急いで朱理は来人の為にバスタオルを持ってきた。
「ごめんよ。頼まれた物ダメにして」
「そんなのいいから、これで体拭きな。風邪ひくって」
「ありがとう朱理」
親切にしてくれる妹に来人は若干の居心地の悪さを感じた。
それでも身も心も疲れきっているのには変わらない。
妹からの親切が来人にはありがたかった。
もうひとつ来人に嬉しい点があった。
それはもう一つの戦利品に朱里は感心を示さなかったことだ。
青い石が入ったクッキー缶には妹は目もくれず。
献身的に来人に接したのだ。
地味に嬉しい誤算に来人は気が楽になった。
「洗濯物回しとくよ兄ちゃん」
「オレが風呂あがった後にやるから朱理は寝てていいよ」
「本当に?」
「大丈夫だって」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
朱理は兄の様子をもう一度確認すると自分の寝室へと戻っていった。
「後で朱理にお礼言わなきゃな」
バスタオルで濡れた髪を拭いながら来人はくしゃみをした。
このままだと風邪をひいてしまう。
足早に来人は風呂へと向かった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
前半部分はここで区切りとなります。
お話しもまだまだ続きますのでぜひともこの後もお楽しみください。
次の更新は2/19の17:00頃を予定しています。




