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第10話 雨と涙

転倒し逃げるのも限界。

諦めだす来人の頭上に雨が降り出す。

標的はもう動かない。


それを知ったドラゴンがじわじわと来人へ詰め寄っていく。


鈍き青い竜の歩みは横暴で。


足元にある物など我知らず。


獲物に向かう途中には宝があった。


アズゥのお手製プラネタリウムだ。


グシャっ。


無慈悲に竜の足がアズゥからの贈り物を踏みつけた。


後から出てきたのは平らな残骸だけ。


踏み潰された瞬間に電球から出た火花が最後の輝きだ。


「ごめんな朱理」


逃げるもかなわず。


祈りもかなわず。


もはや来人は妹への謝罪しか口にできない。


流れる涙が来人の(ほお)を伝う。


ポタ。


そのときだった。


来人の腕にも水滴が落ちた。


これは来人の涙ではない。


空からしたたり落ちるのは雨。


ポタ、ポタポタ――。


降りはじめた当初こそポツポツと降り注ぐ雫だった。


しかし、すぐに来人の全身を打つ大量の雨粒へと変わった。


ザァ――。


まるで来人の運命に天が同情しているようだ。


雨の勢いは更に増していく。


「グゥゥ」


ドラゴンの爪先が来人を捉える。


眼前には怪物の魔の手。


あと一歩詰められたら全て終わり。


惨めに泣いてばかりな最期。


諦めきっていた来人の全身は雨でびっしょりと濡れていた。


「オレってすごくカッコ悪いな」


どうしようもない現実だ。


もうこれが自分の運命。


その一言で来人は今の状況を片づけようとした。


「早くしろよ」


心の底では。


できるだけ楽な最期を来人は願った。


しかし、その願いとは裏腹に。


来人になかなか終わりが訪れない。


つむっていた涙と雨に濡れたまぶたを。


疑問心から来人は用心深く開いた。


「どういうことだ」


先ほどまで自分をつけ狙っていたはずのドラゴンに異変が起きていた。


なんとドラゴンはその場で完全に動きを止めていたのだ。


それだけではない。


竜の姿形にも変化が現れていた。


「縮んでいく」


発光もなく。


怪物の形は丸みを帯びたものへと変化していく。


翼も四肢も、角も頭も。


全てがグミのように柔らかに変貌へんぼうしていく。


あっという間にドラゴンの大きさも縮んだ。


もはや巨体と呼べない。


掌に収まるサイズだ。


最終的にドラゴンだった物体はもとの石へと戻っていった。


それも神秘的な光を発する青い輝石でなく。


どこにでもありそうな石ころへと。


実際に目の前で起きた現象に来人は唖然あぜんとするしかなかった。


「助かったのか」


起き上がると来人は石を拾った。


手早くアズゥからもらった缶の中へとそれを入れるのも忘れない。


止みそうにない雨が野道をより一層際どくさせる。


そんな危うい道を来人以外は誰も通っていない。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

前半の山場はいかがでしたでしょうか。

次の更新は2/18の17:00頃を予定しています

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