第一話②
「おはよっす」
そう言って学校に数時間遅れたのに、悪びれもなく授業中に堂々と前のドアから入って来たのは、クラス内カースト上位の伏見。
そいつがは教室に来たせいで、静かに寝ていた連中が起きてしまい、うるさくなり授業が止まる。
「つーかよ、昨日ゲーセンいったらさ………」
「おいおいまじかよ、またぼったくられたのかよ(笑)
お前からねえなまじで」
「マジでそれな、学習しなさすぎ」
先生もこうなるとため息をこぼして、自習にしてしまう。
この高校は偏差値も大して高く無い所謂不良高校の類だ。
先生は解放されるかのように外に出ると、清々しい顔で背伸びをしているのが後ろのドアから見えてしまう。
「ねえねえ、伏見君たちを先生は注意しないのかな」
「多分、ボコられるの怖がってるんだよ……伏見君、ボクシングで有名な選手だし、他の男女も運動できる人ばっかだからね、無駄に目をつけられると今後がアレだから……
でも本当、邪魔だよね」
他の生徒達も文句はあるようだが、何も言えなかった。
しかし、、、
「おい、そこの女、今俺に文句言ったか?」
最悪な事に伏見の耳に聞こえてしまった。
2人は震え上がってしまう。
「何つったかって聞いてんだよ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
女子2人は怯えて顔を背ける。
しかし、伏見は男女なんて関係無かった。
容赦無く1人を殴った。
殴られた女子の顔は腫れ、もう1人は大泣きしていた。
泣いている女子に黙らせるように、殴りかかる。
そこに俺は間に入り、顔面で拳を受ける。
俺の鼻から血が大量に流れる。
「ぐはっ」
何とも情けない言葉が教室に広がるが俺は怯えなかった。
「やめといと方が良い、どうなるか分かってんのか」
「誰だお前、この俺に逆らうってのか!」
そう言って殴りかかるタイミングでチャイムが鳴る。
「ちっ他のクラスに見られるのは面倒だな
おい、お前らいつものとこいこーぜ」
「おう!」
ヤンキー達はチャイムと同時に教室から出て行った。
「……た、助かった」
俺はへたり込む。
正直次モロに受けたら死ぬと思ってた。
でも、謎の俺の正義感で女子を守っていた。
「ありがとう、えっと……上村くん」
「……下村です」
「あっ、ごめんね、でも本当にありがとう
下村くん……凄い血だから保健室に行ったほうがいいよ」
「そうですね、取り敢えず次の授業最初は出れないと思うので先生に伝えといてもらえますか」
そう言って、俺は教室を出る。
鼻血で廊下を歩き続けるのは少し恥ずかしいから、取り敢えず鏡のあるトイレの水道で顔を洗いに行って、外に出ようとしたら、何故かよく分からない場所に俺は移された。
そうして俺は新たな世界に転生する事になる。
この男がやがて英雄と呼ばれたアンダーマインである。
そうこの男も元は異世界人であったのだ。
―――
異世界人である下村が来てから平和が訪れ、そして破滅を産んだ。
アンダーマインは良い人だった。
しかし、同じ異世界人に殺されたと言う。異世界人は我々一般人に比べたら、力の差は歴然で、あっという間に人間を支配し、全ヒエラルキーの中で頂点に立った。
アンダーマインの死後、急速に文化が入れ替わっていき、ルールも改訂されていき、アンダーマインが命を賭けて作った平和は同じ異世界人に容易く破壊されてしまった。
それでも、アンダーマインの意思を継いだ残党達は密かに、異世界人との全面戦争を巻き起こす計画を立てたが、いとも簡単に残党達は粉砕された。
それから何十年経ったのだろうか、前の平和な世界、いや、それよりも前の力が拮抗していた時代に戻りたかったと言う人が出て来て、アンダーマインの功績も薄れて来た。
中にはアンダーマイン自身も異世界人だからか、批判する人も出て来ていた。
「…………
………………」
「また敵対勢力がデモを起こしています
戦争は避けられないでしょう
どうしますか受けて立ちますか?」
「……どうして、分からない
下界の者どもでは我々には到底敵わないと言うのに
安心しろ、シェリー、俺とランドと何人かいれば事は足りるだろう
そう焦るな、この場での戦闘は復興に時間がかかる
せっかく築いて来た都市が壊れるのは御免だからな……」
俺はマドリック・エスファルド、異世界人だ。
よく分からない謎の扉が目の前に現れて、そこに興味本位で入ったらこの世界にいた。
ここは異世界だった。
だが、恐ろしい事に、日本とはあまり変わらない街中で都会のビルのような建物がたくさんあったり、商業施設もあって、あまり異世界に来た実感が湧かない。
しかし、俺は集団で転移した事もあってか、初めからそこまで困らなかった。
俺の友達の中にオタクが1人いた。
そいつはここが異世界だとはしゃいで魔法とか出せるんじゃないかって言って急に変な構えをしだすと、辺り一面を炎で燃やし尽くしてしまった。
その後、俺達は街を燃やしたとして追いかけ回されたが、オタクを見捨てて何とか逃げ切った。
オタクは捕えられて殺されてしまったそうだ。
しかしそこで分かった事もある。
俺達異世界人には皆チート能力が付与されていると言う事だ。
オタクがいなくなって、5人しかいないが、割と日本語で喋っている人もいる事から他にも転移して来た人はいるみたいだ。
勿論、ここにいた人間には日本語が聞き取れるわけが無い、対してあちらの言語は何故か俺達に、聞き取れる。
解析機能と翻訳機能が付与されている。
つまり、あちらの言葉は聞き取れて、こちらだけなら秘密の会話を堂々と出来ると言う事になる。
さらに、俺達にはそれぞれ違った能力が与えられた。
ランドはオタクの様に火の魔法で町中を燃やし尽くせるほどの火力、ミカは回復魔法をクリスティーは圧倒的な身体能力、
ジョンはランドの上位互換でさらに複数の魔法を扱える。
そして俺はその中で1番恵まれていた。
空を飛ぶ事が出来る能力に、圧倒的な爆発魔法、その威力はまた1つなら軽く消し飛ばせるくらいの威力だ。
「手加減はして下さいね
マドリック様は強すぎますので」
「分かってるさ、手加減はする
スタイリッシュに決めてくるさ」
そして、数日後、俺とランドと部下5人の計8人で敵対勢力380人に挑む。
しかし、我々はミカの魔法で力を得ている。
1人で50人を相手するのが余裕になるくらいには力の差があると思っていた。
しかし、相手は何故か簡単に崩れない。
「どうなっている!」
俺が手加減しているのもあるが、ランドを含め部下達もやや押され気味だ。
おかしい、人間が我々異世界人に敵うはずが無いのになぜ?
「くたばれ愚民ども!」
そう言って、上手くいかない怒りがあったのか、ランドはつい、力を使ってしまう。
その威力は絶大で、辺りを破壊する。
都市部から離れて良かった。
「村が焼け野原になってしまっただろ」
「そりゃ、俺達には関係ない事だ
それより、立て直しだ、2人死んだ分からんが気を抜くなよ
最悪、お前も本気を出すかもしれんぞ」
「面白い……久々に楽しませてくれるじゃないか」