最弱のモブキャラが少しずつ最強へと成長していき、大切な幼馴染を守り抜く物語
普通の主人公最強ではなく、守るもののために最弱を抜け出し誰よりも努力した上で最強になって行く物語
「ここは、どこだ……」
そこには見渡す限りの緑の大地と、いつも隣で見ていたはずの銀髪の少女がいた。
「あぁ、寝みぃ、」
高校入学初日だというのに夜中までゲームしてしまった…
そう、今日から夢に見た高校生活……だと思っていたが、
「おーはーよ! 響! また寝不足だろー、どうせ夜中までゲームをしてたんでしょー。 」といつもと同じ声が後ろから聞こえてくる。
幼馴染の朝火冬香だ。
彼女の容姿はとても整っていて日本人なのに地毛が銀髪で、その髪はいつも綺麗に腰まで伸びている。
そんな冬香だが、昔からいつも俺に構ってきて、高校ももっといいところに行けるであろうに俺と同じところを受験した。
今日初めてみる彼女の制服姿は寝不足の俺でさえも一気に目が覚めてしまうほどのものだった。
そんな冬香と一緒にいる俺はというと、
世間一般で言う『モブキャラ』と言うものだろう。
運動、勉強、何をしても普通で今までも友達という友達はできたことがない。
そんな俺だが、唯一力を入れていることがあった。
それはゲームだ。『異世界RPG〜最強冒険者になる〜』
というゲームを永遠としているのだ。今日もこれをしていて寝不足だ。
俺も異世界に行けたらなー、なんてなるわけない事にいまだに夢を持っていたりもする。
「みんな、入学おめでとう。」
初めて見た校長先生の挨拶。今日から夢に見た高校生活。
どんな出会いがあるのだろう…………なんて思っていた俺が馬鹿だった。モブの俺に話しかける勇気も話しかけられる事もあるわけないだろ。
あっという間に下校の時間。
「はぁ〜」
思わずため息を吐いてしまう。
そんな俺の後ろから、またいつもの声が聞こえた。
「響、一緒に帰ろ!」
「初日から成功したお前には俺の気持ちは分からないよな…‥。」
「もう、何言ってるの。早く帰ろ!」
あぁ、やっぱり冬香はすごいな。昔はあんなに泣きついてきていたのに……
そんなことを思いながら一緒に帰っていると、
ゴ、ゴ、ゴゴゴ、、ドーン‼︎‼︎
と音がして世界が揺れた。
「地震か、冬香、大丈夫か?」と言って彼女を見た俺は自分がモブだということを忘れた。なぜかというと、
彼女がとても怯えていて守らなければならないと思ったから。
「ひ、ひ、響、怖いよ〜、、、」
いつもと全く違う声で俺の腕にしがみついてきた。
怖い、怖い、怖い、死ぬのが怖い。
恐怖、焦り、負の感情ばかりが頭の中に溢れ出てくる。
俺に守れるのか?
いや、守る。
「お前は、必ず守る。死なせない!」
そうは言ったものの上から降り落ちてくる瓦礫を見た俺は負の感情に足負かされそうになる。「これが、死、なのか、」
頭の中に走馬灯が流れ込んでくる。
どれも冬香との記憶ばかりだ。
火の雨に打たれた俺たちの意識はそこからほとんどない。
「今は弱くて守れないけど、いつか、いつかきっと君を守り抜く。その時まで、隣にーーーー」
目が覚めた。
火に打たれた痛みがない。
「そうだ、冬香は……」
急いで体を起こした俺はその景色に息を呑んだ。
「ここは、どこだ……」
そこには見渡す限りの緑の大地と、いつも隣で見ていたはずの銀髪の少女がいた。
「冬香、冬香……」
そう呼びかけると冬香は目を覚ました。
「あれ、私死んだんじゃ……」
「冬香、落ち着いて聞いてくれ。俺の予想が合っていればここは異世界だ。」
異世界のゲームばかりやっていたことがやっと役に立った気がした。
「い、異世界?」
「あぁ、異世界は俺たちが住んでた地球とは全く違う世界のことだ。ゲームでは魔法が使えたり戦ったりして強くなっていくことが多いんだけど……いざ自分が来てしまうと困るよな……」
話を聞いていた冬香はキョトンとしていた。
「まぁとにかく、ここは魔物とかがいるかもしれないから気をつけようってこと。」
「わかった。でももし魔物が出ても響が守ってくれるんでしょ。」
「えっ!?」
「この世界に来る前に言ってくれたよね、「お前は守ってみせる」って。」
確かに言った。守りたかったから。でも、あの時守れなかったから今ここにいるんじゃないか、一度守れなかった俺に守る資格があるのか……
そんなことを考えていると、
「私は響を信じてるよ」と言ってくれた。
「俺はお前を守る。何があっても。たとえ異世界であろうとも。強くなって冬香を守る。」
気がついたらそんなことを言っていた。
そして冬香は言った。
「ありがとう」と。
この時俺は冬香を守ると誓った。
俺の予想が合ってれば……「ステータス!」そういうと目の前に「フォン」といって、画面が出てきた。予想通りだ。異世界物語は大体「ステータス」というと表示されるんだ。
またゲームの知識に助けられた。
名前― 鳴神 響
レベルー 1
HPー 23
MPー 0
SPー 19
スキルー 鑑定(対象のステータスを確認できる。)
これを見た瞬間違和感を覚えた。
こういう系の異世界物語は主人公最強が定番だろ。
ーーそうか、俺、モブだった。
そんなことを思いながら冬香のステータスを覗いてみると、
名前ー 朝火 冬香
レベルー 1
HPー 196
MPー 394
SPー 127
スキルー 火氷魔法の使い手
(火、氷魔法を使いこなせる。)
これを見た瞬間完全に自信を失った。なぜかって?
ステータスに差がありすぎる……
こんなの守るどころか守られる側じゃないか……
自分のステータスを見た冬香は「これが異世界……」と驚いていた。冬香は鑑定スキルを持っていない為、俺のステータスが見えない。
嘘をついて安心させるか、それとも正直に話すか。
ーー結局嘘はつかなかった。
冬香に全てを話した。
そして冬香は、「そんなの関係ないよ。何があっても私は響と一緒にいる。だから私を守ってね。」と言った。
いくらモブでもこれだけ言われても何もしないなんて考えない。絶対に冬香を守る、そう心に誓った。
「とりあえず人がいるところに向かいたい。東西南北どこに行けばいいのかも分からないが進むしかないと思う。」
俺がそういうと冬香は、「じゃあこっちにいこー!」といって俺の手を引いた。だから俺は、冬香について行く事にした。
大体5時間くらい歩いただろうか……
辺りが暗くなってきた。いまだに人の気配はない。むしろ危険な方に向かっていってる気がする。 あちこちから変な音がする。
「グゥゥワァァアー!」
後ろから聞いたことのない恐ろしい鳴き声が聞こえた。
恐る恐る振り返ると…………
そこには見たことのない、いやゲームの中で見たことのあるような化け物、いわゆるモンスターというものがいた。
全身黒色のライオンのようなモンスターだった。
「鑑定!」
そう言って相手のステータスを見ると……
名前ー ブラックリオン
レベルー 7
HPー 681
MPー 0
SPー 100
スキルー 黒の爪(素早い爪の攻撃)
控えめに言って化け物だ。
その時、「きゃぁぁああー!!」、と冬香が叫び出してしまった。
モンスターはそれに反応して俺たちをロックオンする。
「まずい……」
逃げるか……いや、追いつかれるだろう。じゃあ戦う?
勝てるわけがない。絶望に浸っていると頭の中を一つの言葉が通り抜ける。
「私を守ってね。 信じてるから。」
冬香の言葉だ。また勇気をもらってしまった。
「あぁ、俺は君の言葉に何度助けられたか、今度は俺が君を守ってみせる!」
「後ろにいて、冬香。」
俺は冬香とモンスターの間に立ち、モンスターと向き合った。圧倒的な力の差があろうとも、今なら勝てそうな気がする。
「うおぉー!」
そう思ってモンスターに立ち向かった。
モンスターも俺の方へ飛びついてくる。
そしてモンスターの左手が振り下ろされる。
「鑑定で見た時のスキル、黒い爪か、」
「グサッッ!」
ーーーーん?、意識を失っていたのか……
冬香は、、、無事なのか……
「ファイアボール!」
冬香の声だ。 早く助けないと。
体が動かない。そう思って体を見ると……
右半身が血だらけで所々の肉が抉り取られていた。
「う、う、うぁぁぁぁ……」
痛い、痛い、痛い、痛い、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい
このままだと2人とも……
「ダブルスラッシュ‼︎」
どこからか声がした。そしてモンスターは四肢と首を刎ねられ死んでいた。俺の意識は遠ざかっていった。
ーー「やっと目を覚ました! 心配したんだよ、響!」
気がつくと俺はどこか知らないベッドの上で横になっていた。
「ここは?」
状況が理解できなかった。
「魔物は?傷は?」
そう聞くと、冬香は、「私たち冒険者さんに助けられてここに連れてこられたんだよ。響の傷もその人たちが治してくれて、化け物も倒してくれたの。」
「ここも冒険者さんたちの家だって。」
「良かったぁ。」
思わず安堵の言葉が溢れた。そして涙も溢れた。
「冬香が無事で良かった。死ななくて良かった。」
それから冬香はその冒険者さんたちに聞いたことを全て教えてくれた。
ここは王都トータルアースというらしく俺の予想通りの異世界だ。魔法があり戦いがあり、魔物もいる。
そしてダンジョンがあるらしい。
ダンジョンというのは簡単に言えば魔物が生まれ、魔物がたくさんいる危険な場所だ。この世界には「陸のダンジョン」
「海のダンジョン」「空のダンジョン」というものがあるらしくそれぞれ上層、中層、下層、深層、神層があるらしく、陸、海、空の順で難しくなっているという。空のダンジョンにはまだ4人しか到達していないらしい。
そしてそのトータルアースには派閥があるらしく、王家の人たちが自分のチームを作り派閥同士で色々なイベントをしているという。冒険者をするなら絶対にチームに入った方が有利になるらしい。
これらが冬香が冒険者さんたちから聞いた話だという。
この話から俺たちのすることが決まった。
1. 冒険者になること。
2.チームに入ること。
この二つだ。
その前に体力が戻るまで休む事にした。