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ゲームとは、徒党を組むことだ

 

「絶対に許しませんわ、あの筋肉ダルマ! 絶対に私の前で這いつくばらせて懺悔をさせてやりますの!」



 ログイン一番、元気のいい姫プのヨーコ様がいらっしゃった。おうおう、荒ぶってらっしゃる。



「絶対に、絶対に……あらここどこですの? 鉄格子? 何故? 私が?」



「それは君が、投獄されたからでーす!!!」



 特別に看守さんに掛けてもらったカーテンをひっぺがして、怒りのヨーコ様の前に現れる俺。IN鉄格子。



 それを見て、1度ぱちくり。2度ぱちくり。三四と連続。5は……。



「なんでいるのですわーーーっ!!!???」



「ぷふっ」



「笑ってるところ悪いけどエトワールちゃんに対する俺の感情それと一緒だぜ」



 エトワールちゃんが絶望的な顔をしていた。


 おっと、今日の部屋割りについて話してなかったな。今日の俺達専用INNは俺とヒカルが並びの、反対側にエトワールちゃんとヨーコ様だ。普段は、俺とヒカルが面と向かって話をし、なぜだかエトワールちゃんは俺の顔が見たい日が多いそうでヒカルの横に泊まることが多い。


 何?牢屋は宿屋じゃねえって? 雨風凌げて飯がタダで出る。ついでにセーブポイント付き、外にはボディーガード。スイートホテルも裸足で逃げ出す高待遇じゃねえか。


 最近は私物持ち込んでも許されてきたしな。何でもこの街で犯罪を平然と犯すのはお前たちぐらいだ、との事。信頼されてんねぇ!



 さて、と。あわわわ、あわわわと言っているヨーコ様。現実に戻してやろうか。



「これでっ、お前もっ、俺らとおんなじ犯罪者〜、外出歩けば後ろ指〜、豚箱で食ってろ臭い飯〜」



「ほう、臭い飯なら今日の夕飯は抜きでいいな?」



 か、看守さん!!! いらしたんですね!?



「じょ、冗談ですよ!見てください、この俺の目! 純新無垢な眼でしょう!?」



「それはせめて兜を外してから言え」



 一瞥もせずに言う看守さんに、ぐうの音も出ない。飯だけ置いて帰ってったけど。



「そういえば親友、どこでも兜脱がないよね? 本当に顔あるの?」



「ちゃんとありましたよ」



「あっ、エトワールちゃんはそういえば見てんな。俺のご尊顔、記憶で壁に掘ってもいいぜ?」



「マスターの顔はちょっと……」



 ああっ!? あいつ最近調子乗りすぎじゃねぇ!? 手は出せないので仕方ないから鉄格子をガタガタ揺らして威嚇する。威嚇は自然界で舐められないための重要なことだ。ははっ、ビビっておる、ビビっておる。



「何も呑気にしてらっしゃるの!?」



「おお、怖いよ。親友……癇癪持ちだ……」



「そうだな、恐ろしいな。親友……だが見ろ、あれは檻に入れられた哀れな愛玩動物だ……」



「そうだね……エロいね……」



 じっくりと視姦してやった。マジで黙ってりゃいい女なのにな。どうして喋って、動くのか……生きているから……?



「ひぃっ!お黙りなさい、晒し1号、晒し2号!」



「晒しって?」



「あっ、私も気になります、マスター」



 無知コンビ2人が尋ねてくる。そうだね、知っといた方がいいね。



「晒しってのはな……人様に迷惑をかける野蛮な生き物をリアルでこいつらはやばいぞって周知することだ。やられるとまともにゲームは遊べない」



「え?で、僕と親友晒しなの?」



「そうだ、そしてヨーコ様もしっかり晒されてる」



「なーんだ、人のこと言えないじゃんね」



 そうなんだよなぁ。何のマウント取りに来てんだろうなぁ、あの子。鋼メンタルだったり、ですわーーーーーっ!!!!! だったり随分と人からズレてない?



「あなたたちだって何にも変わりませんわ! ゲームをまともに遊べないのは辛いでしょう!?」



「晒されてもヒカルは女に声かけるよな?」



「まあね、元より僕は全ての女の子に興味があるんだ。今更晒されていようが声をかけることに変わりはないね、そういう親友は?」



「晒されるとイキった自治厨が突っかかってきてくれるから助かる。金はいくらあっても足らない」



 ヨーコ様絶句。残念だったなぁ! お前と違って俺達は悪評に強いのさ! 姫プレイが出来なくなったのを惜しむのはあんただけ! つまり、俺達は無傷!



「ヨーコさん、あの人達はああいう生き物だと割り切った方が楽ですよ。私、最近思うんです。罪は罪を顧みる人間にしか意味がないって」



「エトワール……さん、でしたっけ? 貴女だけはまともなのですね。辛かったでしょう?」



「そんなことないですよ? 慣れてしまえば可愛いものです……」



「エトワールさん!」



 ヨーコ様、お前の姫プレイぶち壊したのそいつもだぞ。姿見えてねえから気づいてない疑惑あるな。それと、エトワールちゃんは自分より弱い立場のやつにマウント取る気質あるんですね……人間より人間らしくない?



「まあまあ、ヨーコちゃんさ。僕達もう同じ所(牢屋)で寝て、同じ釜の飯(獄中食)も食う中でしょ? 過去の事は水に流して、友達としてやっていかない?」



 ヒカル……! お前、俺の言葉をちゃんと覚えていてくれたんだな……! 思わずサムズアップしてしまった。きっとヒカルもサムズアップしているに違いない。



「は?なんでですの?」



 それに対してヨーコ様、マジヨーコ様。被害者が譲歩してくれてるのにその態度良くないですよねぇ? ガン飛ばしとこ。ブルブル震え出した。



「僕とアルバートもね、こうやって牢屋で顔を合わすまでは対して興味もなかったんだ。彼が僕に何を思っていたかは分からないけれど、僕は彼に青髪のJK侍らせてる憎い男って思ってたんだ」



 え!? ヒカルそんなこと思ってたの……! 酷い! 俺もお前のこと詩的な表現でイキリ散らすイケメン出会い厨だと思ってたけど!



「だけどね、こうやって腹を割って話したらさ。意外と気があったんだよ……だからね? ヨーコちゃんも今、なんにも無くなったー! って騒いでるけども、ちゃんと残ってるものがあるじゃないか」



「……なんですの?」



「僕達との縁、さ」



 ヨーコ様がハッ、とした顔をした。ヒカルの素晴らしい演説に胸を打たれたに違いない……俺もお前はヒカルの腕で得た金を自分の懐にしまい込んだクソッタレ掃き溜め女と思っていたが……考えを改めよう。今から、俺達はただのアルバートとただのヨーコだ……そこにあるのは鉄格子という仕切りだけ。そんな些細もの俺達の絆なら乗り越えられる!



「そうですね。そうですわね。そのとおりですわ!!!」



 はい、三段活用。ここテストに出るぜ。



「私達でパーティを組みましょう!!!」



 おっ? とち狂った? ヨーコ様が勢いよく立ち上がり腕を広げる。



「確かに私達は野蛮でゲスで生き汚い人間のクズみたいな者たちでした! けれども!」



 めっちゃボロっくそに言うやん。自虐癖か?



「それはここでの話! ここから違う町に行けば、新たな出会い。新たなカモ! 新たな金蔓が転がっているに違いませんわ!」



 !? そ、そんな手があったなんて!



「天才か!?」



「天才だよ!」



「ふっふっふ、分かって頂けましたか私の有能さ! そして、ここからが問題……他の街に行くには力が1人では足らない! しかし、1人ではなく2人、2人ではなく3人ならば!?」



「超えられる! 僕達なら超えられるよ!」



「ああ、そうだ! 俺達なら必ず超えられる!」



 ついに俺たちは一つとなった。



 そう、本当に鉄格子を想いだけで超えて一つになったのだ。




「出会いの場が牢屋な時点で最悪のスタートですけどねー」




 全員でガタガタやった。




 クズが三人よってもクズの知恵。


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