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ゲームとは、悪人を成敗することだ

過度な暴力表現があります。ご注意ください。

 

「俺の立場からこういうことを言うのは良くないが、今日だけは言わせてくれ……必ずその女を殺して連れてこい。俺が牢屋にぶち込んでやる」



「任せろ」



「確かに今回はマスターにちょっとだけ正当性がありますね」



「僕の親友を信じてくれ」



 いつも通り挨拶を交し、俺達は出所した。



 しかし、今日だけはいつも通りではない。


 それは、初めて三人で行動するということだ。その記念となる日がクソッタレ女ぶち殺し吊し上げ日だと思うと……憂鬱だ。絶対に殺してみせる!



「エトワールちゃん、覚えておけ。本来、PKにおいて重要なのはターゲットの捕捉だ。どこにいるかわからん相手は殺せないからな」



「普段マスターがやってるのは?」



「追い剥ぎ」



「じゃあ今回は本当のPKが見れるんですね……ちょっとだけワクワクしてる自分が恥ずかしいです」



 いい成長だ。お前の中の殺意は着々と目覚めているぞ。



「特に悪質な相手には何度も何度も殺して、悔い改めさせた上でさらに殺し、引退しても出てきた瞬間に殺す必要がある。そのためにも普段からターゲットがどこで何をしているかを知る必要がある」



「そこまでするんだ……」



 ヒカル、覚えておいて損は無いぞ。PKに付きまとわれたら最後だと思え。



「だが、今回はかなり特殊だ。まず、被害者がある程度状況を知っており協力的であること。突発的な依頼じゃないし下手人だとバレても構わんってのは貴重だからな。お前にも色々と手を借りるぜ、ヒカル」



「任せてよ、出来ることなら僕が殺したいぐらいだ」



「それと、姫プレイ女にはよく効く手段があってな……」



「そんな魔法の手があるんですか、マスター!」



 二人が詰め寄って聞いてくる。


 その手とは……。






 ◇◆◇◆◇






「あの女だよ、アルバート」



 俺とヒカルは少々変装をして件のターゲットを探していた。ちょうどよく、男とデートをしている最中だった。



「ほーん、あの黒髪の……なんだか随分と清楚な見た目じゃねえか?」



「僕もあの見た目に騙されたんだ……! 胸も大きいし!」



「いや、脚がいいね……姿勢もいい……なんで姫プレイなんてやってんだ?」



 俺たちはねっとりと、黒髪ロングでスラッとしたスレンダー巨乳のターゲットを視姦する。男2人揃って女を見ればエロい目で見てしまうのは当然のこと……! だが、我が忠実なるしもべ(エトワールちゃん)はその様子が気に食わないようだ。



『ちょっとマスター達! 私に誘導を任せといて、何してるんですかー!!!』



『悪い悪い……俺も獣なんだ』



『本能に身を任せるのは悪いことじゃないさ、親友』



『むーっ、最近二人でずっーと話してて私のこと構ってくれないですよねー! 初対面では麗しい青髪の君! とか言ってくれたのになー』



 お気づきだろうか、そうエトワールちゃん更に便利になったのである。念話機能まで生やしてしまってエトワールちゃんの便利化が止まらない!1家に1台エトワールちゃん!今度褒美やろうかな……。


 そんな他愛もないことを考えているとヒカルがエトワールちゃんを切って捨てた。



『リアルに存在しないからね。時間の無駄だよ』



 こいつこういうところ凄いんだよなぁ。誰でもいい訳じゃなくてちゃんと狙って落としに行こうとするとこ、出会い厨としてプロだわ。姫プレイに引っかかったけど。



『分かりました、死ね』



『今度なんか言うこと聞いてやるから、今日は機嫌直してくれや。エトワールちゃん……』



『分かりました、もうすぐ着きます』



「えー! お兄さんすごーぃ! そんなことまでできるんですね!」



 あっ、エトワールちゃんの声聞こえてきた。



 やはりあのJK風魔法使いファッション……男釣れるなぁ。隣のこいつも簡単に引っかかったし……俺らが見守る中、ターゲットの女に貢いでいる男へ、全力で媚びていくエトワールちゃん。そうだ、そのままあの姫プレイ女に男ごとぶつかれ!



「いやいやそんなことないぜ? 俺のテクにかかればイチコロよ」



「やだー! すごーぃ! 今度見せてくださいよ私にもぉ、きゃっ!」



 作戦通りに姫プ女にエトワールちゃんが前後不覚を装って激突。名演技だ。よくやった! 後で絶対褒めてやる!



「行くぞ、ヒカル! 仕込みは終わった!」



「ああ、アルバート! 成敗の時だ!」



 俺達はダッシュした、もう間違いなくダッシュした。なんでって? 話にかまけて結構離れてたんだよ。プロとしたことが……。



 現場に辿り着くとそこはもう修羅場だった。



「おめえ! ヨーコちゃんと言うものがありながらそんな女にまで手を出してたのかよ!」



「て、てめえこそ! 今日はヨーコちゃんとデートの日じゃなかっただろ! 抜け駆け禁止じゃなかったのか!」



「や、やめてよ。2人とも、こんな所で……」



「うっわ、最低二股ですか?」



 それはどっちに言ってるんだいエトワールちゃん。ちなみに三股だぞ。って訳で険悪な被害者二人と加害者をさらにめちゃくちゃにするため、燃焼剤(ヒカル)を投げ込む。



「何やってるんだヨーコ! 僕とだけ付き合ってくれるって話だったじゃないか!」



「えっ、そんなの言ってな」



 ヒカル、お前も名演技だよ! オスカー助演賞のプレゼントしてやるな!? こいつの首で!



「嘘だろヨーコちゃん! この前の結婚指輪渡した時の言葉はなんだったんだよ!」



「お前が抜け駆けしてんじゃねえか二股野郎! ヨーコちゃんから離れろ!」



 もうそっからは取っ組み合い引っ掴み合いの大喧嘩ですよ。天下の往来でやってるから野次馬もどんどん集まってきてるな……そろそろ頃合か。



 ちょっとだけ離れてみていた俺は素知らぬ顔でその横を通ろうとして、よろけた姫プレイ被害者にぶつかる……そして。



「何ぶつかっとんじゃワレェ! ここはみんなの道路やぞ揉め事はよそでやらんかぁ!?」



 こういう時この見た目便利だよなぁ。おっ、恐慌ついてら。



「ひっ、す、すいません」



「何謝っとんじゃあ!? てめえそれでもタマ付きかいなぁ! 誠意見せんか誠意!」



「せ、誠意……?」



「そんなことも知らんとァ、甘ちゃんやなぁ! ほれジャンプしてみぃジャンプゥ!」



 結構若いチャラついた兄ちゃんだったけど簡単に飛ぶな。多分中身そんなに汚くないなこいつ、だから引っかかったんだろう……可哀想に、俺がその金貰ってやるな?


 しかし、このゲームすげえや。VRゲームなのにこうやって恐喝したらジャンプするだけで面白いぐらい金落としおる。なんでシステムでこんなの許されてんの?



「おお……結構持っちょるやないかい。やれば出来るならさっさとやらんか。ったく、時間の無駄遣いさせおって。ほな、さいなら」



 鎚矛(メイス)を振り下ろす。証拠隠滅ァ!


「えっグッッッ!」



『アルバート は クラウス を殺害した』



「キャーっ!!! 人殺しぃー!!!」



 何その悲鳴迫真だねぇ、エトワールちゃん? マジでやってたりしないよね? と考え事をしながら左手の盾をポカンとしてるチャラ男二号の首に叩きつける。



「オラッ!」



『アルバート は クラウド を殺害した』



 てめぇー! チャラ男二号ー! クラウドなんていい名前でそんな良くないことすんじゃねえー!!! クラウドさんが草葉の陰で泣いてんぞ!?



「な、なんなんのですか貴方! ポンポン人を殺すなんて不条理ですわ!」



 二人の哀れな子羊を撲殺すると、今まで驚きで放心していたはずなのに、瞬時に激高して掴みかかってきたよ姫プレイ女……確かヨーコだっけ? 度胸あるやん。でもそのセリフ吐くタイミング間違えたな?



「不条理じゃねえよ。お前人騙して貢がせてたろ」



「何をおっしゃっているんですか!? ワタクシ、そんなこと知りませんわ!」



「おい、とぼけんなや!」



 とりあえず一発顔面を拳でパーンチ!



「ひっ……」



「なあなあ、お前さ。自分が悪いことしたらどこがで誰かに悪いことされるって聞いたことない?」



「あっ……あっ……」



「もう一発行っとくか? 次は腹だからな、もっと痛くすんぞ。なぁ? あるかないか聞いてんのよ」



「ありますわ……」



「じゃあこうなるのもさ、当然だよね」



 プルプル震えながら気圧される姫プ女。けれどこいつは姫プをかますような女だ。ここで終わるタマじゃなかった。



「当然……なわけないでしょう舐めてらっしゃるの!?」



 立ち直り早っ! 何こいつ鋼メンタルか!?



「金蔓をこんなボコスカ殺しておいて! 本当に頭おかしいんじゃないですの!?」



「うっわー、反省しねー……やべー」



 しょうがない秘密兵器切るか。俺は左手の盾を振り上げた。



「な、何をするつもりですの!?」



「見りゃわかんだろ、一々聞くな」



 そう言って、俺は盾を振り下ろす。鈍器性能抜群の盾は綺麗に姫プ女の頭をトマトみてえに弾け飛ばした。



『アルバート は ヨーコ を殺害した』



 これでよしっと。激動の1日だった……あとは頼むぜ。ほら、もうドタドタと司法の足音が聞こえてくる。



「ここで暴動の噂を聞き付けてきてみれば! 何だこの惨状はー! とにかく全員連れていけ!」



「はっ! そこの死んでる女は!?」



「もちろんそいつも連れていくに決まっているだろ! あとの死体は捨てておけ!」



「了解しましたぁ! てめえ絶対許さねえぞ!」



 続々と現れる看守さん達。案の定、死んだ姫プレイ女のことをめちゃくちゃ足蹴にしてる。



 みんないい笑顔だ……。いい仕事したもんだ。俺も笑顔を浮かべ看守さん達に引きずられていく。ヒカル? あいつは取っ組み合いの最中に帰ったよ(死んだ)






 ◇◆◇◆◇






「没落しましたわーーーーーっ!!!!!」



 竜宮院 涼子ことヨーコはお目覚め一番そう吐き捨てて、VR機器を投げ捨てた。



 彼女は怒りに打ち震えていた。自分の顔や体型をそのままぶち込んで男を手玉にとって遊んでいた自分のオアシスをなんかよくわからない青髪の女と兜を被った筋肉ムキムキの謎の男に全部ぶっ壊された。



 これで怒らずに居られまい。更に説教されたことも気に食わないのだ。彼女は親に説教をされたことなどない。生まれて初めてをあんな意味不明な男にされたことも屈辱的だった。



 怒りに打ち震えていると、端末があるメールを表示した。



「……なんですの、このアドレス」



 ヨーコは馬鹿なことはやっていたが非常にキレものだ。だからこそ本来であれば端末に届いた謎のアドレスなど踏むことは無い。



 だが、そこには自分の死体でピース写真を取っている男も添付されていた……! これはなにか見ないとまずいことになると直感的に理解した彼女は開いてしまった……パンドラの箱を。



 その先は……。



「私が……私が、晒されておりますわー!!!!!」



 ヨーコお嬢様怒りの台パンである。



 台パンお嬢様爆誕である。



 これではもう二度と姫プレイなど出来やしない……!



 初心者要注意初心者のアルバート、ヒカルと同じくらい危険なやつだと完全に晒されてしまった。



 己、筋肉ムキムキ男! 絶対に許さない! この恨み返さずにいるべきか!



 彼女はすぐさまログインし直した。






 ◇◆◇◆◇






「へへっ、ちゃんと晒しといたで。アルバートはんよぉ……」



 左手の盾で女を殺したら今回の出来事をしっかりきっかり晒しておくようにと頼まれていた男は、室温管理万全の部屋で最新型のパソコンを前にしてニヤニヤと笑っていた。



「ちゃーんと、前払いの品受け取ってますしなぁ。仕事はキチッとやったりますわぁ」



 その男はある写真に頬ずりをかましながら、ねっとりとそう言った。



 さて、この謎の男は何者なのか……。



 その答えは……。



「男、“キンモチ”約束は絶対守るさかい! このエトワールちゃんの写真もちゃーんと、ワシのもんだァ!」




 クズ、昨日の殺人今日の友。


キンモチは週3で殺されます。その度に金を持っているので主人公の資金源になっています。

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