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ゲームとは、迷惑な奴がいるものだ

新キャラ視点。

 

 いつも厳かな雰囲気漂う騎士団の詰所は、普段と違う活気を見せていた。


 それもそのはず、我らが騎士団のエースが長い遠征を終え帰ってきたのだ。


 騎士達は涙ながらに語っていた。もうあんな訳の分からない思いをしなくて済む、と。


 彼等にそこまでの思いを吐露させていた存在とは一体……!






 ◇◆◇◆◇







「さて、静よ。何故お前が大事な任務の中呼び戻されたのか理解しているか?」



「お父様、ネットでは誰が聞いてるか分かりません。私のことは『第一の剣、静寂なるサイレント』とお呼びください」



「長い」



 私は、父のこういう所が大嫌いだ。何故私のこんなにも美しい2つ名をお呼びにならないのか……理解に苦しむ。


 それはさておき。確かに謎である。我々には大変重大な任務が課せられており、それを攻略できなければ……想像するだけでおぞましい。なのにその任務を放棄してまで前線から私を引き戻した理由、一体何がこの“ジャルパーク”の王都で起こっているのか……。



「その理由は1つだ……最近第2段階のあっぷでーとでたくさんの人々が何も知らずこのげいむに入ってきたようだ……全く嘆かわしいことにな」



「お父様、無理に話さなくても結構ですよ。資料を見せてください」



 父の言葉時々詰まるから本当に聞きづらい。いい加減いい歳なんだから黙って隠居して欲しい。



「やらん。私の仕事だ。いいか端的に言うぞ」



 なんでためて言うの? 本当におかしくない? どれだけ自己顕示欲が強いの?



「……犯罪率が恐ろしいほど高い」



「は?」



 意味がわからなくなって父から資料をひったくった。説明が冗長すぎて何を言いたいのかが、サッパリだ。さてさて、どうなっているのか……。



「ふっ、お父様何を仰ってるのでしょうか。ついに耄碌したのですか? 『監獄』の収監数は全く変わっていないと報告されているでは無いですか。それで犯罪率がどうやって上がるのか、教えて欲しいものですねぇ……」



 思わず笑みが止まらない。いつも上から目線の父にこうやって何か言い返せる機会なんて全くないのだ! 言えるだけ言ってやる!



「そうじゃない。えぬぴーしーへの犯罪じゃない、ぷれいやー同士の犯罪だ。『牢屋』の収監数を見てみろ」



「そんなもの昔と変わらず月一程度でしょう……?」



 そこに書かれていたのは。



 1日3~4人。それが毎日、たった一度も途切れることなく続いている。たまに増えている日もあるが、何かそこにはスペースないので追い返しましたとか書いてある……!



「え、なんですかこれ……」



「私にも分からない。しかし、平の騎士たちは幾度となく悲鳴を上げている。彼らのほうが詳しいだろうから、近場の哨戒がてら話を聞いてくるといい」



 私は覚悟した。ここはもしや最前線よりもやばい街になってしまったのかもしれないと……。






 ◇◆◇◆◇






「サイレント様がいれば百人力です! かの傍若無人な悪鬼羅刹共をちぎっては投げちぎっては投げの大活躍をしてくれると我々一同願っております!」といきなり詰所で言われた私はそのまま案内の騎士に連れられ城下町に出た。



「で、何が起きている」



 騎士は肩を竦めながら首を横に振る。



「私にも分かりません。前任者はよく逃げ出すので」



 そんな恐ろしい職場……!?



「ただメモ書きがいくつか残されていたのでそれを読み上げます」



 騎士は震える手で数枚のメモを懐から取りだし何とかおぼつかない唇を必死に動かし言葉を紡いだ。



「看守は敵」



「は?」



 初っ端からなんか訳の分からない言葉が出てきたのだけれど!?



「ジャンプはするな」



「??????」



「女性の騎士は哨戒に当たるな」



「私もだが?」



「男の騎士も1人では出るな」



「さっきのメモと矛盾しているだろ!」



「悪魔は3人いる」



「いや、怖い怖い怖い怖い!」



「以上……残されていたメモです……これ以上は恐ろしくて何も……」



 そりゃあこんなの誰でも逃げ出すわ!!! ふざけているのか!!! お父様、あなたは私のことがお嫌いになったのですか? 私はもう嫌いになりました。



「……仕方ない。こうやって歩くだけでも何か手がかりが掴めるかもしれない。頑張ろう」



「はっ……!」



 と意気込んだ瞬間。



「おいおいてめえよォ! 何ぶつかっとんじゃワレェ! 頭に目着いとんのかァ、ァァ!?」



 全速力で首をそっちに向けた。そこには前面に穴がいくつも空いた兜を身につけた筋肉質な男が少々チャラけたお兄さんに絡んでいた。



「あれか!?」



 そうして抜剣し、あの怪しげな男を成敗しようとすると。



「ねえねえ、お嬢ちゃん達。僕と最高の気分を味わないかい?」



 首が反対方向にねじ曲がった。そこには銀髪の長髪を後ろ手に纏めたイケメンが居た。が、その腕がねちょとねちょと動いていることと、話しかけている対象が小さくて大きい女の子だったのがまずい気がする。



「まさか、あれもか!?」



 私は、先に女の敵から処罰しようとすると。



「ねえねえ、騎士さん……私、クラクラしちゃったんですの……」



 身体がそのままぐるんと一周した。そこには黒髪ロングの巨乳女が案内の騎士にしなだれかかっているところだった。既に騎士はもう慌てふためいていて、何やらどんどん宿屋の方に向かっていく。



「3人目っ!?」



 先程の言葉が脳裏によぎる。



 ――悪魔は三人いる。悪魔? あれが?



 思考の渦に飛んでいきそうになる。やばい、私としたことが何から手をつけていいかっ!



 だが、ある言葉が耳に入り私は戻ってこれた。



「おら、ジャンプせんかぁ! ジャンプ! 出来るやないかぁ! サンキュー死ね!」



 そこには頭に鎚がぶっ刺さったお兄さんがいた。



「あー! 手が、あー吸い込まれるぅー!」



 今にも女の子の胸に手を突っ込む男がいた。



「やんっ、どこ触ってるんですの!? 慰謝料払ってもらいますわ!」



 案内の騎士が財布ぶんどられていた。


 私は後悔した。私の判断ミスが招いたのだこの結果を。



 だから。



「全員まとめて死ねぇぇぇ!!!!」



 頑張って3人とも斬った。



「貴様……何者っ!?」



「その太刀筋、女の子だね。覚えたよ……」



「なんで、ワタクシまでぇー!」



 私は、理解した。


 そりゃあ犯罪率が増えるわ、と。




 クズ、ついに司法に捕捉される。


「看守」はNPCですが、「騎士」はプレイヤーです。騎士団はギルドやクランと読んでも差し支えないです。

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