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012 反撃

012


「……何てこったぁ。ジーク様の言うとおりだぁ」



 荒れ地の窪みに身を伏せて、燃え上がる自分達の寝床を眺める農民歩兵軍。



「ぶ、部隊長はお手柄だって言ってくれたぞ? 褒美は金でも出世でも好きなほうを選べって!」


「あのまま寝てたら……」


「ま、あいつらはアルフヒルド王国の軍で、お前らはヴィルジニアの農民ってことだろ」


 目的を果たしたはずのガーレス達邪竜討伐軍は、手柄と名誉を失うことを恐れ、農民達の口封じに出た。

 この事実は一国を背負う英雄の人物を知りたかったジークフリートを大きく落胆させた。



「ちくしょう、許せねえ」


「今の俺達ならあの軍隊にも勝てるんじゃねえか? エンシェントエルフ様も味方なんだし」


 命を狙われて憤る農民達。



「あ、エルフ様と侍女さんはやばいんじゃねえか?」


「ああ、主様達なら無事だ。すぐに合流できるだろう」



(やれやれ。無事かアウレーリア?)


(はい。全座標を把握次第、すぐに皆殺しにいたします)


(ああ、待て待て。それではつまらん)


(……は。御意のままに。しかし何が英雄将軍でしょう。ただの下衆です)


(あれが英雄ならアルフヒルドの王の器もたかが知れるな)






「おお! エルフ様ご無事でしたか」


「良かったあ」


 ジークの指示に従い、転移で合流するアウレーリアとフォルトナータ。


(ガーレスはどうだ?)


(……は。ご命令のとおり深追いはやめさせました。今はうまく兵をまとめて陣を敷き、休んでいるようです。将軍の地位は伊達ではありませんね)


(ほう)


(口封じは諦めていないようです。先ほどの混乱はモンスターの襲撃だと兵に言い聞かせ、逃げた我々を捜索する手筈を立てています)


(よし。ならば仕方あるまい)


「トーマス。将軍は我々を見逃すつもりはないようだ。朝には捜索隊がやってくるぞ」


「ええっ!? えらいこっちゃ! どこへ逃げるだか?」


「伍長、逃げる所なんかねえだよ」


「ぶっ殺してやろうぜ」


「おお! どうせ死ぬならヴィルジニア人の意地見せてやろうぜ!」



(フォルト、助太刀するぞ)


「ええっ!? あっ? 何これジーク様?」


(私に触れたまま念じれば伝わります)


(こいつらと違ってアルフヒルドの奴らはお前らエンシェントエルフに対する敬意がないようだ。二人に邪な考えを抱いたのも許せん)


(そ、そりゃあエリノール大森林に近いからね。あっちはちょっと遠いもの)


(この場で俺達のリーダーはお前だ。お前が俺達に命じるんだ)



「わ、わかりました。ヴィルジニアの民よ。我々も協力しましょう。ジーク、思い知らせてやりなさい!」



(へたくそかよ……。何かこうエンシェントエルフっぽい言い回しはないのか?)


(ひいん、そんなの知らないよお)







 朝日に白むテントの明るさに目を覚ましたガーレスは、昨夜の謎の兵士の追撃がなかったことに安堵した。


 きっと戦場でよく噂される死霊の騎士の類であろうと、兵士に言い含めた虚言と知りつつ自らもそれにすがっていた。


「おい。ドルフリー……は死んだのだったな。ブライアスを呼べ。食事もこちらへ寄越せ」


 テント前の兵士に命令を出したが、そのブライアスが前方から走ってくるのが目に入った。


「斥候より報告! 農民どもがやってきます! あいつらやる気です。どっから手に入れたのか武器と盾も上等を揃えてやがります!」


「何だと!?」






『ジーク様、本当にまともにぶつかるおつもりですか?』


「ああ。これは俺の戦ではない。ヴィルジニアの反撃だ。主役は彼らでないとな」


『彼我の兵力は八百と三百ほどです。竜の肉の効果と帝国製の装備で、まあ五分でしょうか』


「おお。俺とガーレスの知恵比べというわけだな。これは腕が鳴るな!」



(全く。お顔だけでなくお心も子供のよう。一軍を率いて勝利すれば主役はジーク様となるに決まっているではないですか)



 また再び、国を、星を、銀河を手に入れる戦いがここから始まるのですね。


 主には聞こえないように、アウレーリアは空に呟いた。



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