表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/100

第五十四夜 幸せの時間は過ぎ去るのが早いから。

「そうか。残月は死んだか」

 メテオラは電話の向こうの相手である、ウォーター・ハウスと話をしていた。


「で。やったのはブエノスって奴か。生前のポロックと何かやり取りをしていたと思う。だからメリュジーヌは地獄になった。残月が死んだって事は残月の利権は、ブエノスに奪われるな」


「ああ。そうか。倒すべき敵が分かってきたのか。良かったな、ああ。うん、また電話待ってる」

 メテオラは溜め息を吐く。


 メテオラは皿洗いをしているシンディの方を向く。


「今日は店仕舞いだ。シンディ。少し話がある」


「あ。なんですか?」

 今は午後の二時過ぎ。

 客が来る時間は三時を過ぎた辺りと、五時を過ぎた辺りだ。

 出来れば、もう少し店を開いて客を待ちたかったのだけど、と、シンディは思う。


 シンディの表情を察して、メテオラは溜め息を吐く。

 彼は自分とシンディ用にコーヒーを用意する。


「仕方ねぇーだろ。大切な友人の死だ。それに状況次第じゃ、この店自体、襲撃されて無くなっちまうから。話し合うしかねぇだろ」

 メテオラはエプロンを外すと、壁にもたれかけて項垂れる。


「あー。やっぱり。此処が連中に見つかるのは時間の問題だな…………」


「んー。どういう事です?」


「いや。俺達はガキだったって事だよ。特に俺。年齢重ねた老獪なクソ共の裏をかけなかったって話だ」


「そうですか…………」

 シンディは煙草の箱を取る。

 最近は喫煙をするようになった。

 後はカフェでお金を稼げるようになれば、服も買いたい。

 十代の女の子として、お金持ちな国の普通の女の子みたいな青春を送ってみたい……。


「あの。やっぱり、もう少し業務をしませんか? 皿洗いも残ってます。……サンドイッチを作る為のハムとレタスも切り揃えて……」

 シンディは言う。

「…………。そうだな、夕方まで……。考えても仕方が無いし、客には一人でも来て欲しいからな」

 メテオラは頷いた。


 数時間後。

 カフェのバイトが終わり、シンディは家に帰る。

 途中、夕食の食材を買った。


 すると、家の前にはある人物が立っていた。


「よう。シンディ。一体一で、話したのは初めてだったか?」

 黒装束の美少年。


 ヴァシーレ。

 

「何しに来たんですか?」

 思わずシンディは警戒する。

「もうすぐ。この港町は地獄と化す。ウォーター・ハウス、グリーン・ドレス。それから、ラトゥーラにも言っておけよ」

「どういう事です?」

「警視総監コルトラが、この土地を狙っている。メテオラも此処に潜伏しているだろ? それもあってな。地獄と化すぞ」


 シンディは持っていた食材の一つ。パンを取り落とす。


「マフィアの連中は、何故、私達をそっとしておいてくれないの……?」


「知らねぇよ。だが自由や幸福は勝ち取るしかねぇんだよ」

 そう言うと、ヴァシーレはこの場から去っていき、夜の闇の中へと消えていった。



 家の中ではラトゥーラが待っていた。

 シンディは食事を作る。


「お姉ちゃんは、これからどうする?」

 ラトゥーラは訊ねる。

「さあ。分からない」


「さっき。僕の処にヴァシーレが来た」

 ラトゥーラはセーラー服の裾をいじりながら、神妙な顔をしていた。


「…………。ええ。私も彼と話したわ」


「やっぱり、僕達は戦いから逃げられないのかな…………」

 ラトゥーラは悲しげに言う。

「そうみたいね。でも、私はマイヤーレに向かう途中、覚悟はしていた」


 この処、ウォーター・ハウスはレスターに駆り出されて、マフィアの権力関係を後処理を手伝わされているみたいだった。グリーン・ドレスはふらふらと港町周辺の散歩に出かけている。束の間の平穏。


 そして、ウォーター・ハウスはまたブエノスを倒しに向かうと告げていた。

 ラトゥーラとシンディは頷く。

 自分達もまた、覚悟を決めなければならない。


「何、辛気臭い顔してんだよ?」

 グリーン・ドレスが扉を開けて、入ってくる。

 街に行って、アクセサリーショップを巡っていたみたいだった。


「ドレスさん。もうすぐ、此処は地獄になるみたいです」

 ラトゥーラは告げる。


 グリーン・ドレスはすぐに察する。


「そうか。じゃあメテオラにもすぐに伝えないとな」

 みな頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ