第76.5話「帝街2」
「――凄いイチャイチャしてるねー」
「――良い雰囲気だ」
「――俺はこの後クレスの奴を呪い殺す」
「――おいスミス、あんま殺気立つとこの距離でもバレるぞ」
上からケイネル、ウィリアム、スミス、スガヌマの順。
彼らは群衆にまぎれ、1人の友人の後を追っていた。
「っく、人が多すぎて……」
「まぁお祭りだしね」
「そもそもコッソリついて行くってのがなぁ」
「何言ってんだよ!? 俺たち王立非モテ連合が監視しなくてどうすんだ!」
「「「俺たち……?」」」
スミスの言葉に3人は首をかしげる。
いつからそんな面白おかしい団体の一員だったのかと。
「しっかし会長は昨日で一件でだいぶお怒りだったし」
「僕たちに黙って剣聖と2人旅だもんね」
「凜花はそうでもなかったけど、春風さんも結構だったぞ」
クレス・アリシアはあの後に言い訳をすることになった……が。
それでスミスたち、もとい女性陣がスンナリと納得するわけもなかった。
だからこそ今日、この活気溢れる催しに〝デート〟として赴く。
クレスは埋め合わせの真っ最中だ。
「ただクレス君、思いのほか楽しそうだね」
「あいつ年上好きだしな」
「そうなの?」
「へー」
ケイネルが安堵する中、それに一言付け加えるスミス。
それはこの中で一番長く友人として付き合っているからこそ。
もしくはモテないが故、嫉妬心が働き深く観察していたからか―――
「なんでも姉的な師匠? なんかもいるらしいじゃんか」
「あーそんなこと言ってたような……」
「その人もぜっっっっったい美人だぜ!?」
「いやいやスミス、見たこともないのに……」
「侮るな。クレスは謎の力を持ってるからな。その人のことは何故か詳しくは教えてくれんけど、どうせ美人な姉ちゃんに甘やかされたせいで『トシウエダイスキー』ってなってんだよ!!」
「な、なんかテンション高いねスミス……」
「おい。クレスが動くぞ」
「っと、気をつけていこう。かなり距離取らないとバレっからな」
口はよく動いても、反比例するように彼らは慎重に行動する。
ソレは相手の力量が確かだと重々理解しているからこそ。
各々が今できる全力を〝今〟に投じていた。
「――!!!!」
しかし衝撃は突如として訪れる。
彼ら……ではなく1人の男に。
「なんだこれは……」
「どうしたスミス?」
「また嫉妬がどうとかこうとか?」
「い、いいや、そうじゃないんだ……」
珍しく本気で焦った様子のスミスに、3人も見合わせる。
演技とは思えないぐらい困惑し、額からは汗をタラタラと地に落とす。
「今……俺は1人の女の人とすれ違った……」
「それが?」
「フードを被っていた。何気なくすれ違った。顔は、見えなかった」
「???」
「ただ直感で理解した―――やべえって」
スミスは数秒前にとある女性と交差したという。
ただなにが〝やばい〟のか。
それは――
「あれ、めちゃくちゃ美人だ!!」
「「「……は?」」」
「顔は見えんかった! ただとんでもない美人! 凄まじい闘気を持つ超伝説級の美人だ!!」
「太陽の暑さにやられたか……」
「もともと残念な頭だったのに……」
「いよいよ入院が必要だな……」
「まじだっつうううううううの! というか前から来てすれ違ったぞ!? 気づかんかっったの!?」
「「「……ソウデスカ」」」
一転して鼻息を荒げ大興奮な男。
混んだ道でも周りの観光客たちは一歩距離をとる。
言わずもがな、避けているのだ。
「はいはい。つまり凄いオーラを放っていた女性がいたわけね」
「そうだ!」
「でも顔見てねーんだろ?」
「ま、まぁ、でも瞳が……赤かったかな?」
「感覚でそこまで真剣になれるんだから。ある意味凄いよ」
「っく、向こうもなんか急いでた雰囲気だった気がする。コンマ数秒じゃ気を感じ取るだけで精一杯……!」
「まぁ美人や可愛い子を発見するスピードは凄いよね、スミスは」
自分ほどの者が気後れした、そう本気で悔しがるスミスを尻目に受け流す他メンバー。
どうせこの場きり、会う機会なんてないさと励ました。
しかしその言葉もすぐに覆されることとなる。
なにせ―――
「クレスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
4人の後方から、知った名が聞こえてきた。
声の主は女性、凄まじく闘魂のバイブス籠もった叫びである。
それは名前の主の友人たち以外、行き交う人々も反応していた。
「誰かクレスの名前を呼んでる……?」
「確かに聞こえる」
「ワドウさん……とは違う声音なような」
「おう。凜花とはちげー。でも春風さんっつーワケでもない」
面を向かい合わせる男たち。
ただその間にも件の声の女性は群衆をかき分け迫ってきている。
彼女の目指す先は、銀色かぶった1人の少年の元。
「クレスウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!!!」
邂逅の時、遂に来たれり――
《店舗特典SSについて告知》
➀が店舗名。➁が軽い内容説明。
➀アニメイト
➁クレスが他のナンバーズに無理矢理〝女装〟させられた話(初女装回)
※
➀ゲーマーズ
➁クレスの報告書に対する、ナンバーズたちの反応をまとめた話
※
➀メロンブックス
➁クレス含む数人のナンバーズが結託、ボス(Ⅰ)のお風呂をのぞきに行く話
――以上3本。
活動報告では特典SSについて、もう少し詳しく記載してあります。
再三になりますが、ネタを提供してくれた方々に感謝を。
女装回とか特に気合を入れて書きました(笑)。
興味があれば是非SSもチェックしてください。
次回土曜日の更新(3/24)では、前々から温めていたとある〝作品〟も公開します。
一応新作の連載開始ってことになるんですかね…?
9番目も大事な場面ですし、次ばかりは遅刻しないと誓います。
Let's hang out!