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第43話「潜入3」

「ふぅ……」


 勇者たちの観察も終了。

 鍛錬場に姿が見られなかったケンザキはやはり自室にいた。

 それよりも記憶に残っているのはマイさんの裸、いや下着は着ていたけどね。

 大丈夫、ワドウさんに対しては使ってない。

 まあそういう問題じゃないんだろうけど……


「とりあえず透視眼鏡(トビラヌケール)が凄いってことは分かった」


 勇者の情報以上に、製作者であるストレガさんの手腕に感服した。

 この眼鏡をオークションに出したらどれだけの値がつくか。

 他にも有能な魔道具を量産。やっぱりあの人は天才だ。

 まあ途方もないエロ思考しているのがネックかな。


「ボーンさんと一緒になって俺にセクハラもしてくるし……」


 何時だったか、女装してくれと本気でお願いされた。

 もちろん断った。

 そしたら他の数字(ナンバーズ)たちと手を組んで強制お着がえ。

 無理やり女装させられた。

 しかも俺の姿にめっちゃ興奮していたし。

 良い人なんだが性癖がキツ過ぎる。


「はあ、後は禁書庫だな————」


 残るは禁書庫に忍び込んでデータを漁ってくることだけ。

 それが終わったら退却する。

 アルバートさんがいないからと調子に乗らない。

 ギャンブルと似たようなもの、引き際が重要だ。


「っと、この辺からか」


 禁書庫の方に騎士はいない。

 その代わりに魔道具がこれでもかと仕掛けられている。

 半端な兵士を警備にあてるより、機械に任せた方が確実なんだろう。

 たぶん奥には自立人形なんかもいるはず。


「まずはこの廊下を抜けないと……」


 透視魔法を発動。

 すると視界に赤い線が映る。

 しかも1本や2本なんてレベルじゃない。

 この赤レーザーに身体が当たればアウト。

 まあ当たればだけど————


「凍れ」


 床に両手をつけて静かに魔法を発動する。

 天井、床、壁に氷を薄く張っていく。

 魔道具を破壊すれば後で絶対にバレる。

 でも俺のやっていることは瞬間冷凍。

 一瞬で全てを氷漬け、魔道具同士で連動していようと関係ない。

 数時間後には溶けて元通りだ。


「さてと、行くか」


 騎士たちがいないので堂々と進める。

 本当に氷魔法は有能だ。

 この冷凍法は特に役立つ。

 例えば旅の時、普通だったら干し肉といった長持ちするものが食料となる。

 だけどこの魔法を使えば大抵の物は凄く日持ちする。

 普段持っていけない食べ物を携帯できるのだ。

 しかも俺がいる限り冷凍は幾らでも掛けなおすことが出来る。


「そういえばアウラさんにさんざん料理作らされたなあ————」


 アウラさんメチャクチャ飯食うんだよ。

 それでいて料理出来ない。いや色々出来ない。

 可能なのは戦闘ぐらいだろうか。

 自分含め、あの人の生活面は俺がほとんど請け負っていた。

 そのお陰で家事スキルはそれなりに成長したと思う。

 

「ちゃんと生活出来てればいいけど……」


 心配である。

 それはこの大陸に来たかもしれないという噂も相まって思うところ。

 ちなみにアウラさんについての真実を報告書でボスに尋ねた。

 しかし未だに返信は来ない。

 そろそろボスから手紙が来ても可笑しくない時期なんだけど……


「さてと、やっぱ此処は特に厳重だな」


 目の前には重厚な扉が待ち構える。

 この先に目当ての代物があるのだ。

 ただ開けるには数字ダイヤルや鍵に加え、最新の認証式魔道具まで突破しなくてはいけない。

 単純に凍らすだけでは進めない。

 ここからが俺の腕の見せどころだ。


「こっちも色々魔道具持ってきてる」


 あの眼鏡みたいにエロ目的で開発されたものだけじゃない。

 コンパクトでありながら確かな性能。

 ストレガさんもダンテさんも本当に凄い。

 後は俺のスキル次第。

 今回の相手は禁書庫の扉、さあ勝負だ————











 解除に取り掛かって30分近く経った。

 かなり難しい施錠をされている。

 周囲に警戒しているのもあり、集中と緊張で頬に一筋の汗が流れる。

 わりとマジで難しい。

 作ったやつのレベルが高かったんだろうな。

 だけど————


「はあぁ、ようやくだ……」


 鈍い音をたてて遂に扉が開く。

 開帳(かいちょう)、足を踏み入れる。

 室内には罠の魔道具の反応は感じない。

 それにしても結構広い造り、この中から目当ての書物を探すのは骨が折れるぞ。

 しかしそう思ったのは束の間。

 なんと入ってすぐの所、召喚された勇者に関係する物だけ集められたコーナーがあったのだ。

 

迂闊(うかつ)だなあ」


 どうせこの禁書庫は侵入されないと思っていたのだろう。

 まあそれにも納得、そんな自信を持つぐらい良いセキュリティーだったよ。

 俺もこんなに難しいのは久しぶりだった。

 

「召喚に関係する書物もあるな。あとは、個人データか?」


 召喚に関する書物も同じ場所にある。

 さっそく目を通そうと思ったが、ふと目についたものが。

 それは勇者たちの基本情報を記したものだった。

 年齢や身長体重、身体能力や異能についても記載されている。

 だいたいは俺の予想と違わない。

 しかし最後のぺージ、俺の知らない情報がそこにあった。


「ショーゴ・マノ? 誰だ……?」


 勇者4人の厚いデータに比べ、その男についてはたった1枚。

 そして彼の備考欄にはこう書いてあった。

 『勇者召喚に巻き込まれた者』

 俺は知る。

 召喚された異世界人、それは『5人』であったと————

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