表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/165

第36話「迷子」

「私は一体何処にいるんだ————?」


 災厄の数字(ナンバーズ)のアジトを飛び出して数十日が経つ。

 通信魔道具は居場所を探知されそうで置いてきた。

 また交通手段についても馬車は使わず、あえて自力でユグレー大陸を目指した。

 今に至るまでずっと走って来た(・・・・・)のである。

 それもこれもボスから発見されるのを防ぐため。今のところ完璧である。


「だけど右も左も分からないっていう状況……」


 地図は道中で落とした。そもそもあったところで読み方分からないし。

 方位磁石を見てひたすら同じ方角に向かって歩くだけ。後は殆ど『(かん)』だ。

 ただ数日前にユグレー大陸の1国、センテール教国の武装教徒たちと遭遇した。

 彼らはおそらく国境の警備をあずかっていたのだろう。

 まあ当然の如く強行突破をした。国境は越えたので、一応ユグレー大陸には着いたということになる。

 強行突破と言ったが大丈夫、残像が出るくらい速く走ったから正体がバレることはないはずだ。


「でも現在地が分からないのがキツイなあ」


 現在地はとある森の中。

 空は真っ暗、魔法で炎を起こし暖を取る。

 とある森(・・・・)と表現するだけあって、正確な場所が把握できていない状況だ。

 つまりは迷子。

 これからどう進路を設定すればいいか見当もつかない。

 

「はあ、お腹もすいたし……」


 今までだったら獣を狩ってくれば後はクレスが調理をしてくれた。

 自分で言うのもあれだが私の料理レべルは相当低い。

 その点クレスは本当に優秀で良い奴だ。料理以外にも朝起こしてくれたり、話が面白かったり、鍛錬にも付き合ってくれる。

 任務中の生活面では面倒を見られっぱなしだった、それが離れてようやく分かる。


「ったく、3年も会えないなんて冗談が過ぎるっつーの」


 クレスのことは生涯無二の相棒だと思っている。

 なんて言えばいいか、私の性格とアイツの性格がバチッとはまった的な?

 とにかく一緒にいるのが凄く楽しい。

 だから向こうが会えないと言うならコッチから行くまでのこと。

 

「今回のために婆さんに特殊ポーションも造ってもらったし」


 私の髪や瞳は赤色だ。

 武器や恰好はともかく、その見た目をしていれば『5番目の数字アウラ・サンスクリット』と疑われるのは当たり前。

 バカだアホだと言われる私でもそれぐらい理解できる。

 だから一時的に髪を『銀色』にする染髪ポーションを持って来た。

 この赤髪は魔力の影響があってこそ。

 永久に銀髪は無理だが、1本使えば1ヵ月は保てるだろう。しかも複数持ってきている。

 (ストレガ)を脅し、じゃなくてお願いして造ってもらった超特別製、信用は出来ると思う。


「周りに疑われても遠い親戚だということで誤魔化せる。完璧な作戦だ」


 ただクレスとて任務中、一緒に外で暴れることは出来ない。

 せいぜい親戚のお姉さんとして居候してやるつもり。

 たまには休暇もいいだろう。

 ボスに後で怒られるかもしれないが、まあその時はその時だ。


(本来だったら移動中でもポーションを使うべきなんだろうが————)


 髪色が違うだけでも印象はだいぶ変わる。

 『Ⅴ』と疑われることは少なくなるだろう。

 ただ会ってからは少しでも長く一緒にいたい。

 人目を一層気にしなくてはいけないが、今は節約の時だ。

 

「む————」


 ピリつく空気。

 周囲に魔獣の気配を察知する。

 闘気を消していたのが裏目に出たか。

 おそらく狼型の魔獣、数は20いないくらい。


「丁度いい。夕飯にするか」


 私の得意料理は『丸焼き』である。

 本来だったら毛皮を剥いだ方がいいんだが、強めに焼けば毛も燃えて無くなるだろう。

 適当に香辛料を振れば十分食べれる。


「本当はクレスの手料理がいいんだけど」


 今のところ魔獣の丸焼きと木の実しか食していない。

 そろそろ手の凝った料理にありつきたいところ。

 普通に飲食店というのもアリ。まあ村や町の1つでも見つかればの話だが。


「とりあえずその命、貰い受けようか————」


 剣を持つこともない。立つことも無い。

 座ったまま瞬間で起こす大爆発。

 身体から真っ赤な魔力が(ほとばし)る。

 半径20タールの範囲、大自然もこの力で平伏(ひれふ)せさせる。

 魔獣だけじゃない、本当の意味で全てを丸焼き(・・・)だ。

 これでも太陽を殺した女なんて呼ばれているんだぞ。

 燃える森が闇夜を照らす。火の粉が風に舞って何処かへ向かう。

 勘頼りの道のりだが心配ない。私とお前は絶対に切れない糸で繋がっている。


「クレス、会うのが楽しみだ————!」


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア文庫より新刊が出ます!
画像をクリックすると特設サイトに飛びます
<2020年12月19日発売>
大罪烙印1
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ