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第1話「氷炎」

「————結構でかいな」

「————そっすね」

「————私が突っ込む」

「————じゃあ俺が後手で」


 とある魔物巣食う森に俺たちは居た。

 目の前には異形のモンスター、全長は100タールぐらい。

 様相はハエに似ている、なかなか気持ち悪い。


「やる気出せよー」

「出してますって」


 乗り気でない俺に対し、隣にいるアウラさんのテンションは高い。

 呼応するようにその赤い長髪も強く靡いている。

 また彼女が抜いた大剣、それは魔力を通し真っ赤に燃えだす。

 まさにやる気マックス、というかバトルジャンキーだから。

 戦えることが楽しくて楽しくて仕方ないらしい。

 そんな先輩と組まされる俺、本当にボスを恨みたくなってくる。


(見た目は美人なんだけど、性格に難ありすぎてなぁ……)


 ただ戦いに関してはプロフェッショナル、信頼はそこそこ置ける。

 それに俺だって遊びでここに来たわけじゃない。


(仕事だからな、まじめにやらないと————)


 両手にはめた黒いグローブを外す、魔力を解放。

 そして右手の甲に浮かび上がるのは9番を意味する『Ⅸ』の刻印。

 これは俺が災厄たる証。

 姿勢を前向き、構える両手、全身に白銀の魔力を回す。


『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』


 敵さんもだいぶ警戒心をむき出しに、というか襲う気満々。

 森が騒めく、踏み荒らされた大地が悲鳴を上げる。

 お喋りはここまで、臨界点を突破、戦いの火蓋は切って落とされる。


「行くぞクレス!」

「はいー」


 そう言った瞬間にはもうアウラさんの姿は消えている。

 電光石火、疾風迅雷、強化された彼女の脚は神速を生み出す。

 すると間もなくしてモンスターの顔面に一発クレーター。

 そして後追いで轟炎が、魔物の肉を溶かしていく。辺りにはなんとも言えない焦げた匂いがするように。

 まさに一瞬の出来事、コンマ数秒、コマ送り出来ない異次元の速さと強さ。

 アウラさんの大剣は常識をブッ飛ばすのだ。


(早すぎ、半分くらいしか動き見えなかった)


 ただ相手も災害級、既に瞬間再生を始めている。

 まさかそのまま回復させるわけもない。

 先輩に任せてばかりでは後輩の名が廃れる。

 俺が目の前に描くは巨大な魔法陣、氷の波を顕現させる幾何学文様。


「凍れ」


 詠唱を使うには値せず。

 一言、それだけで。

 足元から氷の侵略、そしてすぐに喰らう、再生しそうなクレーター含め魔物全てを氷漬けに。

 アウラさんの轟炎さえも飲み込んだ

 完成するは傷だらけの悪趣味オブジェクト。


「っさすが! なら私も! 応えろ神炎剣(バイオレット)!」


 氷の像の真上には真っ赤に燃える先輩の姿が。

 人の身にして神殺しにまで上り詰めたその人。

 太陽を疑似的に具現化、神にしか使えないはずの奇跡が現実に。


「————太陽落下(サンライト・ダウン)!」


(あ、これやばいやつだ)


 その大剣、その技、あまりに威力が強すぎる。

 たぶん今まで戦えなかった分が作用、ストレス発散みたいになってる。


(そりゃ何十日も移動に強いられたけど……!)


 光が全面に、夜が朝へと強制的に変えられる。

 降り注いでくる熱は魔法で遮るものの、自力で防げぬ自然は塵となる。

 眼を向けられない程の輝き。

 先輩お得意の直球プレーが炸裂だ。

 このままでは俺もタダじゃすまない。


(だからアウラさんと組むの嫌なんだよ……)


 それだけ強いなら組まなくても、アウラさんだけでいいんじゃねという話。

 コンビネーションとか協力とか意味ないし。

 ただボス曰く炎には氷を、つまり俺は消火役というわけ、ホントに酷いと思う。


(このままじゃ森どころか大陸ごと焼き尽くすからな)


 しかしこれ以上愚痴っている時間も無い。

 疑似太陽が着弾するまでほんの数秒だ。

 刹那で思考、瞬間で対処、一瞬で魔方陣を構成する。

 さっきまでとは違う、それ相応のクオリティーで。

 

「凍てつく風、凍る大地、銀の王道は今拓く」


 響かすフレーズ、熱い世界をフリーズ。

 重なり合う陣と陣、生み出すは————


絶氷界(ジ・アブソリュート)


 氷の頂、俺の魔法は全てを凍らす。

 もはや異形の魔物の存在は二の次に。

 俺は真っ赤な爆炎と対峙した。


 どうも。東雲です。


 書籍の方、当初から言われていた事を思い出しながら執筆しました。

 クレスが鈍感すぎるとか…ヒロインがチョロすぎるとか…

 ラップ調も封印、ほぼ一から書き直しましたかね。


 なのでこの書籍版に限っては、皆さんと一緒に書いたつもりです。

 だから今より、もっともっと面白くなってるはずです!


 Special thanks.

 この素晴らしい読者方に祝福を!

 よろしくお願い致します。

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