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第13.5話「報告」

 勇者監視任務1日目レポート。


 

 ついに勇者の監視が始まった。

 まさか4人も異世界人が召喚されたと知った時は流石に驚いたが、出来うる限りの努力をして彼らの内に迫っていこうと思う。


 まず学園初日、俺は寝坊してしまった。

 久しぶりの一人暮らしでだいぶ気が緩んでいたことが原因であると考える。

 何時もは堕落したアウラさんを起こす側、まさか彼女がいないだけで自分はこんな失敗をしてしまうのだと、正直ショックだった。

 別にアウラさんを卑下したりバカにしているわけではない。本当に本当だ。


 登校中にはスミス・ケルビンという男と出会った。

 性格は女好き、ずっと女の人の話をしている。 

 クラス中の女子にすぐアタックしたようだが、全て撃沈だそう。

 非常に残念な結果である。

 まあ自分が女だとしても、確かにスミスとは付き合いたくない。

 人間性は良いが、やはり煩悩塗れの頭をなんとかしなければ。


 付き合うといえば、勇者の1人、リンカ・ワドウにある質問をされた。

 それは『恋人はいるのか?』というもの。

 任務に支障をきたす問でもないので正直に答えた。

 ただそれを言った途端、女子たちが一気に騒めく事態となる。反応の大きさを見るに他クラスにもすぐ伝達されてしまうだろう。

 答えておいてなんだが、敵対者を探す暗号の質問だった可能性もある、最善の注意を払いつつ解読に着手していくつもりだ。


 そして初日一番の成果。

 それは勇者たちの力を直で見ることが出来たこと。

 下記に名前と共に、暫定の異能名を記載する。


 ユウト・ケンザキ『光の加護』

 コウキ・スガヌマ『加速』

 マイ・ハルカゼ『再生』

 リンカ・ワドウ『魔力増大、魔法強化系』


 各人の説明を簡単にするが、あくまで初日の段階で分かったことである。

 信憑性はそれほど高くなく、不明や気掛かりな点が多い。


 まずは男性陣から、現段階で言えるのは、ユウト・ケンザキとコウキ・スガヌマは『弱い』ということ。

 ケンザキは光を纏って戦う、剣や鎧を擬似的に創り出していた。

 ただ身体能力向上の上がり幅は異能の恩恵とは思えないほど低く、上級冒険者の無属性魔法でも十分同じことが出来るだろう。

 戦闘技術はもっと酷い、食材で例えるなら地中に1ヶ月間埋めた魚を掘り出して中途半端に焼いた感じ。

 アンデットの方がまだいい動きをする。


 ただ前述したことは、ブラフの可能性が非常に高い。

 言動や現場の状況から察するに、自分のような監視役を錯乱させ偽の情報を掴ませるためだと思う。

 ケンザキは稀代の策士、個人的にはこの説を最も推している。


 次にコウキ・スガヌマについて。

 彼の異能はスピードアップだった、単純に早く動けるというだけ。

 非常に残念極まりない異能だった。

 策士という感じもしなく、おそらく単純な速度強化系であることは間違いない。

 ただ剣術や身のこなしのセンスは優れており、鍛錬を積めば実戦で良い活躍が出来るだろう。

 性格は大雑把、声がいちいち大きいので発見はしやすい。


 そして本題らしい本題はこれから。

 特に驚くことになった勇者の女性陣営である。


 まずはマイ・ハルカゼ、性格は明るく社交的、人当たりの良い女性という印象

 ただ性格云々は置いておいて、その授かった異能が特異すぎる。

 本人はケンザキやスガヌマのように内容だったり異能名を口に出していなかったが、鑑みるに『再生』もしくは『時間操作の類』の力だと断定する。

 ケンザキの身体的な治癒はともかく、精神面まで数分前の状態に、そこまでできる回復魔法は9階梯以上、だがマイ・ハルカゼからは魔力の放出をほとんど確認出来なかった。

 一見しただけながらその秘めた可能性は勇者でも随一、彼女についてはまた別のレポートに記載する。


 最後はリンカ・ワドウ。

 彼女はおそらく俺と同様、魔法強化系の異能だと思われる。

 属性の殆どに適正を持ち、魔力保有量も相当、良くも悪くも非常にシンプルな力である。

 ただ鍛えようによっては魔王の魔法にも届きうるようにも。

 マイ・ハルカゼのように突出した点はないが、堅実かつ強力な異能である。

 ただ人間性に若干の闇? を感じる。

 気のせいかもしれないが、俺を見る目が怖い。

 身の安全には十分気をつけようと思う。

 

 彼ら以外にも複数の公爵令嬢、学校に不慣れ故に、自分にとって予測不明な現象が多く起きてしまう。

 すぐこの後には郊外での合宿や国際試合の予選も控えている。

 正体がバレないよう最善の注意を払いつつ、これからも監視の任を続行していく所存だ。



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