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第123.5話「影影」

 人間の『性格』というものは、大きく5つにカテゴライズすることができる。

 これは心理学におけるビッグ5という紙法を用いて導き出されるものだ。

 

 1つ、外向型。

 2つ、開放型。

 3つ、情緒不安定型。

 4つ、誠実型。

 5つ、協調型。


 日本人は4つ目や5つ目のパーソナルを持った者も多いだろうが、しかし大部分を占めるのは『内向型』と呼ばれるもの。1つ目に記載した外向型と対になるものである。

 アメリカ人が主に外向型であることを考えるならば、「ああ。日本人の自分は内向型かもしれない」となんとなく納得できるかもしれない。


 そして5人目に召喚された異世界人にして、巻き込まれた者――真野(まの)彰吾(しょうご)も例に漏れず内向的な人物であった。

 むしろこの世界に転移させられる以前、地球にいた頃の彼は内向的すぎると言っていい。

 地味に、影薄く、空気のように。

 もちろんそれは意図してその立場に甘んじていたのもあるだろうが、しかし性格的に前に進んで出るタイプでは決して無かった。

 

 そんな彼がこの異世界に来て。

 僅かながら一歩前に、アバンギャルドな人間へと成長できたのは。

 ひとえにこれまで困難にひとり遭遇してきたからである。


 だからこそこのハーレンス王立魔法学園の文化祭にも。

 変装しているとはいえ、旧友のいる場所に潜入することを決断できたのである。

 なぜ決断とまで仰々しく述べるかというと、それは旧友と再会したら気まずいというファクターもあったが、最もな要因は敵がいる(、、、、)かもしれない(、、、、、、)という懸念があったからだ。

 

 真野はその敵から王都を、王国を、ここに住まう人間を助けるために舞い戻ってきたのである。


 その敵が果たして何者なのか。

 そしてなぜ真野は事前に察知をすることができたのか。

 いくつもの疑問は残るものの、まずは置いておく。

 

 真野の潜入は順調に進むはずであった。

 身分確認を風のごとく突破し、それから豪奢な正門を抜け、校舎に続く丁寧に舗装された道を他の観光客に紛れながら前進していく。

 しかし校舎に入る、その直後のことであった。


「――――!」


 衝撃が身体を襲う。

 それは物理的なものではなく、精神的な衝撃であり、まさか壁や天井に被害があるわけではない。 

 だが彼の精神は大きく揺さぶられた。

 警鐘が激しく鳴る。

 それでも表情や身体の機微には現れぬよう静かに固唾だけを飲み込んだ。

 何事も無かったように――静かに歩き続ける。


「…………」


 原因は1人の女性。

 彼女とすれ違ったことだった。

 たったそれだけのことである。

 けれども、真野は自身の『巻き込まれ』という体質ゆえに、またこれまで経験からしても悟っていた。

 

 あ、これヤバイ奴だ。


 それぐらいシンプルに、理解する。

 理解させられる。

 戦ってはいけないのはもちろん。関わってはいけないどころか、すれ違ったり、目を合わせても危険なレベルの相手である。

 

「……今日は撤退、かな」


 出直すことを即座に決める。

 はなから既に敵がいるのではないかと疑っていたが、まさかあのレベル(、、、、、)が来るとは考えていなかった。

 いやしかし、本当にあれが敵なのだろうか?

 あまりに仕入れていた情報との乖離さに、あれは別勢力なのではないかと思案する。


 見立てでは大きく動きがあるのは3日目と予測を立てている。

 絶対とは言えないが、この初日にハプニングが起こる確率は相当に低いのだ。

 ならばこそ今回はこのまま踵を返し、すぐにでも新たな対策案を立てなくてはいけない。

 とにもかくにも、既に想定と想像を超えた危険人物は学園内に潜伏していることは確かなのだから。


「……影の薄さにまた救われたか」


 内向的というのは、一見マイナスに囚われがちだが。

 異世界という剣と魔法の世界でも、地球の資本主義社会という世界でも、その環境によってはプラスに働くことだってある。

 真野の影の薄さはかつての教室ではカーストを落とすものだったけれど、この命の危険を伴った潜入においてはまさに天賦の才と呼んで良いほどである。


 天賦だからこそ。

 すれ違った――かの6番目の災厄でさえ、気づけない。

 気づくは気づくのだが、本能が気をつけることを無意識に止めてしまう。

 敵対心を呼び起こさない。

 それは真野彰吾の地味さが究極に光るからこそ(地味なのに光るというのも撞着(どうちゃく)な話だが)。


 なんにせよ。

 マキナは気づかず、真野は気づいた。

 この差異は小さいようで、しかしこの後の展開を動かすには十分な差であった。

 

 影なる者――真野彰吾は静かに動き出す。

 どうも、東雲です。


 ついに6月が始まり、早いことに1年の半分目(?)に突入です。

 ただこの時点で気温30度を超えたりと、年々日本の夏は勢いを増すばかり……。

 このまま紫外線が強くなると、若干SF的な考えですが、何十年後かには防暑服なしでは歩けない状況になるかもしれません。

 暑さ――というと、かなり前に公言していていたことなのですが、TRIGGER制作の『プロメア』という映画を見てきました。

 炎使いと消防士(?)のお話なんですが……もう最高でした!

 できれば色々感想を述べたいのですが、とにかく、めちゃくちゃ可愛い〝美少年〟がいたことだけはお伝えしておきます(もはや彼がヒロインでした)。


 冒頭でも書きましたがえらく暑い日が最近多いです。

 皆様も身体にはお気を付けください。

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