第116話「到来」
世の中には『美人』『美少女』『イケメン』『美少年』など、周囲から称賛や尊敬の意をこめてそう呼ばれる者たちがいる(中には皮肉を効かせているものもあるが)。
ただ当然のことながら、自分がある女性に対し『この人は美人だなぁ』と感じても、それが周囲の認知と一致するとは限らない。
実際に日常生活を送る中で、誰しも自分と他人とで価値観の差異を感じたことがあるはずだ。
異世界風の例を出すのなら、アイドルや俳優についての容姿評価について、周りと少なからず差異が生じてくるはずだ。
だから案外、自分がそう思っていなくても、周りがそういう評価をするからと流されている人もいるかもしれない。
しかしその波を立てないようにする同調主義を批判するつもりはない。
静かに過ごしたい者にとってそれは努力に他ならず、それが誰かにとっての差異だったとしても、むしろ『頑張っているなぁ』と褒めるべきではないだろうか? いや褒めるは言いすぎかな……?
閑話休題。
容姿は人の価値観による、という話は前置きだ。
本題はこれから。
仮に世間に素晴らしい、最高、アメージング、と称される容姿の人物がいたとして。
大多数の見解に従うなら、道行く9割の一般人はその彼なり彼女が通り過ぎた時に振り向いてしまう。
しかし差異が生じるせいで、1割の人は振り向かないかもしれない。
だがもし、10割、道ゆく人すべてを振り向かせる人物がいたとしたら。
はたして一体どんな人なのだろう。
これは差別的に捉えられてしまうので、あまり口を大きくして言うことではないが。
視点を変えてみると、とてつもなくブサイクであったり、とてつもなく臭う人物だったらどうだろうか。
うーむ。
100人いて100人に振り向かせるのは可能だとしても。
1000人、いや10000人いたとしたら、いささか不可能な話ではないか?
ズバリだ。
10000人を振り向かせる人物に必要なものは『カリスマ』である。
ただ容姿のこと以上に、ソレを定義づけるのは難しい(容姿の場合は統計学や、黄金比といった数学的見解で説明も一応できる)
とても抽象的な言葉のように思えるソレ。
話が若干逸れるが運動における『体力』という言葉もずっと不可思議なまま記憶にある。個人的には体力=スタミナという認識がある……ようで実のところどうなのだろう。
身体の力だぞ。トータルパワーだぞ。なんだそれ?
指導する者たちは知ったように『体力が必要だ』『体力をつけろ』と口酸っぱく言ってくるので、教本に『体力』について詳細な説明を要求したい(既に明記があり、こちらの不勉強だったら申し訳ないが……)。
とにもかくにも、同じようにふわふわとした『カリスマ』という言葉。
何も答えになっていないが、それは『人を惹きつける力』であると勝手に解釈をする。
不可視のオーラ。圧力。エネルギー。
他者の五感や心を刺激するパワーは、もはや異能とすら呼べるかもしれない。
でだ。
この人はカリスマだ!と断言できるような、友人知人は近くにいるだろうか?
いやまぁそうめたらめったら居るわけがないけれど。
しかし少なくとも、ここハーレンス魔法学園には3人のスターが新たに現れた。
正確に表現するならば――現れてしまったのだ。
「――やけに見られンなぁ」
横幅の広い廊下の真ん中を占領するかのように、堂々と歩くのは3人の男女。
一番左。
トレードマークともいえる赤髪はなりを潜め、金髪のカツラを被ったアウラがそうぼやく。
もちろん武器の類いも持ち込んでこず丸腰だ。
周囲の視線も気になっているようだが、それ以上に校舎自体を興味深そうに観察している。
「アウ――アルカがアホ丸出しで歩いているからです。ここは優秀な者が集まる学び舎と聞きました。きっとアホやバカの類いが珍しいのでしょう」
一番右。
相も変わらずパンチの効いた台詞を飛ばすのがマキナ。
彼女は背負えるように改造した棺を今日も背負ってここに来ている。
中には布教関係の道具が入っており、どうやら今日も布教活動をするらしい。
ただ本番は文化祭のようで、今回は下見だとかなんとか。
「喧嘩しなーい淑女方。本当は中身モンスターであることがバレちゃうヨ?」
真ん中。
貴族風の格好をした老紳士、エルメス。
仲裁をしているようだが、彼もなかなかに酷い言い方である。
「いやいや私は確かにアホだけど、見られてるのは私だけじゃない気がするぜ。正直なところどうよマキナ?」
「……認めたくはありませんが、我々を注目している節は感じられます。もしや……」
「ああ、この国で一番すげぇ奴らが集まるっていうんだ。私たちの正体ぐらい――」
ニヤッと笑うアウラ。
恐ろしい学園に来ちまったもんだと口にする。
マキナも同意見のようだが、それは生徒をかいかぶり過ぎているというものだ。
一介の学生たちが実際気づくわけがないだろう。
ただ彼らの纏うそのオーラには惹かれざるを得ない。
容姿が整っているというだけの話ではない。
彼らが歩くだけで空気が静まるというか、気温が下がるというか、歴戦の猛者たちが放つ気に周囲は当てられる。
比較対立のない、世界における『絶対無二』の存在と勝手に印象づけられてしまう。脳がそう判断してしまう。いや脳が機能しなくなるほどパワーを当てられて、そう判断せざるを得ないというべきか。
よくよく考えれば、学園の廊下を世界最強と謳われる『災厄』が3人も歩いているのだ。
本気を出せば王国など数分足らずで崩壊させられる。
こんなカオスじみた状況を真の意味で理解しているのはクレスと――そしてエルメスぐらいだろう。
「ふむ。ここかな」
数歩だけ先頭を歩いていたエルメスがついに立ち止まる。
入り口には『1―S』と書かれていた。
「お、ここがクレスのいる場所なのか?」
「そうだよアウラ君。だが少々早く到着してしま――」
三者面談に来た保護者(名目上は)なので、生徒の休憩時間中に来たからといって咎められることなどない。
しかし正体は災厄である。
クレスからの念押しも、エルメスの言葉も無視してアウラは教室に突っ込んでいった。
「たのもー!!!」
ハツラツとした声だった。
突然美人なお姉さんが挨拶をしながら登場、相対した生徒たちは反応に困るだろう。
事実反応に困っていた。
教室には三点リーダーが長く長く羅列している。
「失礼します」
しかも続けざまにマキナも教室へ。
彼女自身はなにも気にしていないようだが、その格好はなかかにアバンギャルドというか奇抜というか。
容姿にあきたらず、服装等まで目を引く女性だ。
ただ男子諸君が湧き上がることはなく、全員が目を見張っている。
「あ、クレスだ!!!」
「クレス発見」
そして他の生徒など無視して、一目散に、一点にクレスの方へと早足で向かっていく。
みな唖然である。
この状況が飲み込めずに固まってしまっている。
唯一。
当のクレスだけは苦笑い……いや、もう笑ってすらいない。
ただただ苦い表情でいて、そこからは若干の怒りも漏れ出している。
「お転婆だねー、君たちハ」
最後、にこやかに現れたのは老紳士である。
「あ、クレス君のおじいさん……」
「おや、依然会ったネ。名前は確かマイ・ハルカゼさん、だったかナ?」
「は、はい!」
面識のあるマイさんはいち早く硬直が解け、エルメスについ話かけてしまう。
彼はそれを人の良い笑みで応対する。
「今日は三者面談で来たんダ」
「なるほど。じゃああの……クレス君に今抱きついている2人は……」
「ああ。クレスの姉だよ」
「「「「「姉!?」」」」」
全員の気持ちを代弁するように、質問を投げかけたマイだったが、その返答に全員が驚く。
クレスは姉が来ることをスミスには喋っていたが、クラスメイトたちは姉などという存在がいることを認知してはいなかった。
「エルメスさん……」
一転ざわつき始める教室に、右腕をアウラに引っ張られ、左腕をマキナに引っ張られ、そのまま引き裂かれそうな状態のクレスが、一番信頼していただろう保護者の名を呼んだ。
それこそ恨みを込めて。
「えへ。来ちゃっタ」
――と、とぼけるエルメス。
なんも可愛くねーよとツッコム気力は、今のクレスにはないようだった。
どうも、東雲です。
遅れてすいません。
で、さっそく1月スタートのアニメについて語るのですが。
約束のネバーランド! 皆さん観ましたか!?
今季も面白いアニメ作品は多々ありますが、背骨を冷たい手で撫でられたような感覚と言いますか、【恐怖】や【戦慄】を感じてしまったのは現状ネバーランドだけですボクは。アニメでこのゾクゾクする震えるといった感覚を得たのは久しい気がします。
作画や演出、音楽などもまた拍車を掛けていまして。
加えてボクは原作未読かつ、公式のあらすじすら見ていなかったので、初見で観た時の衝撃は……。
もうやばいやばいしか言えなかったです(笑)。
最近のアニメやラノベって、割合的にはハッピー系だったり爽快系が多いと思うんですけど、そんなシーンにこんな【怪物】をぶっ込んできたジャンプさん。そして作者さんたち。本当にすごいです。
ただ次の放送まで1週間も待たなくてはいけないという、もどかしい……!
そう思うんだったらお前なろう早く更新しろって?
すいません……。次は遅刻しないので許してください……。